見出し画像

店員に連絡先を渡す男の話。

12:00。
携帯が鳴る。
今日これから会う予定の看護師くんからだ。
集合時間は13:00だったのだが、遅れそうとのこと。
僕も基本時間にルーズな性格であるため、このくらいなんともない。

13:15。
集合場所に着いてすぐ、また彼から電話が鳴る。
「すまん!遅れそう!」
とのこと。
何も問題は無い。
「ゆっくり来いよ」
と伝え、本屋で時間を潰す。
時間にルーズな人同士は、いろいろと楽である。
まず自分が時間にルーズなのだから、相手が時間通りに来ることなどさらさら期待していない。
と言うより、自分も遅れる確率が高いから、相手が遅れてくれると自分のルーズさを誤魔化せる。
だからこそ、相手の遅刻に寛容になれる。
その心を育てることが出来れば、他人の失敗に左右されず自分らしく行動することができるようになる。
持つべき友は、時間にルーズな人。
これ、ほとんどの人には当てはまらないのかな。

16:00。
昼食につけ麺を食べ、本屋とスニーカーを物色した後、予定していた勉強に2人で取り掛かる。
僕はさっき買った本を読む。
「全ての行動は自分の意思で選んだのではなく、もともと決まっている。だから自分を責める必要はない。」
という内容の心理学系の本。
これは僕が表紙と冒頭部分を読んで感じたことだから、少し解釈違いはあるかも。
自分が読む前に思っていた内容とは違う展開となる本は面白い。
予想が当たることよりも、裏切られることに期待する人生を送りたい。
なんかいい名言だなぁ。
ついでに、映画の名言呟いてるTwitterアカウント教えるね!

19:00。
スタバに入店してから3時間たったが、看護師くんの勉強は一向に進んでいない。
「集中できん。やる気が出らん。」
そう呟いては、インスタとTikTokを開く。
スマホに支配された男の末路である。
やっと集中して勉強しだしたかと思ったら、
「あの子に、連絡先渡すわ。」
と言って、店員さんを指さす。
店に入った時からかわいいと言っていた人だ。
帰る時に渡すという計画を立て始めたのだが、実行するその瞬間を思い明らかに緊張しだした。
「なんかすごくソワソワする。」
こうなってしまったら、ただでさえ集中できていなかった勉強は、ただペンを握っているだけの指の運動だ。
なかなか良いポジションに動いてくれない店員さんを見つめながら、機会を伺う。
「よし!今から行く!」
そう言って、レジに歩き出した。
友達がガチガチで緊張している姿など見られるはずもなく、僕は携帯に視線を移し、彼の帰りを待つ。
「めっちゃドキマギしてしまった。」
落胆の表情を見せる彼と一緒に店を出る。
「緊張しすぎてただ連絡先渡すだけしかできんかった。隣の人にも聞かれたし。」
彼の初めての挑戦は、苦い思い出になってしまったらしい。
ただ、連絡が来ればバラ色に変わる。
「今日の夜が勝負!今日連絡来なかったらもう無理かな。」
まだ緊張で上手く笑えていないが、期待に緩んだ口元はこれからを楽しみにしているようだ。

素直に、行動できるってすごいなと思った。
果たして、連絡は来るのでしょうか。
彼にだけ彼女ができるのは断固反対ですので、どうかよろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?