「R-SIC 2019」セッション内容のメモ

様々な社会課題に取り組む先進的なプレイヤーが一堂に会する大規模カンファレンス「R-SIC 2019」に、2日間がっつり参加してきました!

参加した9つのセッションを通じて感じたのは、"繋ぐ"役割の重要さ。
一人あたりの技術や関心には限度がある中で、課題解決の意志や技術を持った人と課題現場を繋いだり、それぞれ異なる技術を持つ人が繋がるチームを作って課題に取り組んだり、といった"繋ぐ"役割が様々な課題解決の肝となるようです。

セッション中に書いたメモを共有します。
以下の内容はあくまでも私の解釈を挟んだ覚え書きであり、登壇者の方々が実際に話された内容とは異なる場合があることをご承知おきください。
より詳しい内容が気になる方は、リディラバジャーナルで公式のまとめ記事が順次公開されていく予定とのことなので、そちらをご覧いただければ幸いです。

社会課題としての『孤独』解決のカギは意外なところに…?

資生堂、ココネットが提供する高齢者の孤独問題対策事業の紹介から、行政の役割や巻き込み方についての話へ。

・ 孤独と要介護認定率の相関は高い。
・ 日本人の3割が孤独を感じており、国際的にも高い水準。英国では孤独担当大臣も。
・ 孤独を避ける主要素は、外に出る目的、外に出る能力、外に出られるという自己効力感。資生堂は化粧を孤独解消のツールとして提案。
・ ココネットはネットスーパー型、移動販売型など複数のパターンを提供。注文を受けた担当者から配達担当者に会話の内容を共有。
・ 行政との協働は、取り組みやすい立場の人を巻き込んだり既にある取り組みを活かしたりすることで実現しやすい。行政のリソースと企業のリソースを紐付ける。

当事者が語る『万引き依存症』の実態

窃盗依存当事者の方の経験談と精神保健福祉士、関連書籍編集者の方の解説。

・ 逮捕されたことが堪えていまは盗っていないものの、過食嘔吐が"生きる杖"になっている。
・ 窃盗依存と過食嘔吐と溜め込み障害の関連は強い。
・ 私はこれ(過食嘔吐)をするために一日頑張る、という感覚。
・ 依存症と自己報酬、今だからできる、という思考パターンの関連。
・ 我慢でやめることは難しく、気を楽にやめる方法を考えた方がいい。周りは反省の色を求めがちだが、逆効果。その場を切り抜けるスキルにしかならない。
・ addictionの反対はconnection、孤立しないことが大事。マジョリティが当事者性への意識をもち、カミングアウトしやすい社会が、依存症から回復しやすい社会。

借りられない、暮らせない――。危機に瀕する『高齢者の住まい』

高齢者が借家を借りられない問題について、仲介業者の抱える困難や住居と社会構造変化の関わりを語る話。

・ 戦中から続く借地借家法の縛りで、入居者が亡くなった後の貸し手の負担が大きい。孤独死も物件価値に対するリスク。
・ 仲介業者がリスク回避のために高齢者を断る例も多い。
・ 貧困と絡む問題も大変だが、貧困でなくても借りられない場合もある。高齢で借りる方は家賃を滞納しない。
・ 現行の年金は持ち家が前提の金額。
・ 持ち家率が下がり、寿命が伸びたことで生じた問題。死ぬまでを考えると、借家よりも持ち家では。

ハイスキル人材を惹きつける自治体の組織戦略

地域に新しい取り組みを生める人を外から呼び、成功させるための要点の話。

・ 地域おこし協力隊の制度に、自己実現を繋げる。先駆者が後進を支援する仕組みも生まれる。
・ 元気な企業はあるが、地域に目を向けてはくれない。お金は出してくれても人は出してくれない。市役所側もレベルを上げようと、兼業限定で募集したら応募多数。
・ 始めは話が噛み合わなかったが、市職員は徐々にハイスキル人材に慣れていった。地元の民間企業はより早かった。乗り気な人から。
・ 西粟倉村では人材をコーディネートするベンチャー企業が外にいる。そこでビジョンを擦り合わせてから入る。
・ アドバイスは直接するが、意思決定は副市長を介して関与する。続けていくと職員から頼られるようにもなる。
・ 公平性を過度に心配する人もおり、納得してもらう努力もいる。
・ 受け入れる側の態勢、擦り合わせてから受け入れることと、受け入れてからサポートし続けること。環境とやりがいが揃えばうまく続けられる。仕事以外の付き合いも大事。
・ 一次産業の担い手不足は、事業として成り立つかわかりにくいから。
・ わかっていてNoという場合と、わからなくてNoという場合がある。後者は変な人と仲良くすることで乗り越える。焦らず機会を待ち、機会を逃さないことも重要。

