2021/09/06 [DREAM BOYS 2021]

『何もかも引き受けてやるよ!』

ふうまくんの放つこの台詞、私には「何もかも背負ってやるよ!」に聴こえた。悪運が重なりまくる、悪運を一人で背負う、守るために。そして、悪運の根源を赦す。人は誰かのために生き、そして絆が生まれる。そんな綺麗事を言って女たちを男たちを赦す。そして歌う絆。「あの時あの場所、消えないこの絆」

あまりにもデジャビュである。帝劇で見たか?そうではない。このフウマを私たちはよく知っている。人々の思惑に巻き込まれ守りたい人の盾になり全てを背負い歩く。傷ついても潰れそうになっても両足で立ち続ける。そして全てを赦す。帝劇で見たわけではない、が、帝劇で似たような感覚を抱いたことまで数珠繋ぎのように思い出す。

そして今になってまざまざと脳裏に蘇るユウマの異質さ。フウマも異質なチャンプであったが、ユウマもまた異質な主演だったのだと知らされたのだ。

「何もかも引き受けてやるよ!」とユウマが言ったのは、とても合理的で理性的であった。誰も彼もまともに動けやしない、感情的すぎる。ユウマは非常に物わかりの良く悩む時間など無意味なくらい合理的な男であった。全く巻き込まれていない。運命を真っ直ぐ歩いて壁をぶち壊す男である。天国でチャンプから心臓を貰うときもサックリした男だった。蘇るわけないのだから弟のために貰える心臓は貰う、それが合理というものだから。自立心がカンストしている。

一方、ふうまくんは感情的な男である。感情的というと適切ではない、情が深く人を信じている男なのだ。精神が豊かであり、それが悲しさのなかに温かみを滲ませる。痛々しさや薄幸がない、地に足がついていて苦しみのなかに柔らかさを感じる。だから、告白した女たちを追い込んだ男たちを赦す。ほとんど無条件に人を信じる力を持っているし、人と人との繋がりを信じている。そして、天国では去っていくチャンプが差し出した片手を両手で包み込み、鼻を朱に染める。死ぬことを止められるわけがないと理解しているし、これでコウキの手術が出来ることも理解している。けれど、割り切れるものではないし悲しいものは悲しい、寂しい。

天国のシーンは本当に2015年をひっくり返したようだ。人の死を割り切れないフウマがそこにいる。

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それにしてもふうまくんの声に乗せる感情は良い。台詞も歌も、声に感情が乗り客席へ伝播させる。

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舞台内容に関する諸々の感想箇条書き(悪い意味の感想多し)

・仮面なし、挑戦者なし、赤カーテンなし、フライングなし、アクロバット縮小、オリ曲1曲(+α)、つまり主演の見せ場が半減以下

・脚本を整理しすぎた結果、主演とチャンプ以外の肉付けがされまくり、ただでさえ実は主演とチャンプ周りの説明も足りないのに余計に薄味になっている

・前半ジュニアによる口頭説明が多い

・人間関係が伝わってくるシーンが稀薄になった感じがする(もともとそうだけど)

・鉛の板連呼すな

・桟橋の歌好きだったのに一切響かなかったのは相性もあるけど、マリアさんと主演の関係性が無さすぎたからな気がする

・一人で死んでいくジュリは解釈一致

・心臓病で入院している男と子作りするな

・3番手を無くして弟にクローズアップしてるのにジュニアとして後ろに並べるせいで終始主演が0番ではなく4人若しくは2人で舞台を分割している状態に。主演感なし。コウキを1列目に置いてほしい。

・ボクシングシーンの気迫が伝わってこない。キレがないし体勢も低くないので、もうちょっと本物っぽいやり取りをしたほうが良いのでは・・?ふうまくんは背中丸めてたけど

・ジュリは前半ほぼフウマへの興味関心が明らかにされない感があったので(個人の感想)後半がとても唐突に聞こえた

・宮田のいない千賀っぽいのかもしれない

・帝劇なのか東宝なのかわからんけど、劇場前たむろにもロビーにも客席にも喋ってる人しかいないレベルなのに注意しないのはどういうことなのか。対策する気が感じられない。噂で聞く2.5の厳格さとは真逆のそこらへんのカフェレベル。信用なんか一切出来ない。