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vol.45 アンデルセン「人魚姫」を読んで

初めて読んだ。とても難しい内容だと思った。児童文学という窮屈な枠に置かれていた。しかし、大人があれこれと思い巡らす、文学だと思った。

人間になる代わりに声を奪われ、王子への恋心を実らせることもなく、泡となって消えてしまう人魚姫の話だった。アンデルセンは何を伝えたかったのか。単なる夢見る少女の恋物語ではないと思う。永遠の魂と愛の関係について書いているのか。熱心なカトリック教徒として、隣人愛について解いているのか。なにしろ、ディズニーの「リトル・マーメイド」の原作なのだ。きっと素晴らしい作品に違いない。

<あらすじ>
人魚の王様は、海底で暮らし6人の娘がいた。末の娘の人魚姫が、15歳の誕生日に海の上に行き、そこで出会った美しい人間の王子様に恋心を抱く。その夜嵐で王子様の船は難破したが、人魚姫が王子様を助け出す。
人魚姫は美しい王子様のことが忘れられず、人間になって彼と結婚したいと願う。どうすれば王子様と一緒になれるか海の魔女の教えを受ける。そして、人魚姫の美しい声と引き換えに、人間の足になれる薬をもらう。その時、海の魔女から、「もし王子に愛をもらうことができなければ、姫は泡となって海に消えてしまう」と警告を受ける。
人魚姫は声が出せなくなったが、王子と一緒に宮殿っで暮らせるようになった。しかし王子は隣国の姫君と結ばれる。悲嘆にくれる人魚姫の前に現れた姫の姉たちがは、魔女にもらった短剣で、王子を刺すと人魚に戻れることを教える。しかし人魚姫は、彼の幸福を崩すことができすに自ら死を選ぶ。王子の愛を得られず泡になってしまった人魚姫だっただが、風の精霊に生まれ変わる。(あらすじおわり)

ものすごく複雑な作品だと思った。アンデルセンなので、どうしてもキリスト教の教えを調べたくなる。

キリスト教における「魂」とは、天国に登ることで「永遠の命を得る」と解釈されている。vol.20『マッチ売りの少女』もそうだった。人魚姫も、泡になって天に昇っていく。自分の命よりも王子の幸せを願って、お姫様を妬むこともなく、二人を祝福しながら永遠の風になる。そして、子どもたちの親を喜ばせながら、風として300年生き続ける。風の精霊ってなんだろう。どうして子どもたちの親を喜ばせるのか。物語の結末がよくわからなかった。調べて見てもしっくりこなかった。

アンデルセンはいつも、愛や死、永遠、人生のはかなさといったナイーブなテーマを描いている。これを子どもに語り聞かせることは大切だと思う。また、大人と一緒に考えるテーマだと思う。しかし、アンデルセン、やっぱり手強い。(おわり)

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