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「これ、詐欺じゃね?」と感じた案件と、確信に至るまでの過程と、打ち合わせ時の自衛策

フリーライターとして活動するようになり、大きなトラブルもなく、取引先にも恵まれ、ゆったりまったり楽しく仕事をできている今日この頃。

たまに詐欺だのやりがい搾取だのという話も聞くことを考えると、自分はラッキーなほうなんだろうなと。でも実際のところ、原稿料の未払いは何度かありまして……。それも、誰もが知るような企業が運営するメディアで。

中心になって運営していたのは下請けのフリーランスのようだったので、当時は「そういうこともあるかー」くらいの感覚でスルーしたのですが。それにしても、「イメージダウンにつながる心配はないのかしら……?」と軽く疑問に感じた覚えがあります。

そのくらいだったらまだマシなほうですが、他方では過去に一度、「あ、これはマジでやべえやつだ」と感じた案件もありまして。

今回はその件を忘れないうちにメモっておこうかと思い、こうしてnoteに向かって書き連ねているわけです。

結論だけ言えば、「数千円の原稿料が支払われなかった」という小さなトラブルではあるものの、実際は「それだけで済んでよかった」というタイプの話だったんじゃないかと。

“済まなかった”人は百万円単位で持って行かれたという話も聞いて、さすがにこれはアカンと。限定公開という場ではありますが、記録しておくことにします。


よくある依頼、降って湧いた違和感、見つけた確信

始まりは、よくある執筆依頼のひとつでした。

スタートアップ企業に勤める編集者さんから届いた、執筆依頼のメール。具体的には、Webサイトの記事のほか、紙媒体でもライターとして参加してくれないかという依頼でした。——この時点では、まだよくある話ですね。

そこで自分は、「こういう記事しか書けませんが、それでもよろしいでしょうか?」などと返信。その後に続いたやり取りでも、特に違和感はありませんでした。

続けてメディアのコンセプトを聞き、執筆する記事のイメージを確認。そのうえで、「じゃあ一度、実際に会って打ち合わせをしよう」という流れに。

向かった先は、都内のレンタルオフィス。ビジネス街近くの好立地で、対応してくれた担当者さんは同世代の女性。話を聞いてみた印象としても、とても具体的にメディアの構想と運営方針を立てており、「自分も楽しく記事が書けそうだなー」という感想を持ったことを覚えています。

その後しばらくして、企業の代表さんが登場。

第一印象は、「どこにでもいそうな中年男性」というもの。ただ、落ち着きがあるように見えて不思議と風格があり、どことなくエネルギッシュさも感じられる、いかにも「経営者」じみたおじさん。小脇に抱えたMacBookには、IT系企業のステッカーが多く貼られていました。

打ち合わせは滞りなく終了し、今後のスケジュールを確認したうえで、その日は解散。これは楽しくなりそうだぞと、「仕事したった!」的な充足感を抱きつつ帰宅しました。

そしてお礼のメールを送ると同時にやったのが、受け取った名刺を見ながら、担当者さんと社長さんの名前をGoogleで検索することでした。

──ちなみに、この時点では特に疑念も違和感も持っていません。これは自分が前々からやっている、「一緒に仕事をする(会って話す)相手の情報はあらかじめ調べておく」という習慣のひとつです。

SNSアカウントがあれば直近の投稿を確認し、インタビュー記事があれば目を通しておくことで、コミュニケーションを円滑に進めようという狙い。人見知りゆえ、人と会うにも準備が必要なんです……はい……。

ところがどっこい。

名刺の名前をGoogleで検索してみたところ、担当者さんと社長さんのどちらも、本人と思しきアカウントが見つからなかったのです。

今どきのWebメディアを運営している会社の社長さんが、自分のアカウントを持っていない……だと……?

会社の公式TwitterとFacebookは見つかったものの、それも書きこみは数件だけ。企業ページも簡素なものでした。

普段だったら、「まあそういうこともあるよねー」くらいでスルーするところ——なのですが、そこで違和感。企業のページをよくよく見ると、「会社情報」の部分に代表者名と連絡先が書かれていなかったのです。

もちろんSNS全盛の現代とはいえ、「会社の方針としてSNSアカウントを持っていない」可能性は否定できません。SNSアカウントが見つからない件については、そう考えることでまだ納得できます。

