兼頭啓悟

91年生まれ。📚本屋さんで働いてました📚

兼頭啓悟

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マガジン

  • TOKYO WORK DESIGN WEEK

    • 15本

    勤労感謝の日前後の7日間に開催される“働き方の祭典”「TOKYO WORK DESIGN WEEK 2019」の各セッションのグラレコや関連するnoteをまとめるマガジン。

  • 病床経過報告

    悪性リンパ腫罹患者の闘病の記録。

  • 読書メモ

    読んで面白かった本をマイペースに紹介します。

  • 本屋探訪記

    様々な本屋を訪ねた記録の集積。

最近の記事

病床経過報告⑩再退院

 病気の発症から約一年。やっと退院が決まった。CARーT細胞移植も無事終わり経過は順調。しかし今回の治療には抗がん剤のような即効性はなく、じりじりと効くのを待たなくてはならないらしい。今後は地元の病院に通院し様子を見ながら薬が効くのを待ち、その上で社会復帰のタイミングを伺うことになる。このCARーT細胞療法(通称:キムリア療法)を受けた患者は国内において稀なケースであるので、これから治療を受けるという人や検討している人の参考になればと思い、治療の体験を記しておく。以下、事実の

    • こちらのオンラインブックフェアにて選書をしました📚3つのキーワードをもとに本を選び、それぞれ600〜700文字程コメントも書いてます。エッセイと本の紹介の中間みたいな感じです。有料noteで恐縮ですが、お読み頂けると嬉しいです。https://note.com/honyashan/n/n55b0b7a65644#jSckj

      • 病床経過報告⑨転がる岩と偶然性

         フランスの小説家であり哲学者であるアルベール・カミュは『シーシュポスの神話』という一風変わったエッセイを残している。神々の怒りを買ったシースシュポスは、山頂に向かって大きな岩を押して運ぶという罰を受ける。幾ら山頂にその岩を運んでもその度に転がり落ちてしまい、また山頂に向かって運んでは転がり落ちてを繰り返さなくてはならない。不条理の哲学とは、まさに北欧の哲学者のラース・スヴェンセンは『働くことの哲学』の中で、シーシュポスの顛末に達成さえることのない意味なき労働、拷問としての労

        • 読書メモ⑤『人体600万年史 科学が明かす進化・健康・疾病』ダニエル・E・リーバーマン

           人体の不条理な作用に付き合ったったりしたので、興味が湧いて読んでみたが、大変興味深く読んだ。著者はハーバード大学の人類進化生物学の教授。「人間の進化と健康と病」というテーマを、猿から枝別れして人類へと進化し、狩猟生活から農耕生活が起こり、果ては現代人のライフスタイルに至るまで、その600万年の人類の歴史を進化生物学の観点から解説しつつ、寿命を飛躍的に伸ばしてきた人類が、なぜ狩猟採取時代においては稀であった生活習慣病に罹りやすくなっているのかを、人類の生物学的な「進化」と文化

        病床経過報告⑩再退院

        • こちらのオンラインブックフェアにて選書をしました📚3つのキーワードをもとに本を選び、それぞれ600〜700文字程コメントも書いてます。エッセイと本の紹介の中間みたいな感じです。有料noteで恐縮ですが、お読み頂けると嬉しいです。https://note.com/honyashan/n/n55b0b7a65644#jSckj

        • 病床経過報告⑨転がる岩と偶然性

        • 読書メモ⑤『人体600万年史 科学が明かす進化・健康・疾病』ダニエル・E・リーバーマン

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          6本
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          6本

        記事

          読書メモ④『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』大前栗生

           92年生まれの著者で自分と同世代だないうことで親近感がありつつ、この本で読書会の提案があったので読んでみたが、とても良かった。全4章の短編で構成される本書だが、なんと言ってもやはり表題作の「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」がとても印象深くて、鮮烈に心に残る。  舞台は京都の大学で、ぬいぐるみとしゃべる「ぬいぐるみサークル」に所属している男子大学生の七森が主人公。サークルでは部室でそれぞれが耳栓をしながら、ぬいぐるみに話しかけたり、文化祭ではぬいぐるみを自作したりしている。

