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ジョン・ドゥランがアストンビラにもたらすものと、MLSにとってこの移籍が持つ意味とは

昨年10月、シカゴ・ファイアFCのエズラ・ヘンドリックソン監督はストライカーのジョン・ドゥラン「本当に特別な選手」と称し、世界に羽ばたくとを予想していた。

ヘンドリックソンの発言に全く嘘はなかった。

メジャー・リーグ・サッカーの世界がちょうど目覚めた時、プレミアリーグのアストンビラは19歳のコロンビア人のワンダーキッドとの移籍に合意したと発表した。

移籍金は最高$2,200万に到達する見込みで($1,800万は保証)、MLS史上2番目に高い金額だ。シカゴも火曜日に正式に移籍を発表した。

では、ドゥランはアストンビラに何をもたらすだろうか?そして、この移籍がMLSにとって意味することとは?この衝撃的なニュースを紐解いていこう。

ジョン・ドゥランとは?

ドゥランはピッチ中央やワイドでプレイできる選手で、2021年1月にコロンビアトップリーグのエンビガドFCから約$250万でシカゴが獲得した。しかし、当時は17歳だったため、18歳になるまで、正式にMLSでメンバー入りすることはできなかった。また、当時では、MLSチームが獲得した最も若い外国籍の選手だった。

今では高額な移籍金での移籍を実現させたドゥランだが、シカゴのチームでブレイクしたのは7月中旬だった。しかし、一回ブレイクしてからは、なぜそれまで起用されなかったのか、という疑問が浮上し、最終的にシーズン中1,363分出場(27試合出場、うち14試合が先発)し、8ゴール3アシストを記録した。

勢いに乗ったドゥランは、可能性のある南米のタレントから、瞬く間に、僅かな差で2022 FIFAワールドカップの出場権を逃した、コロンビア代表のストライカー候補に名を挙げた。既にA代表で3キャップ誇っており、南米U-20選手権の主要メンバーである。コロンビアの次世代を象徴するタレントだ。

彼の経歴からみれば、ガーディアンの2020年の次世代リスト(サッカー界でのベストヤングタレント60人)に選出されたのも不思議ではない。

彼のプレイタイプは?誰と比較可能?

この19歳はまだ荒い部分が多少あるが - 主にコンビネーションプレイや守備面 - 彼のゴール前の嗅覚とフィジカルは数々のディフェンダーを困らせてきた。彼はプレミアで張り合えるだけのパワーや強さを持っており、ビラでは、ちょっとしたチャンスも決定機に変えられるクリエイティビティとテクニックを兼ね備えてる。

ドゥランは強く、バリエーションのある走りを攻撃時に見せてくれ、多くの関係者から称賛を得ている。

ベンフィカやリバプールがこのコロンビア人のタレントを獲得する噂が流れていたのも理解できる。プレイスタイルやスキルはASローマのタミー・エイブラム、バイヤー・レバークーゼンのパトリック・シック、モナコのブリール・エンボロを彷彿とさせる。完璧な比較がこれらの選手とできるわけではないが、ドゥランがアストンビラにもたらせるもののイメージをすることはできるだろう。

MLS全体を見渡しても、ドゥランは特にxG(約0.53)で、リーグ内のトップ選手と比較してもスバ抜けている。1,500分しか出場していないという例外はあるが、海外クラブのスカウトが唸るほどの数字だったことだろう。

実際いくらだったんだ?

Transfermarktによると、ドゥランはアストンビラ史上、14番目に高かい移籍金で加入したということだ。プレミアリーグのクラブが持っている資金力を考えると驚く額ではない(特にブエンディアやレオン・バイリーを最近倍い以上の金額で獲得しているため)。

しかし、より重要なのはヨーロッパのクラブがMLSから良い選手を獲得できるということと、その選手が5大リーグでも通用すると信じていることだろう。$2,200万という移籍金は、過去MLSが放出した選手の史上最高移籍金と比較しても、バイエルン・ミュンヘンのアフォンソ・デイビスとニューカッスル・ユナイテッドのミゲル・アルミロンに次ぐ金額となっている。

シカゴは、あまり注目されていないクラブだが、売却が得意なクラブとなっている。以下、直近の移籍史上で放出した選手とその移籍金だ:

