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シンセン、スカンセン

朝いつものようにバスを降りると、名前を忘れてしまったけど、この前お昼休憩で話した女の先生がいたので、声をかけました。それから学校まで一緒に行くことに。今日はスカンセンへ遠足なの、と言っていました。

Mar. 6

今日はルーラが来ていたので、朝のミーティングはしっかりあります。朝聞いていた通り、今日は6歳児のクラスの子たちはスカンセンへ行くとのこと。私がいつも見ている子たちは8歳だから、いつも通り授業です。

私はどうしてもスカンセンへ行きたくなって、また加えて、6歳児の子たちとも関わりたかったので、ルーラに一緒に行けないか聞いてみました。

するとルーラは6歳児を担当する先生と交渉してくれて、私はスカンセンへの遠足に同行することになりました。駄目元でも言ってみてよかった!そのあとルーラは、スカンセンは寒いからってジャケットやズボンだけじゃなく、ニット帽まで貸してくれました。いつも本当にありがたい。

選択することは、他の選択肢を捨てることでもあって、今日はいつもの子たちと一緒に過ごす時間は減ります。きっと8歳児のクラスでいつものように子どもたちと過ごしていても新しい発見はあって、それはそれで楽しかったんだろうけど、もう大体のことを把握した今、スカンセンへの遠足はすごく新鮮でワクワクしました。

ミーティングの後は、6歳児の教室に入りました。先生と子どもたちは、出席や今日の動きを確認したり、朝の体操をしたりしていました。私も少し自己紹介をして、このクラスの仲間に入れてもらいました。

先生たちはすごく親切で、英語の話せる子を紹介してくれました。移動は英語が達者な二ミーシャとすることになり、二ミーシャはずっと私の手を握ってくれていました。

子どもたちはペアになって手をつないで歩きます。手をつなぐとき、男の子も女の子も関係ありません。それにしても、6歳の子たちはほんとに小さくて、本当に無邪気でかわいい。

身体が小さいので、2人分の席を3人で乗ることができます。先生たちは子どもたちがなるべく座ることができるように必死でした。

スカンセンはユールゴーデン島にあるので、そこまでは駅から港まで歩いて、船で移動します。魔女の宅急便のモデルの街の1つである、ガムラスタンはどこから見ても綺麗です。

Fotografiskaへ行ったときに写真を撮った工事現場の横を通ったのですが、しきりとなっている壁にガラス窓のついた穴があって覗くことができるようになっていました。子どもたちはその穴から見える景色に興味津々で、工事現場1つにしてもこんなアイデアがあるんだと気付きました。

船乗り場は駅と同じように改札があって、電車やバスを利用するときと同じカードを使って利用することができます。ストックホルムは群島で形成されているので、船も主要交通機関の1つとなっています。

少しすると船が到着しました。SLという交通会社の旗と、スウェーデンの国旗が掲げられていました。海には少し氷が浮かんでいました。

子どもたちは船に乗ると、面白いぐらいに綺麗に並んで外を眺めていました。みんな防寒としてかわいいニット帽をかぶっています。

船の中にはつり革もあって、まるで電車のようでした。出航する際、特別大きな合図もなかったので、出航したことに気が付かなかったくらい静かに船は進んでいきました。

みとちゃんは以前移動のためにボートに乗ったと言っていたのですが、船でも十分テンションはあがります。海上には小さなものから大きなものまでさまざまな船が浮かんでいました。

ここストックホルムは沈没船ヴァーサ号でも有名だとある先生が教えてくれました。後で調べてみると、このヴァーサ号は17世紀の船舶のうち、唯一世界で現存している船のようです。その博物館にも行ってみたいなと思いました。

目的の港に到着すると、先日Fotografiskaから見えていた遊園地が目の前にありました。先生によると、開園は観光シーズンの5月から9月のみだそうです。世界一高い空中ブランコで有名なグローナルンド遊園地ですが、他のアトラクションもなかなかスリル満点のようにみえます。

