見出し画像

【検証】森山投手の運用は"酷使"だったか ~他球団の高卒ルーキーと比較~

2023年11月6日 中日ドラゴンズ高卒1年目の森山暁生投手が来季支配下契約されず、育成選手として再契約となる予定という報道が出ました。

ドラゴンズはここ5年間支配下で獲得した高卒投手はことごとく"育成落ち"を経験しています。

転向の根尾は除外

例外は髙橋宏斗ただ一人。

このnoteまでたどり着くくらいのドラゴンズ変態の皆様であれば、森山と聞けば「あぁ4月の酷使が効いたのかな」と思うのではないでしょうか。

彼は4月から80球以上の中6日を2回した後、故障組に入りました。

今季 森山の全登板(すべて2軍)

この運用についてSNS上では「一体2軍の育成環境はどうなっているのか」「投手コーチは無茶をさせすぎだ」という声が上がっていました。

念のため2軍の首脳陣を擁護する意見として"そもそもの編成に少し無茶があった"、"先発候補の中継ぎ転向を連発して頭数が少なくなった"という前提は抑えておきたいところです。

今回の森山の怪我・育成落ちは「4月の酷使」が原因かどうかはわかりません。様々な要因が絡まって起こったものだとは思います。
「酷使なんかではなくこれくらい普通だ」という意見を持つ人もいるでしょう。

そこで今回のnoteで光を当てたいのは「森山の運用は果たして妥当だったのか」ということです。

他球団の例と比較し、高卒投手はどのように運用すべきか考えていこうと思います。

同年代ルーキーたちと比較

森山の数字だけではどれだけの負荷をかけられていたかわかりません。
そこで全チーム高卒ルーキーのデビューから1か月のイニング数、球数、登板間隔の平均値を調べました。(支配下指名のみです)

※門別の球数は不明の1試合を除外した3試合の平均
イニング数は1/3=0.33として計算
小数点第2位四捨五入

つまり森山はデビューから1か月周りの高卒ルーキーと比較して
・3番目の速さでプロ初登板
・最も多く登板して
・最も長いイニングを消化し
・最も短い間隔で
・最も多い球数を投じた
ということになります。

グラフで見てみます。

登板なしのSB大野は除外

左上に行くほど高負荷、右下に行くほど緩いスタートダッシュをしたという図です。
森山がいかに突出しているかがわかると思います。

「どんな間隔であろうがまずは球数を少なく、多くとも60球弱」が今年は主流だったみたいですね。

ここからはシーズンを通して理想の運用を考えていきたいと思います。

まずは森山の数値に近い方であったT門別のデビューからの起用変遷を追ってみました。

比較①:門別 啓人

・デビューは中継ぎ1イニングのみの23球。
・初先発は中9あけて76球。
・徐々に球数を増やし、初めて90球を越えたのが6月1日で中14の試合。
・その後中6と中10前後を交互に組み合わせ、最も間隔が詰まったのはシーズン最終盤の中6→中7。

そして途中降板が一度もなく、必ずイニング最後まで投げ切らせています。
それでこの数値なのはマネジメント側が相当気を使って計算していることが想像できます。

ここでもう一度森山の表を見てみましょう。

初登板からから全て80球↑
負荷をかけたほうである門別と比べても異常値ではないでしょうか。

比較②:髙橋 宏斗

前述の通りここ5年チームで育成落ちをしなかったのは髙橋宏斗一人。
彼の1年目の運用を振り返っていこうと思います。

全て2軍成績 1軍登板は0

・デビューから1か月は中継ぎ、しかも中5.6日の慎重起用。
・初先発は中11日。
・先発はほとんどが中10日前後、最短でも中7
・100球は一度も超えていない。

この起用でも6月に一度離脱し(しかも初の中7をやった後)、リハビリ組に合流しています。

比較③:山下 舜平大

最後に現在のNPBで最も期待値が高いと言える、オリックスの山下です。
トレーナー主導で投手育成がうまいイメージのあるオリックスは彼の1年目をどのように起用したのか見ていきましょう。

全て2軍成績 1軍登板は0

・初登板の球数はわずか33球
・森山同様シーズン序盤に中6起用も比較すると球数は少なめ。
・100球越え0。
・シーズン終盤に3週連続中6で高負荷。

デビューから森山より間隔の詰まった中6→中7登板をしていますが、球数は抑えています。
シーズン最終盤の中6連発も球数は少なく、100球に届かせないよう降板させたりと、ここの部分にオリックスは気を使っていることがわかります。

山下・髙橋宏の初登板から1か月の平均とも比べてみましょう。

トップ層の選手と比べても、投げさせすぎてしまった感は否めません。

門別・山下は夏場あたりから90球越えの登板が続き、割と1年目からでも負荷をかけた印象でした。
しかし"初登板から1か月"という部分に限定して比較すると森山は高卒1年目の投手としては異次元の数字ではないでしょうか。
18歳が4月から中堅選手と同じような使われ方をするのはあまりにも酷です。

比較した3人のように
「シーズン序盤は登板間隔をあける、あけなければ球数を抑える。体が慣れてきた中盤から中6や100球越えチャレンジ」
という理想のシナリオを経験させてあげたかったところでした。

おわりに

髙橋宏・山下はドラ1投手。門別も順位は森山より上です。
「もともとのポテンシャルの違いがあったから怪我をしてしまった」
「森山以外の3人は順位が上なのだから選手だから大切に扱われて当然だ」
などなど"現場にしかわからないこと"だってあるかもしれません。

しかし森山に周りよりも負荷をかけた結果怪我をしてしまったのは事実です。
髙橋宏斗は侍ジャパンに選ばれ、Bs山下も間違いなく将来日本を背負う投手。T門別も阪神の育成実績から見れば、かなりの脅威になる確率は高いでしょう。
そんな彼らと競い合えるポテンシャルは森山にもあると思います。

ルーキーが怪我をしてしまうとその選手の成長が遅れてしまいますし、枠の無駄、アマ球界からの評判低下、今季経験したような他選手へのしわ寄せなどいいことが何一つありません。
じっくりスタートダッシュを切ることのできる編成を整えてほしいですね。


もちろん今回の比較は1年のみなので「信用できない」とツッコミを入れられたら確かにそうです。
データとしては信頼度が弱すぎるかもしれません。
ほかの年では他球団でもっとひどい運用をされた選手もいるかもしれません。

しかしもう少し負荷を抑えた運用をさせてあげてもよかったんじゃないかという事は少なくとも言えるのではないかと思います。

「森山の運用はこういう面でみれば妥当だった」というものがあれば是非教えてください。
たったこれだけのデータで彼の運用を否定するのは少し乱暴すぎる気もするので。

今回はここまで。
良かったら「スキ」押してくださいね!

note不定期更新中です。
よかったら他の記事ものぞいてみてください。

・おすすめ記事

データ引用
週刊ベースボール ONLINE
NPBオフィシャルサイト
中日ドラゴンズ オフィシャルウェブサイト
阪神タイガース公式サイト
オリックス・バファローズ オフィシャルサイト
※全て無料閲覧可能部分のみ引用


最後まで読んでいただき ありがとうございます。 良かったなと思ったらスキとシェアの方よろしくお願いします!