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かぶきDOU其の7 アフタートーク

皆様今回もコミてんラジオかぶきDOUをお聴きいただき誠にありがとうございました。
スタジオがある福岡市天神は5月にも関わらず本番前に気温が25度を超えて夏を思わせるような暑さでした。そんな汗ばむ陽気にピッタリな夏祭浪花鑑の解説をお届けしました。



夏祭浪花鑑 PART1

この夏祭浪花鑑は6月博多座大歌舞伎夜の部で演じられます。
歌舞伎の中でも大変有名な演目で、題名を耳にしたことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
背景なども含めてたっぷりとご紹介したく、番組では3回にわけてお送りいたします。

作者は並木千柳、三好松洛、竹田小出雲の合作となっています。
実話をもとに人形浄瑠璃として生まれ、翌月の1745年(延享2年)8月には歌舞伎で初演となりました。
舞台は江戸時代の大阪ですが、当時の地名は「おおざか」と濁って発音したそうです。セリフでも大坂(おおざか)とでてきます。
漢字も大阪ではなく、大坂の表記になります。
そして「浜田藩」がキーワードになりますがこちらはフィクションの藩となっています。


序幕 住吉鳥居前の場


夏祭浪花鑑は3つのシーンに分かれています。

  • 序幕  住吉鳥居前の場

  • 二幕目 釣船三婦内の場

  • 大詰  長町裏の場

団七をめぐる人々と、六月博多座大歌舞伎の配役で公表されているものをまとめてみました。

 団七と家族

団七(堺で魚屋を営む)
片岡愛之助 松嶋屋
団七の妻 お梶
中村梅枝 萬屋
舅 お梶の父 三河屋義平次
嵐橘三郎 伊丹屋
団七の息子 市松

団七が恩義を感じる人々

釣船三婦 (団七の兄貴分)
中村鴈治郎 成駒家
浜田藩 諸士頭 玉島兵太夫 
(かつてお梶が仕えていた家)    
その子息 玉島磯之丞 
中村萬太郎 萬屋 
傾城琴浦 (磯之丞に身請けされ公認の仲)上村吉太朗 美吉屋 

団七の敵  


浜田藩に仕える大鳥佐賀右衛門(琴浦に横恋慕し磯之丞を失脚させようと企てる)
一寸徳兵衛(佐賀右衛門の一味からその企みを依頼される)
尾上菊之助 音羽屋
※徳兵衛は序盤の住吉鳥居前で団七と義兄弟の契りを交わし序盤以降は団七側の味方になります。

その他
髪結床の下剃
(髪結床見習い) 


今回は序幕 住吉鳥居前の場についての解説です。

かぶきDOU解説 序幕 住吉鳥居前

団七は、大坂の浜田藩に仕える佐賀右衛門の家来との喧嘩が元で、この家来を死亡させてしまった罪で投獄されていました。
団七の女房お梶がかつて、浜田藩のお侍で諸士頭の玉島兵太夫に仕えていたことから便宜を図ってもらい、夫 団七は牢屋を出られることになりました。
今日は釈放の日です。古い付き合いの釣舟三婦とお梶、息子の市松が住吉神社鳥居前で団七の帰りを待ちます。
三婦はお辰に「実父の義平次はどうした?」と尋ねますが腰が痛くて迎えにはいけないとのこと。
三婦はどうせ嘘だろうと言います。どうやら義平次は曲者のようです。
お梶と市松は、少し時間があるので境内へお参りに行くことにします。
籠舁きが客を籠に乗せてやってきました。高額な籠代をふっかけられ、手持ちがなくてトラブルになった男性客を三婦が救います。
実はこの男性は団七を減刑にしてくれた玉島兵太夫の息子 玉島磯之丞でした。廓通いを続け実家から勘当されてすっかり落ちぶれてしまった磯之丞は、大坂長町の三河屋義平治の家に向かうつもりでした。団七の妻お梶を頼ろうとしていたのです。
三婦はお梶と市松が戻ってくるのを待っているため、磯之丞にお昼ご飯を是非にと、先に料理茶屋の昆布屋へ向かってもらうよう案内しました。



そこへ団七が連行されてきます。団七は男の身だしなみである、月代(さかやき)も眉毛もぼうぼうです。さらに髭を蓄えてみすぼらしい姿です。ようやく釈放されて「これも不動明王と玉島兵太夫様のおかげ」と手を合わせる団七。
放免となるかわりに息子の磯之丞を守るよう玉島兵太夫から依頼されているのです。
そして三婦との再会となります。三婦から用意してもらった着物一式で身だしなみを整えるため髪結床に入ります。
団七を待つ三婦は急に「白旗を忘れた!」と慌てます。
白旗とは木綿のふんどしのこと。自分のはおろしたての赤旗だから大丈夫!と髪結床の下剃りに頼み、赤いふんどしを引っ張らせる様が愉快な場面となっています。
そして三婦はひと足先に昆布屋へ向かいます。


恋しい磯之丞を追って琴浦がやってきました。その後をつけてきたのは大鳥佐賀右衛門です。
しつこく交際を迫られて琴浦は髪結床に逃げ込みますが、佐賀右衛門も後を追います。
そして団七が身なりを整えキリッと男前になって佐賀右衛門を捉えながら登場します。首抜きと呼ばれる首元に大きな模様が大胆にあしらわれた白い浴衣姿です。粋でいなせな男伊達、江戸イケメンに変わる場面も見どころです!