歩いていると、レンタル自転車が設置されていました。10分間は無料ってことは、10分ずつ乗って移動していけば無料で島を徘徊できるってこと?とずる賢く考えてしまった自分がいました。

そしてSkansenへ到着しました!ここは、世界で初めての野外博物館で、昔は動物園だったとか。

スカンセンは、スウェーデンの伝統的な建物を南北いろいろなところから移動させ、再度組み立てて構成されているそうです。ただ再現したのではなく、もともと実際に使われていたものを組み立てなおしているところが魅力。

スウェーデンの子どもたちは、学校行事や家族と一緒にここへ何度も訪れるそうです。そう説明してくれる先生たちは、何かと私にスウェーデンのことを教えてくれます。

子どもたちが体を動かして遊べる公園もあって、来ていた他の学校の子どもたちも一緒に遊んでいました。この公園はリスをモチーフにしていました。ストックホルムの子どもたちはみんな蛍光の黄色のジャケットを着ているので、どの子がどの学校の子どもなのか、すぐに判断することは難しかったです。

このステージでは、夏になると有名なアーティストがライブをし、名のあるテレビ局が来て放映されるみたいで、とても盛り上がるそうです。スウェーデンの人はシャイで落ち着いた方が多い印象なので、熱狂している彼らを見てみたいなと思いました。

お昼はレストランに行きました。他の学校の子たちも一緒です。

パンケーキのバイキングになっていて、先生たちがパンケーキを子どもたちに配っていました。私も手伝おうかと思ったのですが、必要ないと言われて子どもたちと話すことにしました。今思えば、何も言わず手伝うべきだったなと後悔しています。

スウェーデンのパンケーキは日本のそれと比べてクレープのように薄いです。以前マイケルがパンケーキを焼いて分けてくれたときがあったけど、その時も薄かったです。先生にそれを伝えると、フレンチパンケーキなんだと言っていました。どういうこと?

お昼の時、同じテーブルだったルールという先生は、パンケーキはあまり好きじゃなくて、と自分で作って持ってきたご飯を食べていました。

ルールは、以前まではプレスクールで1~3歳くらいの子を預かりみていたそうで、ここ数年6歳児の子どもを見るようになったと言っていました。常に落ち着いていて、丁寧に話しかけてくれます。

