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ブロンディールのイートインにおけるデザイン手法と嗜み方。

毎度お馴染み、ブロンディール好きによる「ブロンディール モノ語り」。
今回はブロンディールの嗜み方のひとつとして、イートインという極上体験をご紹介したい。ブロンディストである私がイートインを“強く”お勧めする理由として次の3点を挙げる。

【3つの理由】
▶︎藤原シェフの世界観のなかで藤原シェフの珠玉のガトーたちを藤原シェフのお父様に提供して貰いながら藤原シェフ(の味を)を心ゆくまで愉しめる。
▶︎持ち帰りのリスクとプレッシャーから解放され、フレッシュなガトーたちをフレッシュな状態のままで(産地直送)、淹れ立ての紅茶やコーヒーやワインなどヘヴンリーなマリアージュが愉しめる。
▶︎対ガトーという構図ではなく、対藤原シェフ、対お父様、という人から人へのリレーションを実感することが出来、ブロンディールという時間の中に身を置くことでしか得ることの出来ない体験となる。

世界観は五感で感じるもの

テイクアウトでは絶対に出来ないこと、それは世界観に全身で包まれること。
イートインでは望みの全てが叶う。
つまり五感を使い、五感で味わえるのだ。

五感とは「視覚」「嗅覚」「聴覚」「触覚」「味覚」。
ここに第六の感覚「萌え覚」が入ると六感をフル活用になる。(※萌え覚とは藤原シェフが奥の工房にチラッと見える姿をガトーに投影させて味わうと一層深みを増す感覚や、シェフのお父様の穏和な接客に孤高の味わいをガトーに表現する藤原シェフとのギャップを愉しむという上級者向けの嗜み方をしている時の感覚などを指す。)
店内に漂う芳しい薫りもスイングしているBGMも萌え感覚も何もかもが手に入る、つまり「リアルに、リアルタイムに、ブロンディールを体感出来るのがイートインの魅力」なのである。

①視覚

食べるケーキだけを見るのではない。ありとあらゆる視覚情報が没入感を高め、味わいへと寄与する。

店内の装丁、端から端まで隙間なく縦横無尽に並ぶ菓子たち、藤原シェフお手製という焼き菓子を陳列する木箱、フランスの蚤の市で仕入れてきたいうクラシカルな表情のシャンデリア、ワインやシャンパーニュ用のグラス、アニョーパスカルの木型、ふじみ野時代のファサードに飾られていたレリーフ、ふじみ野時代の美しくも懐かしい写真たち、フランス修行時代のモノクロームの写真、ギャルソン姿が絵になるお父様、厨房の奥からちらりと見える藤原シェフの御姿、壁に書かれたシェフからのメッセージ、、情報量に圧倒されて何度訪れても楽しめるし、入り込める。
他にはガトーの名札、文字に注目。
nouveau(新作)や気まぐれで出た商品は藤原シェフの直筆フォントで表記されている確率が高い。イタリック体でフランス語を「描いている」という感じ。いちいちカッコイイのだ。ここにもシェフの美学を感じる。もちろん日本語でカナも振ってあるし、説明も主要パートナだけ書いてあるので大体どんな感じのものなのかは分かるのでご安心を。
あと、ガトーの名札といえば説明はほとんど書いていない。これは藤原シェフからの挑戦状ではなく、ビビッときた印象で感じ取ってくれ、黙って食べてから判断してくれというメッセージなのだと思っている。
説明があると有り難いと思うことは勿論ある、しかし情報に溢れている世の中において、細かく説明されすぎると先入観が入ってしまったり構えてしまったりする、もっとリラックスしてビビッときたものは、きっと美味しいものの筈なので、まず口に入れて、味わってみることが大切だと思う。
一方で、実は、藤原シェフのガトーは見た目でおおよそが想像できるようになっている。
何故なら、華やかに見せる為の装飾は極力控え、ガトーそのものが表現したい味わいが自身を形作っている、もしトップなどに装飾を行う場合は関係性のあるものを採用する。例えば中にフランボワーズのコンフィチュールが入っているのであれば、トップにフランボワーズ果実のカット、杏であれば杏、ピスタチオであればピスタチオ、アニスで薫り付けをしているのであればあのスター型のアニス、などである。
例えばそのガトーの味わいとは直接関係のないショコラで飾り付けをする、何かキラキラなやつを付ける、苺のような存在をとりあえず載せる、などは藤原シェフにはおいては皆無、むしろ厳禁と言えるくらい排除が徹底されている。
しかしだからこそ、そのガトーが本来持っている力強さや持ち味(味そのもの)がきちんと伝わる形で表現されているし、つまり分かりやすいし、何よりも孤高の美しさへと繋がっている。
鍛え上げられた肉体がそれを纏うスーツやドレスだけではなく、なんてことのない普通の真っ白なTシャツでさえも通じる、華美な装飾がなくとも内から滲み出る美しさは真に美しい。つまり素材が本来持っている力を引き出し尊重し、結果として形作られたモノが美しさそのものだったというアプローチ、まさに美学に基づいたクリエイションなのである。

