オランダの都市型農場に、サスティナブルの正しい可能性を見た - Border Sessions 2018 Report(2)

時間が少し空きましたが、オランダのハーグで行われたBorder Sessionsのレポート第二弾です。(前のレポートはこちら

今回はBorder Sessions内で行われたLABと呼ばれるワークショップの「Low & High Tech Food Lab」について。LABは30のトラックで構成されていて、1つのトラックあたり朝10時から夕方の5時まで1日かけて行われます。

このLABに参加したことによって、オランダのガチンコでやばい都市型農場の形を目の当たりにしました。まさに都市型農場のスパルタンX。上に行けば行くほどヤベー奴に出会う感覚に襲われる、日本では体験できない農場体験がそこにありました。
本レポートではワークショップの概要を述べながら、主に会場で目撃したビルにおけるフードテックの可能性について触れていきます。

現場はここ「The New Farm」。
もともとPhilipsが持っていた電話系会社のビルを1980年代にハーグ市が買取り、2013年にUrban Farmersという団体が都市型農場の形に整えたようです。以降、ビルの中で完結する縦型の農場のあり方と、都市を巻き込んだサスティナブル(=持続可能性)な食のあり方について考える国際的な食のスポットになっているようです。

ワークショップではまず、世界中で行われている都市型農場ついてのセッションからスタート。参加時にパスを受け取るのですが入り口にある黒いマネキンが不気味で、この辺りの感覚はいまいち理解できませんが、そういうものなのでしょう。

講義を受けた後は3グループに別れてグループディスカッション。簡単なアイスブレイクの後、昼食へ。昼食の会場として通された場所がバカでかいキッチンエリアになっており、そこで昼食会がスタートしたのですが、

キッチンエリアの入り口脇に食材が並べられており、参加チーム全員でその食材を使って好きに料理をしましょう、という料理ワークショップ+昼食会の流れへ。

ここに並ぶ食材はThe New Farmの中で採れたもの、とのこと。つまり全てがビルで育成された食材であり、オーガニック農法で育てられたもの。右下に見える魚はティラピアなんですが、魚も内部で養殖しているのです。(この辺は後ほど触れます)

我々のチームはトマトとパプリカを活かしたサルサソースと、グリルした茄子とマッシュルームのトルティーヤサンドを調理。用意された食材は魚以外全て野菜なので、我々はヴィーガンの人でも食べられる体に優しい食事を作りました。

一緒に料理を作ったのは、オランダ、ポーランド、ドイツ、そして日本の人たち。初めて会った人と、それぞれの文化を超えて一個の料理を作るワークショップはとても刺激的で、胃袋の繋がりは国境を超える・・・としみじみ感じます。

という訳でここまでが前半のお話。

The New Farmの全容が書かれたポスターがこちらですが、下から上まで縦の階層で農地+プロジェクトスペースが作られていることがグラフィックから伺えます。現時点ではまだ工事に着手していないエリアもあり完成度としては全体の6〜7割くらい、とのこと。
ちなみに前述のキッチンスタジオは「Kookstudio」と書かれている場所です。下から4階層目ですね。

コーヒーの残りカスでキノコ栽培!
リサイクルと生産が一つに繋がる新しい農法とは

昼食後、下から上へと巡るThe New Farmのツアーへ。
先ほどのキッチンスペースとは雰囲気がガラリと代わり、ラボスペースのような場所へと移動します。

下の画像はFARMBOTと呼ばれる、農地を作成する3Dプリンターのようなもの。実際にデモンストレーションを行なっており、BOTの機械自体も作動する様子が伺えました。
そして本フロアの真打はこちら。

ハーグ市の街中にあるレストランやカフェの、コーヒーを作った後のカスを集めそれを土替りにキノコを栽培するという実験。昼食で食べたキノコはここで作られたんですね。しかも栽培後は微生物の分解により土に戻すことが可能で、その土でまたコーヒーが作れるよ、と。
まさにサスティナブル、こういった所にオランダの持続可能性のあり方を垣間見ることができます。

そしてこのキノコが旨いんですよ、これまた・・・
味が濃厚、煮ても焼いても美味しい、しかも無農薬、というどれだけ優秀なんだと感じることのできる、良いキノコ体験でした。

