パルテノン多摩『演劇人の文化祭』を企画した理由と、文化祭の詳細

 東京の小劇場で活躍する若い劇作家や演出家に話を聞くことの多い私は、2000年代に入って数年経った頃から、つくり手の変化を感じるようになりました。

 ざっくりした表現になりますが、それまでの主流が「演劇しかない」人だったのに対して、「演劇を選んだ」人が増えてきたのです。役者を目指して劇団に入り、いつの間にか脚本を書き演出もするようになったが、演劇以外のことは目に入らないまま走って来た、というのが長らく演劇人のプロフィールの典型でした。でも新しい人たちは、絵やイラストや小説や楽器など、複数の創作の楽しさを知り、それらを手放さずにいて、その上で演劇を選んでいました。演劇がなかったらどうなっていたかわからないという人もとても魅力的ですが、選択を経た豊かさは、演劇が本来持っている多面性に通じ、たとえば演劇を好きではない人にも届く柔らかさを内包しているように感じました。

 そして実際、ゼロ年代やテン年代と呼ばれる人たちの中には、劇場や上演や戯曲や演出の概念を柔らかな手つきでもみほぐし、自分たちが見つけた、あるいは自分たちにフィットするやり方で観客と出会っている人が多数います。

 この現象を可視化できたらと考えていたところ、パルテノン多摩さんが「おもしろい」と乗ってくださり、実現したのがこの企画です。誤解されると困るのは、演劇を本業にしている人の趣味や息抜きや意外な特技を紹介したいのではない、ということです(芸能人の「二科展入選!」とは違うのです)。今回声をかけさせてもらったのは、絵やイラストや音楽や演劇などが全部同じ水道管を流れていて、1番大きな蛇口が演劇だと私が感じた皆さんです。昨今、プロのミュージシャンや漫画家やファッションデザイナーなど他ジャンルの才能と若い演劇人のコラボが成功しているのは、やはりその人の心が動くこと、手や身体を動かしたくなるものが同じ源泉から湧いているからではないかとも思ったりします。この『演劇人の文化祭』がそうした、これまでと違う角度からの演劇人と演劇の発見につながれば、企画した人間としては幸せです。

 さて、この文化祭は下記の3つの柱によって成り立っています。

1) 演劇人の文化祭 …… 絵画、イラスト、版画、写真などの展示

期間:3月3日(金)〜3月12日(日)

時間:11〜19時 *最終日は18時まで

会場:パルテノン多摩市民ギャラリー

入場料:無料

出展者:神里雄大(岡崎藝術座)、木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎)、益山寛司(劇団子供鉅人)、益山貴司(劇団子供鉅人)、山本健介(ジエン社)、河村竜也(青年団、青年団リンクホエイ)、タニノクロウ(庭劇団ペニノ)、岩井秀人(ハイバイ)、ノゾエ征爾(はえぎわ)、鈴真紀史(はえぎわ)、熊川ふみ(範宙遊泳)、糸井幸之介(FUKAI PRODUCE羽衣)、澤田慎司(FUKAI PRODUCE羽衣)、藤田貴大(マームとジプシー)、召田実子(マームとジプシー)、蓬莱竜太(モダンスイマーズ)、小野寺ずる(劇団□字ック) *劇団名五十音順

2) 文化祭Special LIVE! ……4組の演劇系バンドによる1日限定フェス

日時:3月11日(土)14時スタート(19時前後に終了予定)

会場:パルテノン多摩小ホール

チケット代:3,000円(全席指定)

参加団体:

☆ロロ+EMC ユルさと切なさと優しさが人気のラップユニットEMC(Enjoy Music Club)とロロが、コラボ&ライブ! 三浦直之がボーカルで参加した、すべてのポップカルチャーに捧げた大名曲『100%未来』も披露!

☆大谷能生+中野成樹→チェーホフ『かもめ』をラップ化したユニットが、まさかの再結成&6年振りの実演! 中野成樹が誤意訳・演出した『長短調(眺めまたは短め)』(10年)のサントラ「みずうみのかもめ(ふたたび)」がライブで蘇る!

☆山田佳奈(□字ック)✕演劇と人→注目の劇団□字ックの作・演出家にして元レコード会社勤務、今もロックフェスを開催する筋金入りのロック好きの山田佳奈が、そのすべてのメンツと実力を賭けて参加! バンド名は当然、アレへのリスペクト!

☆FUKAI PRODUCE 羽衣→昨年のパル多摩水上ステージでの『愛いっぱいの愛を』でたくさんの心をつかんで揺さぶった羽衣が、妙—ジカル劇団としての本領を発揮! これまでの名曲を集めたガラ・コンサート的ライブで再びパル多摩に!

3)徳永京子の現代演劇講座 …… 「エンゲキってそんなにおもしろい?」と疑問に思う方も「もっと深く知りたい」という方も楽しめます。第一線で活躍するゲストを迎え、演劇を外から眺め、内から考える連続講座、1回でも受講可能。

日時:

第1回2月18日(土)15〜17時 *熊井玲(ステージナタリー編集長、前・シアターガイド編集長)、テーマ:「演劇情報、ウェブと紙の現在と未来」印刷媒体を信頼する世代と、ネットに頼り切る世代が混在する現在、演劇を巡る発信と受信も揺れています。たくさんの人に届けるには? 良質な情報とは? 前職は雑誌、今はウェブ媒体で活躍する熊井さんと、現状と課題を考えます。

第2回2月25日(土)15〜17時 ゲスト:岩松了(劇作家、演出家、俳優、映画監督)、テーマ:「刺さって取れないせりふはどう書かれるのか」岩松さんがWSで行っている「良いせりふの見つけ方」や、観客の脳裏から離れないせりふやヒロインの描き方をお聞きします。

第3回3月4日(土)15〜17時 *藤原ちから(批評家、BriicolaQ)、テーマ:「演劇最強論-ingマンスリープレイバックLIVE!」藤原さんと私で、2月に観た舞台のプレイバックをライブで! きっと薬も毒も出るでしょう。ここで語られたことは他言無用で!

会場:パルテノン多摩4階学習室

参加費用:各回1,200円(3回通しは3,000円) ※当日精算(3回通しは初回に精算)


以上、各イベントのチケット発売日や購入方法、申込開始日や申込方法の詳細はパルテノン多摩のホームページ

http://www.parthenon.or.jp/act/

でご覧ください。また、最新情報は「演劇人の文化祭@パルテノン多摩」の公式ツイッター

@geki_geisai

で随時更新しますので、チェックしていただけるとありがたいです。 

 展覧会会場のギャラリースペースでは関係劇団の物販コーナーも設置されますので、そちらもご注目ください。

 このイベントをきっかけに興味を持ち、未見だった演劇人の舞台に足を運んでくださる方がいたら、それこそが本望です。

P.S. このイベントのチラシのイラストを、東京の演劇人のモチベーションを上げるエンジン、若き画伯・山田寛人くんが手がけてくれました! ツイッターのアイコンにもなっていますが、チラシを見かけたら、どうぞ隅々までお楽しみください。演劇好きはニヤニヤが止まらない素敵な絵です。そして寛人くんは立体のオブジェもつくってくれて、こちらはチラシ裏に写真が掲載されていますが、ギャラリーにも展示されます。


     パルテノン多摩「演劇人の文化祭」プロデューサー  徳永京子

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