見出し画像

西武ライオンズCS敗退の原因が「選手層」と言われることへの違和感

中島大輔さんのこの記事を読みました。

リーグ連覇の西武はなぜ2年連続でCS敗退したのか。 指揮官も嘆いた「選手層」の根深い問題

https://thedigestweb.com/baseball/detail/id=3742?open=on

秋山選手や十亀投手への取材もふまえ、今の球団が抱える選手育成への問題点を、厳しくも誠実に指摘する内容でとても説得力があり頷けることばかりでした。

特に若手選手の意識などは、ふだん「試合」を見ることしかできないファンにとっては貴重な情報で、非常に興味深く読みました。

ただ一点、どうしても気になったのは記事のタイトルにある「なぜ2年連続でCS敗退したのか」という部分。これは辻監督の試合後のコメントもしかりですが、短期決戦であるCS敗退の原因が、選手層や育成の問題と結び付けられることに、どうしても違和感が残るのです。

選手層の違いを敗因として挙げるのは、例えるならラグビー日本代表が外国チームに負けて「敗因は体格差」と答えるようなもの。そんなことはCSを戦う前から分かりきっているはず。彼我の実力を冷静に把握・分析した上で、現有戦力でどうすれば目の前の試合に勝てるかという戦術を練るのが首脳陣の仕事ではないのでしょうか。

長期的な視点で、体格差を埋めるためにフィジカルを強くする、ライオンズで言うところの若手の底上げをするというのは、CS敗退の原因とはまた別の話だと思うのです。

もちろん選手層が厚いほうが、短期決戦を戦う上でも有利なのは間違いない。でもここ2年の辻監督の采配を見る限り、たとえソフトバンクと同等の選手層があったとしても、工藤監督と同等のベンチワークができたとは思えない、というのが正直なところ。

たとえば第1戦で内川に代打・長谷川が送られた場面。もし辻監督が采配をふるっていたなら内川を代えるという選択肢はないでしょう。長谷川を使うのは甲斐や牧原の代打というシチュエーションに限られたはず。

短期決戦では、調子の上がらない選手を我慢して使い続ける時間はない。しかし投手起用などで「勝負を賭ける」「思い切って流れを掴みに行く」という決断をせずに後手にまわる、という場面を何度も見た印象です。中島さんの記事でも一部そのことに触れてはいますが、「CS敗退の原因」を語るならば、その点こそが最も指摘されるべき。でなければまた同じことが繰り返される気がしてなりません。

とはいえ、大前提として。就任以来の3年間で岸、牧田、野上、菊池、浅村、炭谷と次々に主力が流出していながら「選手層が厚い」ソフトバンクを2年連続で退け、戦国パ・リーグを制した辻監督の手腕は素晴らしく、ここ数年の低迷を嘆いていたファンの立場からすれば、感謝しかありません。おそらく辻監督は、選手の潜在能力を見極め、モチベーションをうまくマネジメントしながら信頼して我慢強く起用し、長期的に結果を出していくというタイプなのでしょう。外崎・山川・森・金子などは辻体制のもとで「育った」と言っても過言ではなく、この点はもっと称賛されてしかるべきと思います。

あとは短期決戦を勝ち抜く戦術と決断力、それは監督自身がこの2年の経験をふまえ、磨いていってくれるものと信じます。来年は黄金時代のライオンズ以来どこも成し遂げていないリーグ3連覇、そしてCS・日本シリーズを制し、堂々たる「名将」としてその名を残してほしいと思います。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?