②嗅覚

店内へ扉を開けた瞬間に入り込んでくる匂い。芳ばしく、どこか神聖で、でもふと安らぐ。

パティスリー、そしてブロンディールを語る上で欠かせない情報がこの目に見えない「匂い」だろう。匂いとは想像以上に印象に焼き付く。あの匂いを求めてブロンディールに訪れるブロンディストも居る(私だ)。焼き菓子とパンと店内で淹れる紅茶やエスプレッソ、つまり甘さを誘うバターや焼きの芳ばしさが主体の薫りとなるのだが、複雑に絡み合うバランスにふと深呼吸をしたくなるというのは、訪れればあながち間違いではない事だと解って頂けると思う。
と書くと変態のように思われるかも知れないので一応お断りしておくが、ブロンディールに関しての行動で変態と言われるのは褒め言葉かも知れない。なぜなら好きだから。
香りはまだ続く、ブロンディールを最高に愉しむためにはイートインを強く推奨したい。その場合、紅茶と珈琲のどちらか迷うと思う。(マナーとして飲料を頼まないという選択肢はないと思っている)
迷った場合は是非「紅茶」にして頂きたい。藤原シェフの拘りによって、なんと、あのマリアージュフレールのマルコポーロが採用されているのだ。
花果実のようなエキゾチックで甘い香りは、漢らしい骨太で実直な藤原シェフのガトーたちを優美に気高くフワッとやさしく包み込む。まるで互いに寄り添い引き立て合うように、こんな蜜月の関係を知ってしまったらいけないという気持ちにさえ。
フレーバーティーが苦手だという方でも一度触れると魅了され虜になることが避けられない、実に心地よい時間を紡ぎ出してくれるのである。あぁ素晴らしい。
いよいよガトーが運ばれてくる。
その時貴方はどうするだろうか?
目で見て、次に行うアクションが鼻腔で匂いを感じる。もしそのまま食べてしまっていたなら勿体ない。
表面から漂ってくる芳しい香り、キャラメリゼやタルトの芳ばしい匂い、ヴァニラやラム酒の甘美な匂い、クレームシャンティやクレームパティシエールの高純度で神秘的な匂い、その他アーモンドやピスタチオ、フランボワーズ、オレンジフラワーウォーター、アニス、など薫りの愉しみは無限大に広がっている。
また、藤原シェフのガトーたちは表面から薫ってくるだけではなく内側から滲み出てくるように香気を纏っているのだから、つまりは味わいが形を作り上げている、ということなのだろう。だから美しく力強く、素朴な表情の向こう側から感じる色気がある。
では、食べる段階ではどうか?
もうここは在るがまま、受け入れるように鼻腔を抜ける心地よい香りに身を任せ、浸り、世界観に酔いしれる、それだけで全てが満たされてゆく。

③聴覚

耳からの感覚が味わいに影響を及ぼすのだろうか?
答えはもちろん及ぼす。

お店におけるBGMは重要なパート。店内に流れる音楽によって雰囲気が決まると言っても過言ではない。もし無音だとしたら、すべての音が耳へと入ってきてしまい緊張感が漂う。会話、食べる音、お客とスタッフのやりとり、などだ。リラックス出来る空間には必ず自然の音か心地よいBGMが流れている。パティスリーによってはフランス語のラジオが流れている。日本語のラジオだったら雰囲気も何もない。フランス語という異邦の言葉、フランス語の囁くような流れるような言葉の音が、聴きなれず耳につきすぎず、丁度良い塩梅でBGMの役割をしているのだと思われる。(フランス語が得意な人にはどう耳に入ってくるのか知りたい)ブロンディールは期待を裏切らない。軽快なスウィングが流れている。確実に気分がアガる。藤原シェフならではの、クラシックな型に敬意を払いつつ独自のアップデートを行い唯一無二のガトーにしてしまうセンス、モダンなキレのようなものを感じるとすれば、BGMのテンションがその一端として垣間見れるような気がするのだ。是非、耳でも味わって頂きたい。
ちなみに、店内に響くお父さんの「こんにちは」「お気をつけて」「またのご来店をお待ちしております」などのさりげない、付かず離れずの、温かみのあるお客様とのやりとりは第三のBGMだと思っている。
では第二のBGMとは何か?
ナイフでカットするタルトの「ザクッ!」とした音だったり、ムラングの「カシュッ!」と割れる音だったり、キャラメリゼされたナッツの小気味良い「カリッ、コリッ!」だったり、お菓子自体を愉しむときの音である。

