本当の上京2

前の文章がある程度うけたので東京での生活について書いてみようと思い、わざと阿佐ヶ谷で降りて家まで歩いたりしてみると、深夜までピカピカ光っている安めの喫茶店がかなり東京という感じがして、このピカピカさはピザが置いてないとおかしいからな、と入店するも適度なコーヒーが400円にウェイトレスがみんな可愛いだけだった。ピザの甘い版ぽいのはあった。

前の街では、様子のおかしい女性がいい加減なスレンダーさでカクカク歩いていて俺はそれがひどく怖く、地上から逃げようと歩道橋に登ってみるもアジア人が酒に溶けながら眠っていたりしてそれもとにかく怖く、部屋に帰ってもアパートの敷地内であるはずの窓の外を人が歩いたりしていて、満足にしこれない日々が続いていたのだけど、杉並区も別に人間は怖くて、特に高円寺の客引きは全員人殺しだった。

これまで自分の人間関係の構築を阻んできた「人が怖い」という気持ちが埼玉から東京にワープしただけで変わるはずもなく、空を飛ぶ鳥を見あげお前になりたいよ、それか猫とか、染谷将太くんもいいですね、などと呟いていると実家の顔たちが浮かび、もう2年も帰ってないな、もう2年も帰っていないなと思うのも非常に上京ですね…とベランダで外を眺めながら、他人の顔についてどうこうより、部屋で鳴っている水道局からの電話を無視することに今は東京で忙しい。

良い人たちに恵まれたおかげで高円寺のバーに立たせていただけることになり、虫が眼鏡をかけているだけの自分が省みもせずにおこがましく「私とお酒が飲めますよ」と宣伝を打つ姿を、地元のミスタードーナツで無一文の俺からたまたま持っていたトランプをカツアゲした坊主の不良が見たらどう思うだろう?これまた良い人たちのおかげでバーは盛況を見せ、狭い高円寺ででかい顔ができるかどうかの瀬戸際を見事クリア、夜も涼しくならないぜ一体、とくたびれ顔で古書屋に入店することも可能となり、僕は元気でいるよ、心配事も少ないよ、東京の汗は流れずに肌を湿らせるだけなのさ、と祖母に話すとはやくお金を返してください、と腹を刺されたので急いで電話を切った。

出来事が積み重なる度に新鮮で、何年か後にあの夏、と思いだす夏なんだろうな、と西友で冷凍食品たちの表面を撫でているときに思う。熱さで夏を感じるんじゃなく、冷たさで夏を感じるのは、たぶん不良のやることで、俺は人間包茎から地元でいつか見た不良になることができたのです。サンマルクの看板には「CHOCO CRO」という文字がさりげなくアーチ状に踊っているのを知っていますか?かなりいいですよね

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城戸

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