ニュースでは教えてくれない『引きこもり』の真因

3人の引きこもり当事者経験者の方と支援活動を行う産業医の方の話。

・ 当事者の声抜きで支援が考えられていた。支援に対して尊厳的な拒否感があった。
・ 「引きこもり」という言葉がなかった頃は自分の状態を伝えることもできなかった。
・ 就職が内定して、無味乾燥な人生になると感じて引きこもりが始まった。
・ 学校や親への過剰適応が破綻して引きこもりが始まった。本を読んだり人から聞いたりして引きこもりであると気づいた。
・ 雨戸を閉めたり、夜しか動けなかったり。外を見ると、世界から置いていかれると感じる。夜なら存在してもいいかと感じる。
・ 困りたくて困っている人はいない。他人と関わりたい、働きたいと思うから苦しむ。
・ 引きこもり当事者はいろいろな葛藤や矛盾を抱えている。犯罪率は低いが犯罪者への共感も感じる。
・ 支援は上下関係を生みがちだが、対等な立場で支えてほしい。ほしい支援の形がわからない人も多い。わかりやすいのはお金。本人がわかっていないものを翻訳することも。
・ 支援者は解決しようとするのではなく、環境を準備する。就労支援の手前に安心できる場が必要。

移住施策のその先へ―『関係人口』を生む戦略はどうあるべきか―

関係人口形成施策に取り組む行政職員の方々の話。

・ 人口ビジョンを描く中で、定住人口の大幅減が避けられない状況で市に貢献してもらえる人の増やし方を考え始めた。
・ 「関係人口」の言葉が生まれたことで行政機関内部の理解を得やすくなった。
・ 飯田市は地方自治が強いことで、社会学系の研究室が訪れていた。そのネットワーキングが前例に。
・ 交流人口は消費者的だが、関係人口は生産者的。地域に価値を付与してくれる。
・ 行政と市民の境界が曖昧なことで取り組みやすい土壌になる。
・ 理解を得るためにはまず事例を作る。
・ 外から来る人でも地域と馴染める場を紹介する。

読者と語る、『リディラバジャーナル』と社会問題の伝え方

リディラバジャーナルの理念や背景と、読者の活用例の話。

・ 短いアテンションで影響は与えられないので、旅行から始めた。角度による見方ではなく構造を見せる。
・ 広告モデルでは煽るタイトルになりがち。
・ 構造的に調べることで、論点やデータの抜け漏れがわかることもある。
・ 社会問題はネットワーク化している。関心のフックがたくさんある状態。
・ 社会に貢献する起業がかっこいいと思われるようになった。
・ 議会の質問にも使える。政策立案の参考になる。
・ 課題の地域性にもコミットしたい。
・ 変化の速い課題と遅い課題がある。

2020 TOKYO からタバコが消える日

受動喫煙防止条例の制定に奔走した政治家の方々の話。

・ 受動喫煙防止の話は厚労省だけでなく財務省も強く絡む。
・ 受動喫煙の発ガン性が疫学的に報告されたのは1980年頃の日本での研究が最初。医学的に決着がついたと言われるのは2003年頃。オリンピックが決まったことで強く進むようになった。女性の社会進出も要因のひとつ。
・ 府知事が喫煙者である大阪も、万博開催が決まったことで条例を検討。
・ JT株の三分の一は財務省が持つ。生産から流通まで管理。斜陽産業ほど政治にすがる。
・ 依存性のある物は税源としておいしい。
・ 東京都では、働く人を守るという観点の訴えが利いた。
・ 境界線の引き方でも揉める。
・ 禁煙店舗を掲載するグルメサイトが出てきた。全面禁煙のバーも。
・ 日本は欧州と比べて予防原則の考えが弱い。
・ 受動喫煙防止については他者危害性の観点が重要。
・ 徹底的な根回しをしつつ、10ではなくまずは5を目指す。

変わりゆく貨幣、コミュニティ、パートナーシップetc… 未来予測『ポスト資本主義』の世界

社会の前提が技術の発達で揺らぐ中で、新たな社会作りを考える話。

・ 社会を変えることに諦めを感じつつ、社会を作れるのではないかと考えた。
・ どこから人間で、人権や市民権が与えられるのか。テクノロジーや往来の発展で社会の前提が揺らいでいる。
・ 資本主義の考え方は残っていく中で、他の考え方の選択肢も用意されるべきではないか。多重層な世界。
・ 貨幣はインセンティブ設計に強い。社会課題解決のインセンティブをよりうまく設計したい。一例は排出権取引。計測可能性が肝。資本主義市場と行政で貨幣を分けるのもありでは。
・ 人は問題を社会で解決しようとする生物。
・ 異なる問題は本来比較できないのに、優先順位がつけられる。尺度は貨幣よりも時間や関心の方がよいのでは。
・ 無気力、主体性の欠如もこれからの課題。
・ 安心できる緩和と、外圧に抵抗できる緊張の双方が要るのでは。
・ 現状、話し合って社会を動かすことに人がとても慣れていない。

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杉山啓 (Kei Sugiyama)

修士(工学)。国立科学博物館認定サイエンスコミュニケータ。IMASSA認定マーケティング実務士。日本酒検定3級。 対話と知の価値の発信に取り組んでいます。ほか、マーケティングのコンサルテーションや解説動画フォーマットの研究開発を経験してきました。
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