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後ろ身幅のゆとり

 ひところ、ポールスミスの服が好きで良く着ていました。ジャケットの内側にベルベットやリボンの飾りがあったり、袖の飾りボタンがひとつだけ違ったり、ちょっとした可愛い工夫が楽しかったからです。仕事先で「ボタン、なくしたの?」と心配そうに聞かれたことも何度かありましたが(笑) 

 今回、岩波先生が提案するタックのついたスラッシュ開きを花柄の生地で作りました。同色の布で目立たなくするのもいいですが、好きな色や柄の布地を選んで、自分好みを主張するのも楽しいですよね。

 このタック付きのスラッシュ開きは、後身幅のゆとりを増やすためのリフォームです。小池千枝氏の服装造形論(文化出版局 1981)によると、腕を前方に45度挙げると、背中は3〜5cm伸びるそうです。車いすを漕ぐなど、大きな動きをする場合には、より大きなゆとりが必要だと想像できます。


 今回のスラッシュ開きは、片身で最大6cmのゆとりを確保することができます。位置は、ヨークの下から脇までとしましたが、動きの目的、腕の動かし方やリフォームするシャツの形状により、場所を調整した方が良さそうです。

 後身幅のゆとりを確保するというと、シャツのセンタープリーツやサイドタックがおなじみですが、身幅が全体に大きくなって、ウエストあたりがもたつくのが気になります。 それでは、運動や作業をするときにもおしゃれを楽しむひとは、どんな服を着ているのだろう?と調べてみたら、「ノーフォークジャケット」を見つけました。狩猟用に様々な工夫が施されたジャケットですが、その工夫のひとつが、後ろ肩から脇に配されたアクションプリーツです。普段閉じているプリーツが、銃を構える動きに合わせて開きます。体にピタッと沿うシルエットを崩すことなく、動きやすさを確保できるのです。

 このアクションプリーツはライダースジャケットやフライトジャケットなどにも使われているそうです。カッコいいことと動きやすいこと、その両立にこだわって生まれ、受け継がれている知恵なのですね。「お気に入りの服を作る」ために、忘れずにいたい視点だと思いました。


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