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そこにあるからさ

「なぜ、山にのぼるのかって?そこに、山があるからさ」

これはイギリスの伝説的登山家、ジョージ・マロリーが口にしたという、あまりにも有名な言葉です。この言葉、哲学的な含みを持った名言として、例えばこんな意味で用いられています。

「人生とは山のようなものだ。目先の小さなことに捉われず、その山の頂上を目指し、ただ一生懸命のぼればいい。そこには理由なんてない。それが、充実した人生を過ごす秘訣なのさ」

でも、実際は違うんです。マロリーが言う「山」はズバリ「エベレスト」のことなんですね。当時誰も登ったことのない山、エベレストの遠征隊に招聘されたマロリーは1921年に第一次遠征隊で準備偵察しルートを確認。翌1922年には第二次遠征隊で頂上を目指すもあと一歩で断念。ここで7名の犠牲者が出てしまい批判を浴びる中、1923年3月18日付のニューヨーク・タイムズの記事に書かれた記者とのやりとりはこれ。

Why did you want to climb Mount Everest?
「なぜあなたはエベレストに登りたいのですか?」

Because it's there.
「そこにあるからさ」

バッシングを浴びようが何だろうが、誰も成し遂げていないエベレストに挑戦すること、そして登頂することが登山家として歴史に名を残す最大の名誉だ!・・という明確な目的のためなのかどうか。1924年に3度目の挑戦で帰らぬ人となったマロリーが発見されたのは、死後75年経った1999年とのこと。亡くなる前に登頂を果たしたのかどうか、未だ謎のままなんですね。

さて。私は高専時代、ワンダーフォーゲル班に席を置いていたりするのですが、実は一度も山登りをしたことがありません。廃部の危機ということで名前だけ登録し、ワンゲル班としての活動は班室の大掃除と、その掃除の打ち上げ(飲み会)のみ。

「そこにあるからさ」

私にはマロリーの言葉を実感する日は来ないんだろうなーと思います。

[追記]
結婚してから知ったのが、妻が大学でワンゲル同好会に入っていたこと。音楽がメインだったと聞いていたのでビックリ。当時はシュラフを担いでがっつりと山登りしていたそうで。

「そこにあるからさ」

妻は「マロリーって誰?」状態ですが、その後世界を飛び回っていた妻は、この言葉の意味を深く実感しているんだろうなーと思います。


[2022.11.12投稿]いいね:33


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