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儲かるための大原則 【世界標準の経営理論1:SCP理論】

「世界標準の経営理論」を体得するために

昨年末に「世界標準の経営理論」という本が出版された。この本には世界中で研究が進められてきた約30の経営理論がわかりやすく解説している、言ってみれば、経営理論の辞書である。

一つ一つの理論が短くまとめられてあり、大変読み易い本なので、さらっと読むとわかったつもりにはなるが、その一つ一つがとても深い内容のため、次々に理論を読み進めていくうちに理解が浅いままどんどん忘れていってしまうという問題点がある。

序章にも書かれているが、経営理論は現象(実践による経験)との「知の往復」を繰り返すことにより「思考の軸」が磨かれていくものである。

何としても全理論を身に付けたいと思い、1年かけて月に1回の有志の勉強会を開き、少しずつ読み進めることにしてみた。そこでの議論は大変有意義だったので、自分の学びも含めてnoteにまとめていきたいと考えている。

飽きっぽい性格なのでちゃんと続くかかなり怪しいが、頑張ってみたい。

【読解】SCP理論とは

一番初めの経営理論は、戦略論の大家のマイケル・ポーターが確立した「SCP理論」である。一般的に戦略を議論する時に使われる「差別化戦略」の根拠となっている理論だと理解している。

本書では、この後もたくさんの理論が紹介されていくが、個人的には、企業が儲かるための大大大原則がこのSCP理論だと思っている。

SCPとは、structure-conduct-performance(構造-遂行-業績)の略であり、「この世には儲かる産業と、儲からない産業がある。」という事実に対して、SCP理論はその理由を説明してくれる。

SCPの前提条件は、「完全競争」と「完全独占」という概念を理解することから始まる。

「完全競争」の条件
条件1 市場に無数の小さな企業がいて、どの企業も価格決定権がない。
条件2 他企業の参入・撤退障壁(コスト)がない。
条件3 製品・サービスが同業他社と同質である。差別化されていない。

この時、企業は、全く儲からない。

一方で、「完全独占」の条件は全くその逆であり、すなわち、
・業界に1社だけ存在して、価格決定権がある
・他企業が参入できない状態にある
・1社だけなので、そもそも差別化もない

この状態の産業が、最も儲かる。

そして、すべての業界は「完全競争」と「完全独占」の間のどこかにプロットされているため、SCP理論の要点としては、企業にとって重要なのは、自社の競争環境をなるべく完全競争から引き離し、独占に近づける(≒寡占)ための手を打つこと、ということになる。

そしてポーターは、寡占状態を作るためには、上記完全競争の条件2にあたる「参入障壁」を作ること、もっと言うと、産業内の「企業グループ間(所謂「業界」)の移動障壁」が大事であり、自社が属するグループの企業数が少ない方が、そのグループが独占状況に近づくため、結果的に他者に似せない、すなわち「差別化戦略」の重視という考えに至ることになる。

他者と同じことをしない

SCP理論とそこからの差別化戦略から学べる普遍的な思考の軸としては、常に「他者と同じことをしない」という、言って見れば当たり前のことだと思うが、そうした目線から仕事や生活を見てみると、知らず知らずのうちに他者と同じ行動をする力学が働いていることに気づく。

たとえば、仕事で新しい取り組みをする時、常に他社事例を調べ、近しいことをやっていると決裁者が安心して説明しやすくなるといった話。

また、個人のキャリアを考える時にも、同期や同業他社の近い世代などの他者と比較して、それに対して優劣を考えてしまい、無駄に焦ってしまうという話。

このように枚挙にいとまがない。

誰かと比較することで自分(自社)の立ち位置を確認するのは当然のことだが、他社と似ていることで安心する、というのは危険信号だということになる。

もし、自分自身や所属している会社が「完全競争」の条件を満たす動きをしているならば、それは儲からない(もしくは、価値を生んでいない)状態に向かっていると認識した方が良さそうである。
条件1 市場に無数の小さな企業がいて、どの企業も価格決定権がない。
条件2 他企業の参入・撤退障壁(コスト)がない。
条件3 製品・サービスが同業他社と同質である。差別化されていない。

自社は何業界で戦っているのか?

ここで一つ大きな問いにぶつかる。
それは、自社は何業界で戦っているのか。もう少し正確にいうと、「自社は、何という市場で顧客に価値を提供しているのか?」

特に企業の規模が大きくなればなるほど、いろんな事業を営んでおり、それぞれの事業部門はそれぞれの業界の中で競合や顧客を定義していることが多いと思う。

ただ、事業部門はオペレーションの効率化を高めるために組織されることが一般的なため、自然、業界標準化・コモディティ化する傾向がある。つまり、どちらかというと完全競争に近づくリスクは高まっていく。

オペレーションの効率化自体は当然なすべきことだと思うが、問題は、では会社全体としては何市場で勝負するのか?という方針である。その方針がない限り、各事業部門はそれぞれ「完全競争」に突き進んで行く力学が働いてしまうため、常に上記の問いを考え続けることが重要なのだと思われる。

※最後までお読み頂きありがとうございます。ご注意頂きたいのは、あくまで私の解釈なので、ぜひ本書を読んで頂ければ幸いです。


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