          読書メモ④『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』大前栗生

          読書メモ③『食の実験場アメリカ ファーストフード帝国のゆくえ』鈴木透

           最近は専ら食文化に興味があり、その中でもアメリカ料理について様々な疑問や関心があり、読んでみたがなかなか面白かった。  アメリカ文化の研究者が食を記憶媒体として捉え、アメリカ人の食文化とその成り立ちを紐解きながら、それによってアメリカという国の姿を炙り出した一冊。アメリカ料理と聞くと、ハンバーガーやアメリカンドッグなどファストフードに代表されるような画一的なイメージを抱く人が強多いかもしれないが、実際には多様な食文化が形成されていた、ということがわかる。アメリカはその国の

          読書メモ③『食の実験場アメリカ ファーストフード帝国のゆくえ』鈴木透

          病床経過報告⑧再発とCAR-T細胞療法

           今年の1月に無事入院生活を終えて4月から職場復帰をしようとしていた矢先、病気の再発が発覚した。人生とは何が起こるのか分からないもので、退院してから3ヶ月足らずでまた病院送りになってしまった。お腹に鈍い痛みを感じる日があったので嫌な予感はしていたのだが、癌細胞を検知するPET検査を受けたところ腸や肝臓などに病変が見られた。昨年末に造血幹細胞移植という強めの治療を行って一旦終止符を打ったかと思っていたが、随分としぶとい病気だったようだ。病院の先生によると「今回は相手が悪かった」

          病床経過報告⑧再発とCAR-T細胞療法

          読書メモ② 『郝景芳短篇集』

           かつて哲学者のサルトルは文学の役割についてこう書いた。「文学には楽しみをもたらし、想像力を刺激し、感性を豊かにするだけでなく、読者や広く一般大衆に社会問題への認識を促す手段となるのだ。」と。なるほど、サルトルが言うように文学とは古くより読む者に問いを投げかけてきた。中でもSFというジャンルに関しては、有り得るかもしれない虚構の社会を描くことで、物語を経由することで今の社会の姿、未来の有るべき社会について考えさせられることがある。例えば、ジョージ・オーウェルの『1984年』が

          読書メモ② 『郝景芳短篇集』

          病床経過報告⑦退院

             悪性リンパ腫と診断され、緊急入院してから約半年。やっと退院できる日がやってきた。現状は「治癒」ではなく、あくまで「病状を抑えることができている」状態だそうだ。再発の可能性はあるが、このまま5年間〜10年間再発がなければ「治癒」とみなされる。長期間病気と付き合っていかなければならず、退院できるとはいえ、なんともスッキリはできない。今後は月1回の通院と3ヶ月に一度の画像検査を受けながら経過観察をしていく。社会復帰に関しては、経過を観察しながら担当医と相談して時期を決めていく

          病床経過報告⑦退院

          病床経過報告⑥最後の治療

           7月から始まった私の入院生活もどうやら大詰めを迎えようとしているようだ。当初は抗がん剤の投与3週間1サイクルを6サイクル回して治療の終了とする計画をされていたが、最初の治療時に投与した抗がん剤が全く効かなかったこと、病気の進行が速いことから、通常の治療では治しきれないだろうと、4サイクルの治療を終えたところで計画の変更がなされた。「自家移植」を要する強力な治療を行い、これによって病気に止めを刺しにいくと主治医から説明があった。いつ実行されるかが分からないものの実行の可能性は

