日本が科学的エビデンスを無視してることがよく分かる『名古屋スタディ』のはなし

今日で、厚労省がHPVワクチンの積極的勧奨を差し控えてから丸6年

HPVワクチンの話で必ずでてくる『名古屋スタディ』鈴木先生の貴重なインタビュー『子宮頸がんと副反応、埋もれた調査「名古屋スタディ」監修教授に聞く』を読んで改めて、やっぱり名古屋スタディはもっと広く知られるべきだと思い、

産婦人科医にとっては言わずもがなの『名古屋スタディ』なんですが、
どうすごい研究で、どういう意義があるのか、
多くの人に知ってもらいたいのでまとめておきます。

『名古屋スタディ』の結果がでた時、論文になった時、

“これが大きく報じられれば風向きがかわるに違いない!”

とめっちゃ期待しました。

ところが、インタビューの中で、
『この論文に関する新聞の取材や報道は私の知る限り、ゼロです。』
と鈴木先生が語っている通り、

『名古屋スタディ』はいわゆる一般メディアでは全く報道されませんでした。

報道されなかったことがすごい衝撃で、
こんなに科学的に社会的にインパクトのある研究結果がなぜ報じられないのか、と新聞記者さんに聞いてみると、

『科学的なデータだけではニュース性はないんです。患者さんとか、実際のヒトがでてこないと記事になりにくいんです。』

という説明を受けて愕然としました。


厚労省の体制を覆しうる研究結果なのに、そんな理由で報じないんですね。
社会的意義があるとか、そういうモチベーションはないんですかね。
報じ方一つでなんとでもニュース性だせるでしょうに。
全く事件でもなんでもないことを、まるで医療過誤のように報じられることは多々あるのに。。

と、愚痴を言ってもはじまらないので、
『名古屋スタディ』の話に戻ります。

『名古屋スタディ』とは

『名古屋スタディ』というのは『HPVワクチンについての大規模疫学調査』なのですが、
これが行われた背景は、

2013年4月 HPVワクチンは小6~高1の女子を対象に定期予防接種化
 その頃から、副反応の訴えが多数でてきて、
2013年6月 厚労省は『HPVワクチンの積極的勧奨を一時差し控える』と公表

で、HPVワクチンの被害を訴える患者団体が名古屋市に調査を要望して、
当時、名古屋市市長だった河村たかし市長は、以前、衆議院議員時代に薬害問題に取り組んでらしたので、
これは推測ですが、おそらく、本当に薬害だったらちゃんと調べないといけない、というスタンスで調査を企画したのだと思います。

<名古屋スタディ概要>
2015年 名古屋市から鈴木先生へ調査を依頼(無報酬)
対象:名古屋市在住の当時小6~高3(1994年4月2日~2001年4月1日生まれ)女子 約7万人
回答:約3万人
方法:郵送のアンケート
調査項目:患者会が提示した24症状(めまい、視力低下、倦怠感、過呼吸、杖や車いすが必要になった、など)

結果:各項目のオッズ比0.35-1.41
9項目では有意差なし。
15項目ではHPVワクチン非接種群の方が有意に多い。
HPVワクチン接種群が有意に多い項目はなかった。

『オッズ比』というのは、因果関係を示す相対危険度のことで、
・因果関係がなければオッズ比は1
・関連が強いほどオッズ比は大きい数字になる

たとえば、過去の薬害のうち、サリドマイドのオッズ比は100以上。
オッズ比2未満で薬害と判断するのは理論上無理があります。

つまり、大規模疫学調査『名古屋スタディ』の結論としては、
『HPVワクチンと諸症状とに因果関係は認められない』ということです。

裏を返せば、
HPVワクチンをうったことのない、ふつうに生活している思春期の女の子の中に、そのような症状がある子がそれだけいる、ということ。

小児科の先生にお聞きすると、『そんな症状の子は小児科の外来にたくさん受診してくる』とおっしゃいます。
なにか病気が原因というわけでなく、はっきりした原因の分からない症状が思春期にはでうるのです。
思春期というのはいろんなプレッシャーにもまれますし、本人もなにが原因か気づいていないこともあるでしょうし、ましてや親にはなぜ子どもがそうなってしまったのか、理解できないことは多々あります。

思春期だからほっといていい、というわけではなく、
検査でなにも異常がなくて医学的には問題がない場合には、
原因を突き詰めることよりも、その子に長い目で寄り添ってあげるのが大事なんじゃないかなと思います。(個人的な意見です)

『因果関係がない』とはいえないのか

科学的に、
『ある』ことを証明できないことはない。
『ない』ことを証明することは極めて困難。

わかりやすい例でたとえると、

地球上にネッシーが『いる』ことを証明するには、ネッシーを見つけて示せばよいのですが、
地球上にネッシーが『いない』ことを証明するのは、地球上のあらゆる場所、地中から海底からすべてを、しかも同時に探していないことを確認しないといけないわけで、かなり無理があります。

なので、どうしても、『もしかしたらいるかもしれない』という『可能性』はゼロにはできない。

『ない』ことを証明するためには、あらゆる可能性を否定しないといけなくて、それは不可能に近い。

科学的には、『因果関係が示せない』ということは、HPVワクチンのリスクが高いとはいえない、ということなのです。

因果関係が認められないにもかかわらず

いずれにしても、名古屋スタディによってHPVワクチンと諸症状とに因果関係が示されなかったにもかかわらず、

HPVワクチンが原因かもしれないという過去の報道により刷り込まれた不安のために、
日本中の女の子たちが、HPVワクチンで子宮頸がんから身を守る機会を奪われているというのは、本当に残念でなりません。

希望して自ら申請すれば無料でうてるのだから、『機会を奪われているわけではない』という意見もあるかもしれませんが、

・個別通知が届かないと、『HPVワクチン』の存在自体知る機会がない
・個別通知が届かないと、自分の子が定期予防接種対象者で、今なら無料でうてることを知る機会がない
・以前の報道によりHPVワクチンに対してなんとなく不安が残り払拭されず、情報が入ってきても、接種しようとは思えない

というのが現実で、
そんな状況で、一般の人に、『それでも受けないのは自己責任だ』というのは酷です。

厚労省は、予防接種についての審議会を定期的に行っていて、
安全性などを常にモニタリング、検討しています。
HPVワクチンも、その審議会で『定期予防接種』として継続するとされているということは、事実上安全性を認めていることになります。

『積極的に勧奨』していないだけで『勧奨』はしているのです。

であれば、国民の健康を守るために、国として、国民が安心して接種できるようにアクションをおこすべきです。

せっかくの名古屋スタディの結果を、
厚労省も真剣に受け止めて体制を検討するべきですし、
メディアも、国民に刷り込まれた不安を払拭するべくしっかり取り上げてほしいと願います。

◆厚労省と各自治体に対して、HPVワクチンについての不安を払拭するような情報提供や、情報が届かなかったために接種できなかった人たちへの女性などを求めるオンライン署名はこちらです↓

『子宮頸がんは予防できる』という情報が届けられていない日本の女性を救いたい!
https://www.change.org/knowHPVvaccine

ご賛同頂けますと幸いです。

◆名古屋スタディの論文はこちら↓

No association between HPV vaccine and reported post-vaccination symptoms in Japanese young women: Results of the Nagoya study
S Suzuki et al. Papillomavirus Research 2018

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