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中村剛也 ~100%応援目線の獅子図鑑⑤~

いま、史上もっとも“怖い”中村剛也を目撃しているのかもしれない。

2005年の交流戦で大ブレイクを果たして以来、長年いちファンとしてその打席を期待のまなざしで見つめ続けてきた。

彼の特徴はなんといっても「変わらない」ことだ。言葉にすれば自然体。泰然自若。どんなに緊迫した場面でも、大差がついた試合でも同じ表情で同じスイングをする。ホームランを打っても淡々とダイヤモンドを一周するし、たとえ三振しても堂々としている。たまに三振をして引き上げてくるときに、バットをポンと放り投げて半回転させるしぐさを見せると「あぁ悔しいんだな」とわかる程度である。

プロ目線で語られる中村の凄さとして、いつも同じようにスイングできることが語られることも多い。

そんな中村が、今年は変わった。

チャンスでの打席で、ミートを心掛けたような安打が数多く見られるようになった。特に追い込まれてからのスイングは「ランナーを返す」「次につなげる」そんな意識が明確に見える。右方向への打球も増えている。

これまでは「自分のバッティング」を貫くことでチームに貢献するという強い意志が感じられていたが、今年は言うなれば「チームを勝たせるバッティング」に徹している印象だ。

それは数字にも明らかに現れている。

8/18現在、リーグトップの得点圏打率.375に、打点91はリーグ2位。

走者なしの場面では打率.228ながら16本塁打を放ち「本塁打率」は山川やレアードに匹敵する12.06。一方で走者ありの場面では6本塁打ながら打率.350、出塁率はなんと.422。

ほぼ同じ打席数で両極端なこの成績からは、場面に応じて「二人の中村」を使い分けていることが証明されている。

ランナーがいない場面では依然として「アーチスト中村」でありながら、ランナーを置いた場面では「勝負強い中村」。相手投手にとってこれほど怖いことはないだろう。長年貫いたスタイルを変化させつつ、これだけの結果を残すのはさすがというほかない。

プロ野球史に残る大打者が見せるこの献身的なバッティングが、最後に優勝という形で報われることを心から願っている。

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