  • ジョン・ドゥラン:$2,200万 → アストンビラ

  • ガガ・スロニーナ:$1,500万 → チェルシー

  • プジェミスワフ・フランコフスキ:$300万 → RCランス

  • ジョルジェ・ミハイロビッチ:$600万 → AZアルクマール(CFモントリオールの移籍から10%を手にした)

簡単な計算をするだけでも、約$4,000万の獲得金額になる。ファイアは若手2人(ホームグロウンと外国籍)を直接プレミアのチーム、ポーランド代表経験もある選手をリーグアンのタイトルを狙えるチーム、そして、育成料と引き換えに、エールディビジへと選手を売却したことになる。全て直近18ヶ月以内にだ。

繰り返すが、MLSのクラブはグローバルの移籍市場においても大きなプレイヤーになりつつある。そして、このトレンドは加速していくだろう。

U22枠に対する影響は?

知らない人のために説明すると、2021年4月より、MLSはU22枠を設け、各クラブが若手に投資しやすいようにした。まだ導入されて間も無い取り組みだが、クラブへの予算へのダメージを軽減しつつ、魅力的なオファーで若手(22歳以下の選手)を獲得できるものとなっている。

あまり深くMLSのロスター規定に入り込まずに説明すると、各チーム、U22枠に3名登録することができる(ただし、DP枠の状況にもよる)。たまにU22枠に新契約を結んだホームグロウンを登録するチームもいるが、多くの場合はドゥランのような外国籍の選手だ。

ドゥランが初めてU22枠から海外に飛び立った選手ではない。参考までに、コロラド・ラピッズはホームグロウンの左サイドバック、サム・バインズとこのような契約を結び、ベルギーのロイヤル・アントワープに売却し、FCダラスはウィングのサボルチ・ショーンをハンガリーのトップリーグに移籍させた。レンタル移籍もある:LAFCのMFフランシスコ・ヒネッラはウルグアイの王者ナシオナルにいるし、バンクーバー・ホワイトキャップスFCの中盤カイオ・アレシャンドレはブラジルのフォルタレーザに所属している。

しかし、ドゥランで獲得した移籍金は、U22枠がなろうとしていることを体現かしている。シカゴは南米からチームの得点王となった選手を獲得し、名の知れたプレミアのクラブに約9倍の価格で売却したのだ。素晴らしいビジネスだ。

今後もドゥランのケースに似た、U22枠からの移籍が増えるだろう – LAFCのミッドフィルダー、ホセ・シフエンテスLAギャラクシーのサイドバック、フリアン・アラウホ、そして、サンホゼ・アースクエイクスのFWケイド・コウェルが海外からの興味を惹きつけているという。しかし、どの選手もドゥランほどではないだろう。

ちなみに、MLSのチームは南米出身選手をU22枠のみに当てはめているとは限らない。アトランタ・ユナイテッドのMFチアゴ・アルマダ(現MLS選手初のワールドカップ優勝メンバー)とNYCFCでフォワードを務めるターレス・マグノの両者はDP枠で契約しており、早かれ遅かれヨーロッパのクラブが引き抜くだろう。しかし、ドゥランがU22枠にもたらした意味は今後のMLSに大きな影響を与えるだろう。

今後はどうなる?

アストンビラにとって、手続きを完了させ、ドゥランをスカッドの一部に迎え入れることだろう。現時点でミッドテーブル(11位)に位置しており、10月にエメリ新監督が就任して以来調子は若干上向いており、オリー・ワトキンズといったストライカーがチームを牽引している。

シカゴにとっては、DPのハイロ・トーレスシェルダン・シャキリと組めるストライカーを1人か2人獲得することだろう。39得点は昨シーズンリーグで最下位だった。ドゥランの活躍は大きかったものの、ファイナルサードで違いを生み出せる選手を早急に探し、2017年以来のAudi MLSカッププレーオフに進出したいところだろう。

その他の我々にとっては、世界一と言われるリーグでドゥランがどれだけできるかを見守ることだろう。

(原文:https://www.mlssoccer.com/news/what-jhon-duran-brings-aston-villa-what-his-transfer-means-for-mls

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