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「レギュラー固定」が鉄壁の守りを生んだライオンズ

2019年リーグ優勝を果たしたライオンズ。打撃や走塁が凄かったのはいうまでもないけれど、その守備も素晴らしかった。エラー数が多いことが言及されがちだが、これは守備力を評価する指標としては、あまり適当でないという認識が一般的になりつつある。事実、DELTA社が公開しているデータによると、チームUZR(平均的な選手に比べて、守備でどれだけの失点を防いだか)は、12球団でトップの中日(41.1)に次ぐ39.3を記録している(9/25現在)。3位の楽天が17.2だから、中日と西武の守備力は突出して高かったと言っていいと思う。


※UZRはあくまで「平均的な選手」との比較なので、スコア自体は相対的なものだ。極端に守備力の低いチームがいると、他チームのスコアが押し上げられることになる。なのでスコアの絶対値よりも「他チームとの差」によって守備力を測ることに適した指標なのかもしれない。


まあ、データの分析は専門家の方にまかせるとして、これはぼくがほぼ毎試合の中継を観戦していて感じたことだけど、今年のライオンズの守備はとにかく「際」に強かった。ニールが「たまらん」と絶賛する源田・外崎の二遊間はもちろん、中村も数々の際どい当たりを好捕したし、山川も昨年と比べ、難しい打球や送球のバウンド処理が格段に上達していた。そして外野陣。俊足3人衆による、ギリギリのスライディングキャッチやフェンス際のジャンピングキャッチを何度見ただろうか。さらに外野⇒内野⇒捕手と渡る、精度が高い中継プレーでの得点阻止。今年の捕殺は秋山8、金子と木村が9を記録しているが、他の5球団を見渡しても、ロッテの荻野貴が8で並ぶくらいである。これは彼らの肩の強さだけでなく、捕ってからの速さや正確さ、さらには中継に入る源田や外崎のバックホーム、森のタッチなど、様々な要素が高いレベルで噛み合ったことを示すものだと思う。


この好結果を生んだのは、個々の守備能力に加えて「レギュラーの固定化」が要因として大きかったのではないだろうか。

少しでも野球をやった人なら分かると思うけれど、守備において「周りの選手」の影響は意外と大きい。たとえば野手と野手の間に飛ぶ打球の処理。ノックでは「100パーセント自分の打球」だと思って追うから難なく捕れる当たりでも、試合になると他の選手との譲り合いや衝突で落球することは珍しくない。中継に入る位置も、外野手と自分の肩の強さの兼ね合いで微妙に変わる。これが、いつも同じメンバーだと格段に守りやすくなる。「この打球はアイツが追いつける」「アイツの肩なら、自分はもう少しホーム寄りで待とう」など、自分の判断に迷いがなくなる。そんな細かい積み重ねが、今シーズン何度もギリギリの「際」でアウトをもぎ取ってきた一番の要因だと思える。


もちろん、レギュラーの固定化はそれぞれの選手が大きなケガがなく、走攻守でムラなく活躍したからできたことだ。それが「結果的に」鉄壁の守備にもつながった。つくづく今年の優勝は、いくつもの好循環が見事に結実したものだと感じる。

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