          病床経過報告⑥最後の治療

          2019年の働き方本20冊 TOKYO WORK DESIGN WEEKにて

          2019年11月18日から24日まで渋谷ヒカリエにて開催されたTOKYO WORK DESIGN WEEK 2019 にて2019年に出版された本の中から、今年のイチオシ働き方本を選び展示しました。合計20冊選び、それぞれにコメントも書いたので会期終了とともにこちらに転載します。是非ご覧下さい。 サードドア/アレックス・バナヤン/東洋経済新報社何かを始めたいときや、何かを実現したいとき、一つの手段に固執してしまうことはないだろうか。本書は全くのコネクションゼロからビル・ゲイ

          2019年の働き方本20冊 TOKYO WORK DESIGN WEEKにて

          病床経過報告⑤自家移植とどら焼き

           入院してから今日でちょうど3ヶ月。入院生活は相変わらず長く続いている。治療のスケジュールとしては、抗がん剤による治療3週間×残り4サイクル+自家移植の2週間で最短でもあと14週間が必要になる。まだ折返し地点にも達していない。正直なところ入院生活にもちょっと飽きてきたなといったところだったが、最近行われた主治医との面談によると、どうやら「自家移植」という手法が必要らしいことが判明した。  それは正確には「自家増血幹細胞移植」と呼ばれるもので、標準的な治療による治癒の可能性が

          病床経過報告⑤自家移植とどら焼き

          病床経過報告④発疹と発熱と食事

          9月も半ばに差し掛かり、入院してから約2ヶ月が過ぎた。穏やかな日々が暫く続いていたが、入院生活とはなかなか油断ができないもで、体調がいい日が続いたかと思うと、ある日突然体調が急に悪化したりする。健康体の時に比べて抵抗力が弱まっている時は、様々な合併症や病の危険性にさらされている為、もともとの病気だけに集中したいのに、時に思いがけず障害が入ったりする。 まずは発疹が体に現れた。念願の食事が再開された直後目の下が赤く染まったのが第一症状。その後腕、腹、背中や足など、体全体に赤い

          病床経過報告④発疹と発熱と食事

          読書メモ①『ハーモニー』伊藤計劃

          かつてSF作家のウィルアム・ギブスンは「未来はここにある。それはまだ行き渡ってないだけだ」という名言を残した。1984年に書かれた彼の作品『ニューロマンサー』ではサイバースペースに脳ごと没入(ジャックイン)するというアイデアが展開される。現代の現実世界においてはブレイン・マシン・インターフェース(BMI)という技術が発展しており、脳波の刺激によって機械の操作が可能になるとしている。SF作品の想像力が現実に先行し、現代において実装されようとしているのだ。ギブスンはこの発言とこの

          読書メモ①『ハーモニー』伊藤計劃

          韓国 本屋事情調査⑥【THANKS BOOK】2018/11/9

          韓国の独立系書店のの先駆けらしい。店舗は広くはないが雰囲気は良い。オススメのコメントPOPも有。ハングル文字はどうしても読めないので韓国の出版物と分かり合えない気がしたが、良さげな本がちらほらとある。文字が読めないのでなんとも言えないが、読み物としてしっかりとしてそうな雑誌が多く、誌面がカッコいいという理由で都市を取り上げたnau magazine BEILINを購入。トートバッグを買おうとするも、店員さんが売り方が分からなかったらしく断念。THANKSと言って店を出る。

          韓国 本屋事情調査⑥【THANKS BOOK】2018/11/9

          韓国 本屋事情調査⑤【LIBRO】2018/11/9

          馴染み深い顔にこんなところで出会うとは思わなかった。日本ではおなじみのスチールの本棚を見るとなんだかホッとする。総合書店らしく、分類の文字すら読めないが、オールジャンルカバーしているようで、品揃えも良いのだろう。 日本の本屋と違うところとしては、「雑誌」の扱いが結構適当なところだろうか。全てビニール掛けしてあり、興味ありげに見ている人は見当たらない。随所に本を読めるところがあるのだが、若者も分厚い読み物をじっくりと読んでいる。 端っこの方には申し訳程度にカフェ

          韓国 本屋事情調査⑤【LIBRO】2018/11/9