見出し画像

仙台育英高校野球部監督 須江航教諭 ~青春って密なので~


2022年夏の甲子園を制した仙台育英高校の須江監督の講演を聞きました。優勝監督インタビューで「青春ってすごく密なので」という言葉が話題になり、情熱大陸での特集、書籍は2冊とブレイクした方です。1000人のおじさんを相手に淡々とお話をされる様子は流石。情報の教員だとそうです。

甲子園で観衆が2万人くらいになると歓声で空気が揺れ、3万人を越えると地面が揺れる。高校3年間補欠だった私はボールに触ることもほぼなく、高校1年の秋に一度だけライトのポジションでノックを受けさせてもらうことがあったが、ボールを捕球しホームを見た時、1キロくらい先に見えてしまい放った送球はほぼ真上に。あえなく20メートルくらい先に着弾しそのまま交代、これが唯一の練習となった。

この経験もあり、「人生は敗者復活戦」と生徒に話す際には俄然説得力が増すと思っている。

2018年夏浦和学院に敗退した時は1000日で日本一になると談話を残し、2019年ベスト8まで進出するも星稜高校に1-18という大差で負けた際は、近い将来面白い野球で日本一になると話した。そして優勝した年、18人のメンバーを適材適所で使い、投手においては大一番で疲弊しないことを目指して、大会を通じて一人の投手の投球数が200球に満たないという形、つまり継投で優勝した。

この大会は初戦から決勝まではすべて第一試合だった。8時には試合開始なので6時には甲子園に入る。ということは5時には宿舎を出る。ということは起きるのは3時半から4時。さぞかし大変だろうと言われるが実は違う。試合が終わるのは10時頃、12時には宿舎に戻ることができそこからはフリーだ。その為そこから対戦相手の分析等といったルーティンが組める。先般の春の大会はその逆で、すべて最後の試合となったため、宿舎に戻る22時。ヘトヘトで何もできなかった。

昨年全国制覇を成し遂げたが実は歴代の中では弱いチームだった。宮城大会もギリギリだった。一方2021年はこの10年で一番強いと言われたのに甲子園に行けなかった。その当時の3年生がなぜ自分たちは甲子園に行けなかったのかを下級生にプレゼンしてくれた。そして様々なスポーツの優勝候補が敗れていく様を皆で研究した。今の生徒は情報収集能力にたけ、自分の納得した事や理解できた事にはものすごいパワーを発揮する。

青春って密の真意について触れたいと思う。この密という言葉はコロナをきっかけにネガティブワードとして使われているが、以前は決してそうではなかった。濃密な時間をすごせたとか、密な関係性を構築できたとか。それがコロナを機にちょっとした生徒同士のわちゃわちゃした交流も密だという理由であれもこれもダメだと教員として指導しなければならなくなってしまった。密の意味合いが逆転してしまったと感じている。優勝監督インタビューでは用意していたわけではないが、そういった想いもあり全国の高校生に拍手をしてあげてほしい。青春は密なのでという発言につながったのかもしれない。

「まとめ」

青春って密、に関する真意。学生からかけがえのない時間をうばったコロナ。それによって意味が逆転してしまった「密」という言葉に対する須江さんの気持ちがあのような形で言葉として現れたようです。

野球好きな私としてはもっと野球のエビソードを聞きたいくらいだったのですが、野球関連の話はほぼ上記の通りで、あとは指導論、リーダー論だったと思います。

肯定的な命令は否定的な命令を凌駕する。ここ数年で一気にスポーツがスマートなものになったと思いませんか。先日まで盛り上がったWBC、選手達が楽しそうにプレイしている姿が子ども達からの憧れを引き寄せたのだと思います。

「人は欲しいものしか求めない」のでとにかく聞くことだと強調されていました。選手と個別面談する際は「最近どー?」と聞くそうです。じっくり聞いていくとプレイのこと、授業のこと、親からの期待のこと様々出てくるのだとか。それに合わせて本人の自己肯定感のレベルをランク付けして保管し、それに合わせて声がけをするそうです。なかなか大変な作業です。

しばしば怒るとは感情に任せて、叱るは理路整然とと言われますが、結局相手にネガティブな感情を与えている点においては同じだと解釈されていました。しかし練習中どうしても声を荒げてしまうこともゼロではない。その場合はネガティブな感情を与えてしまったことへのケアをその日のうちに丁寧に行うそうです。その日寝る時に思いださせないように配慮しているそうです。

最後に失敗させることは挑戦の証。成功はアートだというしめくくりでした。

成功はアートというのは再現性の問題です。例えば甲子園で全国制覇することの再現性はどうでしょう。組み合わせの妙、偶然の何々、その積み上げという意味ではアートと定義し、それよりも個人もチームも失敗を許容し、挑戦し続ける環境を醸成していくことを意識しているそうです。

いかがでしょうか。相手が発展途上の子どもなら打てば響くでしょうが、凝り固まった大人だと、、、

わかります。ただリーダーとして、それもまた挑戦とするならば、その挑戦は人生に彩りや喜びを与えてくれるものではないでしょうか。そんなお話でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?