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自分の強みを正しく認識した人・組織は強い 【世界標準の経営理論2:リソース・ベースド・ビュー】

前回のマイケルポーターらのSCP理論に続き、競争戦略の2大基礎理論とも言われている「リソース・ベースド・ビュー(RBV)」。

3年前、ジェイ・バーニーの論文"Firm Resources and Sustained Competitive Advantage"(1991)を読んで以来、なんとなくこの理論が好きになり、今でも公私の様々な局面においてRBVを思考の軸にしている。

自分しか持っていないモノこそ価値があり、それを生かした者が勝つ、という、大変分かりやすく、腹落ちしやすい理論のため、実用に向いていると感じる。

【読解】リソース・ベースド・ビューとは

SCP理論と「対」の関係として紹介されており、SCP理論が組織が生み出す「アウトプット(製品・サービス)」に焦点を当てているのに対して、RBVは組織の中の「リソース=インプット(人材、技術、知識、ブランドなど)」に焦点を当てている。

バーニーのRBVの前提は、企業が持つリソース(人材、技術、知識、ブランドなど)はそう簡単には他の企業に移転するモノではなく、まずはそのリソースに焦点を当てるべきという点である。

その上で、バーニーが示したのは、

■RBVの命題
命題① 企業リソースに価値があり(valuable)、希少な(rare)時、その企業は競争優位を実現する。
命題② そのリソースが、模倣困難(inimitable)で、代替が難しいとき(non-substitutable)、その企業は持続的な競争優位を実現する。

「模倣困難性」は、蓄積経緯の独自性、因果曖昧性、社会的複雑性からなると説明されている。真似できない複雑さ、というところか。

RBVには理論的な課題がたくさんあり、様々な批判もあるようだが、経営学研究の中での引用数はSCPよりも高く、とにかく重要な理論であるということには間違いがない。

【読解】SCPかRBVか?

経営学の研究では、長らくSCPかRBVどっちが大事か、という議論が続いてきたようだが、結論としては両方とも大事、ということで落ち着いているようだ。

そして、1986年にバーニーが書いた論文によると、企業か競争する環境によって戦略は使い分けるべきであり、自分がどの競争環境にいるのかを俯瞰して、競争環境にフィットした適切な戦略を取ることが何よりも大事だという。

①IO型の競争 :産業・競争環境の構造要因が競争に影響を及ぼしている
【取るべき戦略】 SCPに基づき、参入障壁を築いたり差別化を図る
例)米国シリアル業界、コーラ業界 → 広告費や棚の占有で参入障壁を高めた
②チェンバレン型の競争 :製品・サービスは差別化されているが参入障壁がない
【取るべき戦略】RBVに基づき、企業の持つリソースにより「勝つ差別化」をする
例)かつての日本の自動車、家電メーカー → 自社資源を強化
③シュンペーター型の競争 :不確実性が高く、予測のしにくい状況
【取るべき戦略】試行錯誤をして、環境変化に柔軟に対応する
例)IT業界 → 技術革新のスピードの速さ、顧客ニーズの変化

このようにしてみると、今の競争環境が①②で解決できな場面が数多く見られてきており、③の競争環境に合わせた戦略への対応が求められはじめているが、現実的には、競争環境を正しく把握できていないために今まで通りのやり方(①②)で戦おうとしている例はそこら中にありそう。

自社の強み(固有の資源)を正しく認識できているか?

戦略を議論する際、(私はあまり好きではないのだが)SWOT分析というのをやることがある。その際、だいたい思いつく「強み」などをただひたすら書き出していくのだが、SWOT分析が有効に機能したことをあまり見たことがない。

ではバーニーのRBVに基づいて「強み」を考えてみたらどうだろうか。おそらく、簡単には答えが出てこないのではないかと思われる。

価値があり、希少であり、かつ、真似されず、代わりがきかない、、、

そんなものが本当に存在するのか???

それらを探る方法はいくつかあるかもしれないが、私個人が実践して有効だと感じている方法は、創業者の考えに触れること、過去の意思決定の積み重ねを知ること、である。

本書の中でもRBVの具体的なフレームワークとして、ポーターの「アクティビティ・システム」が解説されているが、その会社の独自の強みとは、過去からの複雑な取り組みの積み重ねではないかと思う。

それを知るのは大変難しいが、過去の文献やら諸先輩方の声、などを読み解いていくしかない。過去の意思決定の背景を正確に理解することも難しいし、過去と現代の環境とは状況も異なるため、「現代なりの解釈」にならざるを得ない。

それでも過去を探ることが大事だと思うのは、今、目に見えている資源(人材、技術、知識、ブランドなど)だけをみて、それが本当に「強み」なのかを判断するのは危険なためである。

なぜなら、「強み」は、戦略の拠り所であるため、組織の中の共通認識になることが求められる。誰しもが納得感のある「強み」として定着させるには、そうした過去を掘り下げることが、力強い戦略の源になるのではないか。

RBVやSCPは「個人」や「街づくり」にも適用できる

冒頭にも述べたが、RBVやSCPはシンプルな理論のためとても汎用性があると考えている。

例えば、自分のキャリアを考える際、自分の過去の積み重ねや自分自身の性格などを知ることを通じて、固有の資産=「強み」を見つける。

一方で、社内外や世の中の人材競争環境を見たとき「完全競争」に陥るようなキャリアを積み重ねていないか?もしくは、自分の「強み」から見たとき、あまり競争が起こっていない独自のポジショニングに立てる市場はないか?

そしてその市場が見つかったとき、持続的な競争優位を保つためにどのような努力をし続ければ良いか、など意識的・戦略的に自分の行動をコントロールすることができる。

「街づくり」も同じだと思っている。

本質的にその街の固有の資産を理解して、どの市場で競争するのか(競争しない環境にするのか)。

だから、その街の歴史とか地形、を理解することを大事にしている。

このように、SCPとRBVには、シンプルな理論が故に、力強い行動のきっかけを与えてくれる力があると感じている。

※最後までお読み頂きありがとうございます。本文には独自の解釈が入っているため、「世界標準の経営理論」をお読みいただければ嬉しいです。


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