団七の髪型は糸びんと呼ばれます。髷を糸のように細くして後頭部の下の位置で結ったヘアスタイルが男伊達や任侠に好まれたそうです。団七の剃りたての様子を青月代(あおさかやき)と浄瑠璃で語ります。

佐賀右衛門の体を使って、琴浦に磯之丞のいる場所の道案内をするシーンが笑いを誘います。
そこに徳兵衛が登場します。佐賀右衛門の指示で琴浦をさらいに来ました。
団七と徳兵衛の達引(たてひき)も見どころです。達引とは、意地の張り合いや揉め事、喧嘩の意味です。神社の立て札をともに引き抜き立ち回りとなります。
そこにお参りを終えた団七の妻のお梶が駆けつけます。
ようやく釈放されたのにまた喧嘩なんて!なんとかして止めようとするお梶ですが埒があきません。側にあった看板で二人を制止するお梶がかっこいいです!
ちなみに、お梶が持つ看板には当時人気の人形浄瑠璃、曽根崎心中の番付が貼られています。
ここで思わぬ対面となります。
落ちぶれて物乞い生活をしていた徳兵衛を救ったのがお梶でした。
磯之丞が佐賀右衛門にそそのかされて廓に入り浸っていた時に、息子の磯之丞を助けてほしいと、かつての奉公先の玉島兵太夫からお梶は頼まれていました。
そこで徳兵衛に目を付け、磯之丞が家へ帰るよう促してほしいと依頼していたのです。
お梶の見立ては正しく、磯之丞は廓を出ることになりました。
その報酬として徳兵衛には着物やお金を都合してやったのにこのざまとは…とお梶は嘆きます。
平謝りの徳兵衛です。
玉島家は備州、現在の岡山のあたりにあります。
徳兵衛は備中の生まれでしたが厄介ごとを起こして故郷に残してきた女房も玉島家とつながりがあるとのこと。
さらにお梶が手にしている看板の曽根崎心中の登場人物にも同じ名前の徳兵衛がいます。
これも神様のお導きと、自分にとって縁があるお侍さんの為に磯之丞への忠義を尽くすと誓います。
団七は「固めをしよう」誓いの儀式をしようといいます。
磯之丞様を袖にしないという意味で、徳兵衛と団七は片袖を引きちぎり交換します。
二人は「こうなるからは兄弟同然」と契りを交わします。

息子市松を肩車した団七と徳兵衛そしてお梶は意気揚々と、堺から大坂へ向かいます。


いかがでしたでしょうか?
登場人物が多く、複雑に絡み合う関係性が多いのも歌舞伎の難しさでもあり魅力でもあります。
かぶきDOUではゆっくりと紐解いていきたいと思います。
来週は夏祭浪花鑑の二幕目 釣船三婦内の場をお届けします。お楽しみに!


縁の一曲 坂東彌十郎さん


歌舞伎役者さんにゆかりの曲をご紹介する、えにしの一曲のコーナーです。今回は坂東彌十郎さんでした。5/10に67歳のお誕生日を迎えられました☆
現在も舞台に映像のお仕事にご多忙の彌十郎さんですが、昨年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」北条時政役でブレイクされました!
大河とほぼ並行してご出演されたのがTBSドラマ クロサギです。主人公はKing & Princeの平野紫耀さん演じる天才詐欺師 黒崎。彼の父親の仇である詐欺師 御木本を演じられました。黒崎とのスリリングな対決が見ものでした!
大河のほっこりする時政パパとは真逆のヒール役の彌十郎さんに驚かれた方も多かったのではないでしょうか?
ハットにスリーピースのスーツ姿がとてもダンディで素敵でした。
TBSドラマ クロサギの主題歌でKing & Prince ツキヨミ お届けしました。


めでてえなぁ

          
お誕生日を迎えられる歌舞伎役者さんをご紹介する「めでてえなあ」のコーナー!お名前と、所属 屋号をご紹介します。五十音順となっておりますのでご了承ください。5/10から5/16がお誕生日の皆さんです。

5/10 坂東彌十郎さん 
大和屋

5/10 宮脇信治さん 
歌舞伎フリー

5/12 中村萬太郎さん 
萬屋

5/13 中村勘之丞さん 
中村屋

以上4名の皆様でした、お誕生日おめでとうございます!                                


次回のかぶきDOUは5/23㈫の午前10:00-10:25生放送でお届けします。お楽しみに!
番組のYou Tubeアーカイブはこちらからご覧いただけます




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