妄想からイノベーションへ

はじめに

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論Ⅱ 第2回(2021.4.19)の講師は日米で最新デザイン理論と実践の橋渡しに従事している岩渕正樹さんです。今回の講演で非常に考えさせることは:

1. 最新デザイン理論の共通点・狙い

2. 「Social Dreaming」から「夢」への思考

3. 人新世での社会イノベーション

岩渕正樹について

岩渕正樹さんは東京大学工学部から、IBM Designでの社会人経験を経て、パーソンズ美術大学のDesign&Technologyで修了した。

そして、パーソンズ美術大学非常勤講師、Teknikio(ブルックリン)サービスデザイナー、Artrigger(東京)CXO等、研究者・実践者・教育者として日米でスペキュラティヴ・デザイン、ビジョンデザイン、文化デザインなど最新デザイン理論と実践の橋渡しに進めている。

近年にも、Core77デザインアワード、KYOTO Design Labデザインリサーチャー・イン・レジデンスなど様々な受賞した。

これからのデザイン理論

プレゼンテーションの中で、いくつかの最新デザイン理論を紹介され、スペキュラティヴ・デザインビジョン・デザインは去年山崎先生の授業で実践されたが、「Social Dreaming」というコンセプトは初めて聞いて、ずっと研究している意味のイノベーションと強く関連づけていると考えている。

いきなりコンセプトいっぱい並んできたが、これから簡単に紹介させていただきたい。

起こりそうな未来へ:「 スペキュラティヴ・デザイン 」

スペキュラティブ・デザイン(Speculative Design)とは、グラフィック・デザイン、建築・デザイン、映像、インタラクション・デザインなど幅広い手段で、現在や近い未来におけ、これまでの価値観を変えることで、世界に別の可能性を示して考えさせるために表現するデザインである。

例えば、よくスペキュラティヴ・デザインで実践されているアーティスト長谷川愛さんは、「自分がイルカを産む」可能性への研究により、生物の絶滅、地球環境など社会問題を探究している。

個人の妄想から:「 ビジョン・デザイン 」

ビジョン・デザインについての説明はいろんなバージョンがあるけど、この記事は山崎先生の授業で学んできたコンセプトを基準に説明していく:

ビジョン・デザインとは、より良い社会を作るために、「未来のありたい姿」を提案すること。

こんな社会あってほしいという「個人の妄想と熱い想い」が原動力になる。

具体的には、ある状況を設定したアイデアを「体験的なプロトタイプ」を作り、体験することで繰り返すことで、「ありたい未来の姿」が見えてきる。

例えば、「もし都市の建築物はすべてガラスなど透明な質になると景色をより広く見えてきて、どこにも富士山が見えるようになるかもしれない」という個人の妄想からこれからの社会を考えること。

自分の夢から社会的な夢へ:「 Social Dreaming 」

皆さんは必ず自分の夢を持っている。
夢はパッション(情熱)をつくる。
夢はビジョンをつくる。

例えば:

:「空を自由に飛びたい」
パッション:「人間は必ず空を飛べると信じる」
ビジョン:「地球を超えた宇宙を探索する」

「Social Dreaming」は、個人の夢をより幅広い社会領域と関わり、個人のアピールを超えて、コミュニティーへの共感になること。

こういうSocial Dreamingは社会的な夢を探索し、みんな共通されている悩みやバイアスを発見し、新たな課題に取り組むことが可能になる。

その中で特に重要なのは、市場調査からユーザーのニーズを課題として取り組むことではなく、自分の情熱である。

「Social Dreaming」のアティテュード(態度):
ユーザーのニーズ   あなたのパッション
現在の利益      未来に良い
新しい特性      新しい文化

意味のあるイノベーションへ:「 意味のイノベーション 」

意味のイノベーションは自分の記事で紹介していたので、ご興味がある方は以下の記事でご覧いただけると嬉しいです。

以上の新しいデザイン理論から「人新世におけて、これからの社会はどうなるか」という課題について、いくつかの方向性も明らかにし、自分がイノベーションをしたいと考えても、企業ががイノベーションをしたいと考えても非常に重要だと信じている:

・ユーザーのニーズ中心だけでなく、自分の情熱や妄想から・

・現在の利益に着目するではなく、現在を批判して未来に意味のある・

・新しい特性を考えるだけでなく、新しい文化を構築する・

・「私には、いまの生活本当に理想的生活なのか」を改めて聞く


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