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クリスマスケーキと鏡餅~長崎潜伏キリシタンの手作り聖書「天地始之事」にみる縄文スピリット

街を歩けばクリスマス商戦真っ只中。

商売をされている方々にとっては、まさに今が書き入れ時。

特に物販をされているお店は、明日あたりがピークかもしれませんね~。

そんな中、一体誰が興味持つんだ!?というマニアックなタイトルで記事を書き始めてしまった私・・・。う~ん、まあよい。


さて、クリスマスにいちごショートみたいなケーキを食べるのは日本だけらしいですね。

アメリカでは、ケーキもチキンも食べないらしいですよ。

クッキーとか、七面鳥は食べるみたいですけど。

最近の子供は、ケーキといってもそこまでテンション上がらないでしょうが、僕らの時代は大ごちそうでしたからね。

ケーキなんて、誕生日など特別なお祝い事の日にしか食べられないものでした。


うちの家族にクリスチャンは一人もいませんでしたし、誰一人として何の信仰も持ちませんでしたが、イエス・キリストの誕生日を祝う日だからみんなでケーキを食べよう、ということで食べてましたね。

だから、信仰はしていないけど、イエス様に感謝はしていましたよ。だって、ケーキが食べられるだけでなく、プレゼントまでもらえるのですから。

クリスチャンでもないのにクリスマスを祝い、仏教徒でもないのに大晦日にはお寺に行って除夜の鐘をつき、その足で神社に初詣に行く。

そんな日本人の姿は、欧米人の目には奇異に映るでしょうが、そこはベースにあるのが多神教か一神教かの違いでしょうね。

日本には、八百万(数えきれないぐらいたくさん)の神様がおられます。

日本人にとっては、

アマテラスオオミカミも、

イエスも、

ブッダも、

亡くなったご先祖様も、

全部神様で、

八百万の神々の中の一柱なんですね。

ですから、クリスマスにクリスマスケーキを食べて、正月には神棚に鏡餅を飾ることについて何の違和感もないのです。


この鏡餅についてなんですが、ちょうど二年程前、出雲大社に参拝したんですよ。

出雲大社のすぐ隣に、古代出雲歴史博物館があって、そこで次のような展示物があったんですね。

これ、何か見たことある気がしませんか?

餅じゃね?(ボビー・オロゴンで)


出雲大社最大の行事である「神在祭」。

神在祭の頃になると、強い風が吹いて出雲地方の海は荒れるそうです。

強い風と波の影響を受けて、海岸に「海蛇(うみへび)」が漂着します。

元々、南海に生息するセグロウミヘビという海蛇ですが、海流に乗ってはるばる出雲へとやってくるのです。

この漂着したウミヘビが、「神在祭」に集まる「神々の先導役」とされ、丁重に祀られます。

このウミヘビは「龍蛇(りゅうへび)様」と呼ばれます。


縄文時代まで遡ると、ヘビそのものが「カミ」でした。

これは、頭に蛇をのせた巫女の縄文土偶です。

ヘビの古語は「カガ」或いは「カカ」といったそうです。

カガの身体だから、カガ・ミ。

鏡餅!

ということで、私たちは知らず知らずのうちに、縄文以来の蛇信仰を現代に継承しているのです。

それからですね、私は長崎出身なんですけど、長崎には潜伏キリシタンの歴史というものがあるんですね。

禁教政策による激しい弾圧の中、二世紀半を超えて信者たちは密かに信仰を継承していました。

信者たちは、「天地始之事」という手作りの聖書を作ったのですが、

その中に、興味深い部分があるのです。

アダムとイブがリンゴの実を食べてしまう部分です。

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・・・・ところで、貴方様が先ほどから食べておられる物は一体何なのですか?」

 じゅすへるはこう答えた。「これはまさんの木の実だよ」。

※まさん=リンゴのこと

 えわは非常に驚いてこう尋ねた。

「それはご法度の物と聞いておりますのに。食べても良いものなのでしょうか?」

 そこでじゅすへるは大きな嘘をついた。

「この木の実はでうすの物でありこの私の物でもあるのだ。これを食べればみんながでうすと同等になるのだ。それゆえにご法度にされているのだよ」

 それを聞いたえわは「そうなのですか」と言って信じてしまい、じゅすへるはほくそ笑んだ。

 そうしてまさんの木の実をえわに渡し、「さあ、これを食べて私と同じ地位になろうではないか」と勧めると、それを信じたえわは喜んで木の実を受け取り、そして食べてしまった。

 さらにじゅすへるは「こちらはあだんに食わせるが良い。そして子供を早く連れてくるんだよ」と言って木の実をもう一つ渡し、帰ったふりをして木陰に隠れるとずっと彼らの様子を窺っているのだった。

 やがてあだんが帰って来るとえわは先ほどの出来事を残らず彼に話し、託された木の実をあだんにも分け与えた。あだんもまた、疑いながらではあったがその木の実を手にして食べてしまった。

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オリジナルの聖書では、アダムとイブをそそのかしてリンゴを食べさせたのは、ご存じのようにヘビです。

しかし、潜伏キリシタンたちは、ヘビを「じゅすへる」=ルシフェル=ルシファーに置き換えました。

なぜか?

蛇を悪者にしたくなかったのだと思います。

なぜなら、蛇は縄文以来、日本では神とされてきたからです。

キリスト教を厚く信仰しながらも、日本古来より神として祀られてきた蛇神を悪者にすることができなかったのではないでしょうか?

キリスト教には、ファンダメンタリズムといった絶対的傾向もある中、聖書という最も重要な経典さえも勝手に書き換えてしまったという・・・。

そうした日本人の持つある種のユルさ、おおらかさ、柔軟さ、懐の深さの中に私は縄文スピリットを感じるのでした。

ということで、明日はケーキを買いに行こうと思います。

あ、ぜんざいも食べたくなってきた。

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