お昼ご飯を食べたあとは、どこかへ移動することになりました。途中の道にスケートリンクがあって、スケート靴も貸し出せるようになっていました。

いろんな場所にいろんなものが置いてあって、ただでさえ広いのに、じっくり見てまわるのは1日じゃ足りないなと思いました。ダーラナホースも木の横から見えました。

到着したのはサーカス会場のような場所でした。ご飯を食べ終えた子どもたちはみんなこの会場へと入っていきます。

それから、リサイクルマンらしき女の人のミュージカルが始まりました。そのミュージカルは子どもたちに問いかけながら対話型で進んでいきました。

子どもたちは主人公の彼女にいつでも話しかけることができます。彼女も無視することなく子どもたちの元気な反応に全力で応えていきます。

彼女は何者かというと、たぶんリサイクルマン。(笑)背中や帽子にリサイクルのマークがついています。あとで先生に聞くと、リサイクルを推奨するキャラクターのようです。

一気に楽しい空間をつくる彼女を見ながら、自分がワークショップや授業をするときも、このくらい巻き込んで楽しくやっていきたいなと思いました。

彼女のショーが終わると、外へ出て各場所で飼育されている動物たちのところへ移動しました。移動中は、いろんな形の家々を見ることができます。

私が一緒にいたグループは、最初にアヒルを見ました。子どもたちも興味津々。

アヒルは自由に外を歩き回ることが許されているのか、小屋から出てもスタッフは何も気にしていませんでした。

そのあとは、卵の黄身と白身について目で見て学び、

小麦について学んで、その小麦をすり潰す体験をしたり、

豚にニンジンをあげたり、

牛がニンジンを食べるところを見たり、

にわとりを目の前に、にわとりの歯の見たり、各地で説明と一緒に様々な体験ができるようになっていました。

その場所ごとに、グループを担当するスタッフのフックには、カードが蓄積されていきます。

どこへ行っても子どもたちの質問は止まらないし、Skansenのスタッフの方たちも対話式で説明を進めていきます。日本だと、こうしたフィールドワークで質問が出ることのほうが少ないし、説明してくださる人も、質問や意見が返ってこないのを恐れて一方通行の説明をしがちだな、と改めて思います。

今回はスタッフの方が丁寧に教えてくれていたけど、もちろん表示板もかわいいイラスト付きで置いてあって、スウェーデン語と英語で書かれてありました。

私が一緒にいたグループの担当スタッフは、ここで働いて3年目だそうです。どうしてここで働こうと思ったのかを聞いてみると、職場で動物たちと一緒に過ごせる点がこの仕事の魅力だと言っていました。

子どもたちの中には、鳴き声を真似して会話しようとする子、動物を怖がって泣いてしまう子、いろんな子がいました。こうして生きている動物を目の前にすると、ヴィーガンの方の気持ちがすごく分かる気がします。小さい頃に生き物と関わる経験ってすごく大切だなと思いました。

ここには、昔は象などの大きな動物まで、様々な種類の生き物がいたみたいですが、土地が狭く動物たちにとって最適な環境ではないと判断され、現在の規模になっているそうです。そう教えてくれた先生は、もとの生息地で生きることは動物の「権利」だと話していました。

そう教えてくれた先生は本当に親切で、ガイドさんのように、歩いているときは何でも丁寧に説明してくれました。子どものころからスカンセンは何度も来ているそうで、説明したくなるほど知識が豊富なのだとか。

昔は25年ほど世界中を飛び回りながら機械の仕事をしていたそうで、Panasonicと協働したこともあったみたいでした。でも、8年前から小学校のFritidsの時間を見始めたとき、世界を飛び回って子どもたちに会えない時間がとても寂しくて、自分が小学校での生活に幸せを見出していることに気づいてからはずっとここに勤務しているそうです。

人生をいつでもやり直せるシステムの整った国にいるからこそ、先生たちのバックグラウンドは多岐にわたっていて、聞いていて興味深いものが本当に多いです。遠足でも、ちゃんとおやつが用意されていました。

帰りのバスで私は爆睡してしまっていて、その様子が写真に撮られていたそうです。その写真が拡散されたみたいで、これ以降、大丈夫?疲れてない?と聞かれることが増えました。(笑)あんまり嬉しい状況ではないな。

学校に戻ると、いつもみている8歳児のクラスの子たちがかけよってくれました。2人そろって前髪を切ったらしく、ほんっとうにかわいい。移動で少し疲れていたけど、この子たちのおかげで疲れも吹っ飛びました。

家に帰ると、またマイケルの奥さんがケーキをつくっていました。ブルーベリーのケーキで、これも分けてくれたのですが、美味しくて一瞬で食べてしまいました。

マイケルはこのケーキに対して、だから人は結婚するんだよ、と誇らしげに語っていました。2人はいつも一緒にいるようにみえます。でも実は、マイケルは55歳でその奥さんは20代のフィリピン人。年齢なんか関係ないよなあ。マイケルがその日着ていた服は、フィリピンの仕立て屋でつくったものみたいです。

***

ちょっとした勇気から急遽行けることになったスカンセン。最近、インターンシップのマンネリ化に少し悩みつつあったところだったので、本当に新鮮で楽しい1日になりました。

今日するはずのワークショップが明日にずれたので、こうしてスカンセンに行かせてもらえたぶん、良い時間にできるようがんばろう。


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