④触覚

触覚とはすなわち触れることにより発生する感覚、イートインで触れることがあるもの、それはドア。ではなく「器とカトラリー」。

何が?と思われる方もいらっしゃるかもしれない。しかしどんな器やカトラリーを採用しているかにシェフの美学が現れると思っている。もちろん、藤原シェフならではの美学が貫かれている。
最も、シンプルを好み必要以上の飾り立てを良しとしないシェフらしく、シンプルでさりげなく、飽きがこなく、気取らずというもの。
お皿には筆記体でBlondirの文字が「あぁ今ブロンディールしていんだ」という気持ちをさらに高め、カップもポットも白でスタンダードな形、ナイフとフォークは大きすぎず小さすぎず程よい大きさで手にしっくりとくる。漢らしいガトーから繊細なガトーまで幅広く対応出来、華麗なアシェットデセールまでイケる。
個人的にはスペシャリテである「デリスピスターシュ」や裏スペシャリテと言える「ノスタルジ」などを食べ終えた後、名残惜しむように黄金色のケーキトレーに付いたクリームをナイフで拭い食べる行為により現れる模様=枯山水の砂紋ようになるのが好きだ。ちなみにBLONDIR(ブロンディール)は『〜を金色にする』の意味なので残ったクリームを拭うことでBLONDIRのカラーが現ると思うと、深い余韻が愉しめる。
※焼成によりタルトやパイ生地、ムラングやリンゴなどが黄金色に色付くことがフランス菓子の魅了のひとつであり、ブロンディールの店名の由来。

⑤味覚

そして最後は味覚。
当たり前のこと言うと、ケーキは生ものだから新鮮なうちに食べるに尽きる。

テイクアウトとイートインでは何がどう変わるのか?
持ち帰る際につきまとうのが温度管理や揺れ崩れなどのリスク、繊細なガトーたちを無事に自宅へと輸送出来るのかと言うミッションに迫られる。ラッシュ時の電車や駅などは恐怖でしかない。思っている以上に繊細なのだ。
ショーケースからガトーを選び、新鮮なうちにその場で頂くのがイートイン。
私はこれを産地直送と呼んでいる。漁業が盛んな海辺であれば獲れたての魚介類だし、山間のならば獲れたての山菜だし、高原であればソフトクリームだし、高原野菜かも知れない。
これをパティスリーに置き換えれば、工房が産地でショーケースが直売所、イートインが直売所併設のカフェである。
直売所併設の一番のメリットは鮮度が最高なこと。そして生産者の声を直接聞いたり、逆に「おいしかった」の声をその場で返せること。このように現地の空気に包まれて食べることは、そこでしか得られない喜びが伴うもの。
もちろん、自宅に持ち帰って食べるのも違う喜びがあるので、使い分けたい。
その場合は是非とも保冷バッグを用意したいところだ。ブロンディールのオリジナル保冷バッグは大人にもぴったりの渋い色みと安定感で500円なので是非お勧めしたい。

ブロンディールにおける第六感とは?

シックスセンス、第六感はここでは「萌える」と言う感覚になる。
本当のところ何を表しているのかと言うと、人対人の温もりである。

つまるところ、人を感じるからこそより一層美味しさを感じるという感覚がある。大量生産ではなく菓子職人の手作業によって生み出される味わい、紡ぎ出されるストーリー。パティスリーに求めているこの感覚は、まさに感じるもの。
目の前に広がる菓子の一つ一つに、シェフの想いを感じ、手に取り、食べる。直接面せずとも、菓子たちを通じ、藤原シェフと対話しているのだ。さらにはシェフを支えるお父さんやマダム、スタッフの皆さんからなるチーム“ブロンディール”から、大切な「甘い何か」を頂いている。
直接的なものではない、しかし確かにそこに存在する感覚こそ、シックスセンス「萌え覚」なのである。

まとめ

ブロンディールのような個人経営のパティスリーという場所は、言わばシェフの拘りがぎっしりと詰まった空間。訪れる者を一瞬で夢のような気持ちに気分を高揚させ、愉しませてくれる。端から端まで思う存分に味わいたい。
そのときにはイートインで身を置いてみると様々な気付きがあるだろう。
拘りの強い藤原シェフならではの五感に訴えるデザイン手法が満載の夢空間で、ぜひ甘美な時間に浸り、酔いしれて欲しい。

また近いうちに還りたい場所、ブロンディール。
そして甘く五感を刺激する場所、Blondir !!


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