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芸術監督 長塚圭史からのご挨拶

2021年4月1日よりKAAT神奈川芸術劇場の芸術監督に就任致しました長塚圭史です。本来ならばここで所信表明を記そうと思っていたのですが、日々目まぐるしい社会状況ゆえに、それは次の機会にします。ご興味ある方はぜひ就任会見の映像をご覧ください。そこで劇場を「ひらいて」いくビジョンをお話ししております。季節感を持った劇場になるためにシーズン制を取り入れること、また時には実際に劇場を飛び出して行くこと、そして上演がなくてもマグマのようにクリエーションの火を絶やさぬことなどをたっぷりお話しています。また芸術監督の交代ということにつきましても、白井晃前芸術監督とお話する貴重な機会を得ましたので、こちらも映像でご覧になっていただけるとわかりやすいかと思います。KAATの芸術監督とはなんぞや(劇場によって役割はそれぞれ違うと思いますが)という一面がわかるのではないかなと思います。
この一年は劇場にとっても厳しいものとなりました。KAATは約5ヶ月間の休館を余儀なくされました。その後は客席配置に工夫をしながら上演を続けています。スタッフ・出演者、そしてお客様の多大なる努力の結果、安全をまもってきました。細心の注意を払い、厳しい自己管理をしながらも我々が力強く走り続けていられる大きな原動力は、この状況下でも劇場に足を運んでくださる、そして劇場には来られなくても配信公演などを楽しみにしてくださるお客様の思いがあるからこそです。私たちがこの一年の間、どれだけお客様に励まされたことか。全てのパフォーミングアーツは、やはりそこにお客様があることで成立するものです。お客様の想像力がなければ成立し得ないものばかりです。もし演劇やダンスを見て、これまでにないほどの感動や衝撃を覚えたことがあったとしたら、それはお客様がその作品の一部となったからです。だから我々は見て下さるお客様が一人でもいらっしゃってくだされば、演じ、踊ることができるのです。
もちろん社会の状況が変われば私たちは厳しい判断を迫られます。けれども劇場は、皆様が豊かな想像力の持ち主であることをハッキリと思い出させてくれる場であると信じています。出来うる限りの対策を練り、それを実行しながら、続けられる限り走り続けたい心算です。またどれだけの長期戦になろうと発信し続ける力を蓄えて行きたいと願っています。
公共劇場はそれぞれの地域の文化を豊かに維持・発展するという大切な役割を担っています。KAATを覗けば何かが上演されている、あるいは何かが熱く準備されている、ワクワクするようなカケラがそこに輝くように在りたいと思います。
               

                       2021年4月1日
           KAAT神奈川芸術劇場芸術監督 長塚圭史

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