ただ、企業のホームページは設けつつ、レンタルオフィスの所在地まで明記しておきながら、そこに代表者名も連絡先も書かれていないのは……さすがにおかしい。

そのままスルーしてもよかったのですが、一度降って湧いた疑念を放置するのもモヤモヤが残る。そこで、失礼だとは思いつつも、例の検索ワードを打ちこんでみたわけです。


「○○○○(社長さんの名前) 詐欺」
「○○○○ 過去」


——といった感じで。何もなければ問題はないのですが、少しでもマイナス情報が出てくるのであれば、今後は疑ってかかる必要があるんじゃないかと思いまして。

はたして……結果は、案の定でした。

詐欺情報を収集しているページで見つけた、社長さんの名前。その横には、「詐欺師」「被害に遭った」「預けたお金を持って行かれた」という、数々のヤバげな口コミが。それも、10人以上からの書きこみがあったのです。

とはいえ、「まだそうと確定したわけではない」とも当時の自分は考えておりました。同姓同名の可能性もあるし、詐欺と誤認したすれ違いや、実態のない誹謗中傷というケースも考えられる。もうちょっと情報を集めてからでも、判断するには遅くないんじゃなかろうか——と。

実際、そのような疑念を抱きつつも、担当者さんと仕事のやり取りは続けていました。小さな記事の執筆依頼もすでに受けており、納品を完了させていた格好。その段階でドロンされているわけでもなかったため、ひとまずは判断を保留しようと考えたわけです。

ところがある日、怪しい動きが目に入りました。

いつもどおり担当者さんから送られてきたメールを見ると、会社名が変わっていたのです。さらにはレンタルオフィスも別の場所に変えたらしく、「次回の打ち合わせはそちらでお願いしまーす」とのこと。……んんんー??

それだけなら「たまたま組織を再編するタイミングだったんだろうなー」で済ませるところですが、もともと違和感があったこともあり、疑念は募るばかり。しばらくして公開された新規サイト(メールには記載がなかったため、自分で探した)にも、やはり代表者名&連絡先は書かれていない。

違和感は大きくなる一方なのに、情報不足ゆえ、自分ひとりではジャッジを下せないのがもどかしい。前述の詐欺情報サイトは継続してチェックしていたものの、古い書きこみは数年前のものであり、なかなか新しい情報が出てこなかったんですよね。

うーん、なんとかして調べる方法はないものか……。

そこで、はたと思い出した。「企業サイトに掲載されている情報は少なくとも、ページそれ自体の情報は調べることができるじゃないか! 」と。

いわゆる「whois」ですね。

WHOISは、 インターネットレジストリが管理するインターネット資源の登録情報を提供するサービスです。 端的には、IPアドレスやドメイン名の利用者を検索する時に使います。 直接的な利用者のデータが表示されない場合もありますが、 問い合わせの手がかりにはなります。

WHOISとは - JPNIC

whois情報を調べられるサービスを利用し、件の企業サイトのURLを入力。さて、どういった結果が出るか——とそこに表示されたのは、担当者さんでも社長さんでもない、個人の管理者名でした。それだけでは判断が付きませんが……幸か不幸か、その名前には見覚えがありました。

名前を見たのは、例の詐欺情報サイト。とある口コミで、社長さんの名前と一緒に「詐欺師」として書かれていたのが、その名前だったのです。

どうやら複数人で活動しているグループらしく、「詐欺師注意!」と、ほかの口コミサイトでもその名前が挙げられているのが目に入りました。

さらに調べていくうちに、彼らが過去に展開していたサービスと、そのティザーサイトのアーカイブも発見。そのサービスのひとつが、打ち合わせ時に社長さんが「これから展開予定の事業」として話していたものと完全に一致したのでした。……こりゃもう、間違いないでしょう。

この段階で限りなく黒に近いグレーではあったものの、こちらはすでに原稿を納品してしまっている身。せめて原稿料が振り込まれるまでは連絡をスルーするわけにもいかず、後日また打ち合わせに赴くことにしました。

もちろん、警察に相談することも考えました。ただ、その時点では実害を被っておらず、あくまで「ネット上の噂によれば、怪しい人」程度でしかなかったので……。お金を騙し取られたわけでもなく、口コミサイトに載っていた「怪しい話」を持ちかけられたわけでもありませんし。

まあ、ひとまずは話を合わせつつ、原稿料が支払われた段階で、「別件が忙しくなってしまったので今後は依頼を引き受けられないっす! すまそん!」的な言い訳と共にフェードアウトしようかな……と考えていたのですが。


次の打ち合わせで開口一番、「社外取締役になりません?」とのお誘いが。

わーい! ……って、マジでネットの口コミどおりの手口じゃねーか!!


