【ライブレポート】水戸と山中湖とエビ中の夏(2)

4.ここにいる理由


 マフラータオルを買えたので、待ちに待ったランチタイムを迎えることができました。昼食はキッチンカーで調達すると決めていました。
 広場で営業しているキッチンカーの一群は『パクパクうーたん村』と呼ばれ、各メンバーがリクエストしたメニューを提供しています。私は既に買うものを決めていました。『星名リゾート』(キッチンカーの名前)の『焼きおにぎりからあげセット』(税込1000円)です。ミレペン(星名美怜)の家で作られているという焼きおにぎりと、タレがかかった鳥のからあげをセットにしたものです。
 しかし、『星名リゾート』の前にはかなりの人数が並んでいました。時刻はおよそ13時30分。暑さの盛りでした。それでも、諦めるわけにはいきませんでした。他のキッチンカーも並んでいた上、列が徐々に伸びていたからです。ここで諦めれば、ライブが終わるまで絶食を余儀なくされていたことでしょう。私はここにいなければなりません。
――都心に比べたら、まだまだ涼しい
 やせ我慢と残り少なくなったペットボトルのウーロン茶だけが支えでした。

 何とか買うことができたセットを片手に、広場を横切りました。山中湖まで近づけば、人もまばらになりました。ちょうど木陰のスペースに余裕があったので、そこに腰を下ろしました。直射日光さえ当たらなければ暑くありませんでした。ようやく落ち着くことができました。
 並んだ甲斐あって、焼きおにぎりもからあげも大変おいしかったです。

大葉で挟みタレをつけて焼いたおにぎり、と思われる『星名家風焼きおにぎり』。偶然ではあるが、愛用のリュックがMILLET(ミレー)

 食べ終わってからは、バスの中では読めなかった朝刊をスマートフォンで読みました。開場は1時間近く先だったので、焦る必要はありませんでした。同じ木陰ではファミリーのグループがレジャーシートを敷いて生写真を交換していました。昨日まで都心で仕事をしていたことを忘れそうになりました。

5.インフルエンサー


 朝刊を読み終わったところで、弁当のガラを捨てることにしました。入場する時でも良かったのですが、座りっぱなしも疲れます。それに、とあるファミリーにあいさつができるかもしれませんでした。前回の記事に「私は決して社交的ではありません。初対面の人との雑談は荷が重いです」などと書きましたが、そうも言っていられない事情がありました。

 私はよくnoteでアイドルのファンが書いた記事を読んでいます。グループは限定していません。知らないグループについての記事でも構わずに開きます。それでも、ファミえんが近づくにつれてファミリーが書いた記事を読むことが多くなりました。そんなある時、春ツアーについての記事を見つけました。私が参戦した水戸公演の約1ヶ月前に開催された苫小牧公演についての記事です。
 苫小牧公演に際し、ツイッター(現、X)上で1つの企画が行われていました。北海道民が苫小牧を訪れるファミリーのために苫小牧周辺の観光名所・名物料理・交通事情等をツイートする、という企画です。その企画に多くの北海道民が協力し、ついにはエビ中の運営にまで認知されるようになった、というようなことが起こっていました(エビ中doでしょう、というタグでXを検索すれば当時の状況が分かる。ツイートにはそのタグが付いている)。記事はその仕掛け人が書いたものであり、企画の動機や経過が記されていました。
 私はそのことをリアルタイムで知っているわけではありません。ツイッターでは基本的にいくつかのグループの公式しかチェックしていないので、当然です。
――これを1人のファミリーが始めたのか
 うなりました。他の記事にも、エビ中への熱の高さが伝わるエピソードが記されていました。そして、ファミえんに参戦する予定であることも。
 普通に生きていてはそうそう関わることはないような人物です。奇貨おくべし、です。

 幸いにも、先方にお会いすることはできました。しかしながら、緊張のあまり言葉に詰まってしまい、記事にする許可を取り付けることを忘れていました。そういった事情により、どういった人物だったか、何を話したか、といったことは割愛します。挙動不審であったであろう私に誠実に対応してくれた、とだけ記しておきます。

6.ロマンスのスタート


 木陰に戻って時間を潰していると、会場入口前に集合するようアナウンスされました。開場時間が近づいたのです。
――ここからが長いんだ
 うんざりしましたが、行かないわけにはいきません。足早に広場を横断し、整理番号ごとに分けられた集団に加わりました。
 人口密度の高い空間でした。時刻は15時手前。相変わらず暑かったです。そして、入場は各ブロック(ブロックがいくつあったかは忘れた)の整理番号順に行われました。150番の私の順番は当分先になることが見込まれました。1番が呼ばれた時、誰かが拍手をしました。周りのファミリーに次々と広がっていきました。
――平和な現場だな
 一緒に拍手をしながら、しみじみと思いました。

 いったん集団を離れてミネラルウォーターを買いました。戻ってみると、いくつかの番号をまとめて入場させていました。列は見る間に短くなっていきました。会場入口付近にはファミリーの名前が入った提灯が吊るされていました。昨年は関係者の名前だと思っていました。この提灯は後日、名前を入れたファミリーに届けられます。ちなみに、税込10000円です。

 受付を済ませて会場に入りました。チケットに記されたBブロックへと向かいました。
 Bブロック。スタンディングエリアでは最も外側のブロックです。整理番号が早い方だったらしく、中央に近い場所を確保することができました。昨年と左右が入れ替わったような位置でした。メインステージはともかく、センターステージはよく見えます。えまゆなの顔が、今回は確認できることでしょう。ひとまず安心しました。

 開演はまだまだ先でした。直射日光は弱まる気配を見せませんでした。しかし、あえてスマートフォンで夕刊を読むことにしました。終演後に集中力が残っているとは思えなかったからです。ディスプレイが光を反射して読みにくかったです。さらに、スマートフォンが熱くなっていました。何とか読み終わった後、すぐにリュックに放り込みました。やることがなくなってしまいました。

 暇を持て余すこと数十分、いよいよ『ebiture』が聞こえました。ペンライト(明るいので消灯)を握り、立ち上がりました。
 ぽーちゃんと過ごす初めてのファミえんです。えまゆなが参加する初めてのファミえんでもあります。楽しみでしかありませんでした。

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