アンダードッグ

昨日(9月3日)行われたNBAの試合で、ドラフト外から這い上がったルーゲンツ・ドートが攻守にわたる大活躍を見せ、NBA屈指のスタージェームズ・ハーデンを追い詰めた。

ハーデンとのぶつかり合いで世界中に名を売ったドートだが、彼が所属するオクラホマシティ・サンダーのファンは今シーズンかなり早い段階から彼の虜になり、活躍を喜んでいた。

こちらは現地ファンによるメディアの、所属選手のランク付け記事である。
この中でドートは上から3番目の評価を得た。若手選手の中ではトップである。

"underdog"という言葉がある。日本語では”負け犬”や”かませ犬”に当たる言葉で、当然いいイメージではない。
しかしこの言葉が使われるのは、決まって”泥水をすすりながら歩んできた道が評価された時”なのだ。その点では”雑草魂”とでも訳した方が正しいのかもしれない。

アンダードッグと評される、前評判の高くない選手たちは決まって”ハードワーク”を武器としている。
過去にも常勝軍団サンアントニオ・スパーズの中心選手として活躍したブルース・ボウエン、シャキール・オニールやコービー・ブライアント擁するロサンゼルス・レイカーズを破り優勝したデトロイト・ピストンズの守備の要であったベン・ウォーレスなど、アンダードッグとしてNBAで輝かしい結果を残した選手は数多くいた。
シカゴ・ブルズでマイケル・ジョーダンと共に3連覇を果たし、7年連続リバウンド王という前人未到の大記録を打ち立てたデニス・ロッドマンも、ドラフト2巡目57位(NBAは30チームがそれぞれシーズンの順位に応じた1巡目指名権と2巡目指名権の二つを持つ)という下から4番目の評価でNBA入りを果たしたアンダードッグである。

彼らは皆ボール一つにかける執念が凄まじく、特にロッドマンは”狂気のリバウンド王”とまで言われた。

現役時代のプレイを見れば狂気と呼ばれるのも納得であるが。

NBAという世界一バスケが上手い選手が集まるリーグの中で、シュート力をどれだけ磨いたところで元々シュートの上手い選手には及ばない。1日に与えられる時間は皆平等で、彼らだってシュートの練習をしているのだから。
そんな選手たちとの間を埋め、低い評価を覆すために努力を重ねた結果行き着いたスタイルが”ハードワーク”なのだろう。
事実、チームの柱になり得るほどのスター選手は、シュートを外した後「今ファウルがあっただろ!」と審判に詰め寄り、ディフェンスに戻るのが大きく遅れたりするシーンがよく見られる。
しかしアンダードックと呼ばれる選手たちは、シュートを外したらすぐに自陣に戻る。そして多少荒っぽいプレーを受けたところでビクともせず(もちろんロッドマンのようにやり返して乱闘になる選手もいるが)、ボールがこぼれようものなら怪我をも恐れず飛び込んでいく。

日本で甲子園が好まれるように、アンダードックのような泥臭い選手は必ずプレー相応の評価を受ける。ドートが今プレイオフで名を上げたのがその象徴だろう。

逆境から這い上がり、華麗なプレイではなくとも世界中の人々に感動を与える。
私もいつかそういった人間になりたいものだ。

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