のほほんと平和ボケした頭で話を聞いていた自分も、さすがにこの言葉を耳にした瞬間、警戒モードへ移行。

完全に真っ黒だと判断し、その場では「他の仕事が忙しいんで……」「まだ若輩者ゆえ……」などと言い訳をこねくり回し、スルーに徹することにしました。これはアカンやつだ……関わっちゃいけないやつだ……。

結局、その日の打ち合わせでは受け流すことに成功。数日後、原稿料がどうのとか言っている場合じゃないと判断し、「申し訳ありませんが、別件が忙しく……」という連絡をして、契約を打ち切ることにしたのでした。

ちなみにその連絡に対して返事はなく、当然のように原稿料も振り込まれていません。デスヨネー。知ってた。

この出来事を経て学んだこと、自衛策としては、以下の2点に集約されるんじゃないかと思います。


1. 情報大切!初めて会う相手のことは事前に調べ、違和感があれば警戒する

「仕事でも趣味でも、一緒に何かの活動をしていこうとする相手については、可能なかぎり事前に調べておく」こと。

Google検索は優秀なので、胡散臭い情報があれば少なからずは引っかかるはず。ポジティブなインタビュー記事などがあれば信頼できますが、SNSアカウントをはじめ、「何もない」場合は要注意。

当然、その人についてポジティブに書かれているページがあったとしても、イコール安心とは限りません。個人ブログで自画自賛・自作自演することは容易いですし、見た目は普通のメディアでも運営が怪しい場合もしばしば。

また、今回のように「サイトはあっても名前(連絡先)がない」ケースは、それだけで警戒する理由になると思います。

前に話題になったキュレーションメディアやパクリサイトの件を見ても、「それなりの規模で活動していながら連絡先を書かない」のは、「世間的にはあまり褒められない活動をしている人」に見られる特徴だと思うので。

必ずしも「連絡先が不明=怪しい人」だとは言いませんが、注意するに越したことはありません。ネットで情報を集める際には、書いてある情報以上に、「書いていない情報」を意識するように心がけたいところですね。


2. 少しでも怪しいと思ったら自衛策を!ボイスレコーダーは必需品

事前に調べた結果、少しでも「何か怪しいような……?」と感じたら、その場で断ってしまうのが最善策。

ただ、それだけでは判別がつかない、ひとまずは実際に会って話をしてみよう——という場合でも、最低限の自衛策は講じていきたいところです。たとえば、以下のような。

 1. 他人の目がある喫茶店などで会う
 2. その場で決断しない(契約書にサインしない)
 3. ボイスレコーダーを持っていく

ぶっちゃけ、「喫茶店で怪しげなビジネスの話をしている人」なんてそのへんにゴロゴロいるので、それだけでは対策になりません。ただ、「第三者の目がある」ことで安心できる一面もあるんじゃないかと思います。

あからさまに法に抵触する話は公共の場でできないし、密室よりは冷静に話を聴くことができます。相手を「話せない」立場にしつつ、自分が「冷静になれる」空間として、喫茶店は適した場所だと言えるのではないかしら。

また、当然と言えば当然ですが、「その場で契約書にサインしない」こと。少しでも怪しさや違和感を覚えたら、判断は保留にするのが基本戦術です。

その場では持ち帰り、後ほど詳しい人に契約内容を吟味してもらうとか、ネットで検索してみるなどして、おかしい部分がないか確認します。契約に限らず、「依頼を受ける」「口約束をする」といった「決断」全般は、その場では避けるようにしたいところです。

そして何より、困ったときのボイスレコーダー

「録音させてもらいますねー」と出すのが怖ければ、スーツの内ポケットにでも入れて、録音ボタンを押しておくだけでも安心できるはず。いざという時の証拠になりますし、第三者に判断を仰ぐことも可能になります。

かくいう僕も、2度目の打ち合わせには懐にこっそりとレコーダーを忍ばせて向かいました。あとで話の内容を聞き返し、「やっぱり怪しいじゃん!」と再確認することができたので、ないよりはマシだったと思っています。


まとめ

そんなこんなで長くなりましたが、「なんか怪しげな人から仕事の依頼を受けたけど、Google先生のおかげで事前に対策することができたよ!」という話でした。いやー、よかったよかった。やっぱり「調べる」のは大切。

大々的に顔や名前を出しているわけでなければ、フォロワー数もさほど多くはない。そんな自分にすら怪しげな話がかかるくらいなのだから、人気のブロガーさんやライターさんはもっと大変なんだろうなーと。

ただ、なかなか一瞬で判別が付くものでもないし、基本的には良い人ばかりだと思っているので……油断してコロッと騙されそうで怖いですね……。

いずれにせよ、何か不審や違和感を覚えたら、何かで「調べる」、誰かに「相談する」のが大切だと言えそう。

基本ひとりで仕事をしているフリーランスゆえ、難しいこともありそうだけれど……と考えると、やっぱりブロガー・ライター仲間が欲しいなあ……とも思えてきたのでした。意識の低いブロガーコミュニティを作らなきゃ……。

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