ティラピア5,000匹超!
循環式の水システムを活用した養殖のカタチとは

さらにツアーは続きます。
上のフロアに行くとまず着替えを要求されます。

その流れでティラピアの養殖槽エリアへ。

い、いたーーーーー!!!!大量のティラピア!!!!
ここでは稚魚から出荷前の成魚まで約5,000匹が養殖されており、7〜8ヶ月かけて育成されるとのこと。

育成された後はこのようにパッケージ化され、出荷の仕組みまで整えられています。

さらにここの養殖槽の仕組みとして素晴らしいのは、使用している水は屋上に引き上げられ、ルーフトップガーデンの水耕栽培システムに循環されておりエネルギー効率と資源効率を両立させているところ。
育成槽の奥に細かなプラスティックのチップを使ったバイオフィルターの槽があり、水のクリーンアップも同時になされています。

循環や効率を突き詰めできるだけ無駄を省いた自然に優しいあり方を、ここでも垣間見ることができました。

ただ一方、効率はいいのかもしれませんが、このティラピアの育成の仕方が正しいのかどうかは個人的に疑問でした。大量に育成することができるとはいえ、ストレスたまりそうだし、それが肉質にも反映されるのでは・・・と。専門家ではないので細かい部分は不明ですが、効率化の裏にはそのような視点も同時に生まれるのではないでしょうか。

屋上に世界最大規模の水耕栽培ガーデン!
作物と虫が共生する都市型農場のカタチとは

そしてラスト、屋上に上がるとそこは一面の水耕栽培ガーデン。
世界最大の規模を誇る、屋上菜園とのことです。

ナビゲートしてくれた女性に聞いたところ、どれくらいの種類の野菜が栽培されているか分からないとのこと。当然、全体の管理はどこかで行われているはずですが、スタッフも把握できないほどの巨大な規模であることが話から伺えます。

ここでもサスティナブルかつ環境配慮的なアプローチとして、野菜同士の交配は箱に入ったミツバチを放すことで受粉を行なっており、(蜂蜜は作ってないらしいようです。そこは若干勿体ないと思いましたが)

また、水耕栽培システムのエッジに備え付けられた筒型ボックスには益虫が詰められていて、農薬ではなく虫により外敵から野菜を守るところまでシステムがデザインされているところ。

この益虫ボックスは他の国でも色々なところで使われているらしく、この開発分野でもオランダが先を行っているようです。

このThe New Farmで作られた野菜や魚は近くのレストランやカフェに卸され、このビルでも買うことができます。見学中に「トマトを取って食べていいよ」と言われたのでお言葉に甘えたのですが、旨いんですね、これが半端なく。甘みがあり、濃厚なのにフレッシュ。パリッとした皮の中にジューシーなトマトの果肉が詰まっていて、ああ、また食べたい・・・という感じになります。

農薬に頼らずに自然に近い形の状況を作り出すこと、廃棄するものに価値を見いだすこと、効率と循環を兼ね備えた生産の流れをつくることなど、テクノロジーと価値を交差させた新しいフードテックのカタチを都市の中に作り上げることでまさに「The New」な農場のあり方、都市に置けるサスティナブルとデザインの新しい可能性を目撃できました。

オランダのアプローチが素晴らしいのは、キノコ栽培に代表されるように実際に行動に起こし、それを施設でクローズにするのではなく広くオープンにしているところ。こうすることで広く緩やかに市民と企業、また行政がちゃんと会話をかわし、確実に社会実装されるための土壌を作り上げているのだなぁと感じます。

冒頭に述べたように、このワークショップは30個あるうちのLABの1つです。Border Sessionsでは4日間のうち3日がこのLABに割り当てられていますが、ガチで参加しようとしたら1日1つのトータル3つが限界なので他の参加者と分担して何が行われているか?を把握することが、当フェスを一番楽しめるやり方ではないでしょうか。

という訳で今回はこの辺りで。

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また次の記事で!
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望月 重太朗

REDD inc. 代表取締役 / Design Director。武蔵野美術大学 非常勤講師。UMAMI Lab 主宰。デザインR&Dをテーマに、サービス/プロダクト開発、デザイン戦略開発、クリエイティブ教育の開発、海外との協業によるメソッド開発などを行っています。

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