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地上から離れて自分を見る

できるだけ地上から遠くはなれられる場所を求めて観覧車に乗った。地上の雑踏が人いきれであふれていて、疲れてしまうから。っていうドキュメンタリーを観た。NHKでやっている『ドキュメント72時間』という番組だ。

観覧車に乗りに来る人たちを72時間追い続けるだけの番組で、テレビの良さを凝縮したような番組だと感じた。フィクションの世界には極端な人間ばかりいるし、その間に葛藤が起こる。葛藤を乗り越えて大きな問題に解決策を見つけ、実行しきるところに物語のセオリーがあり、キャラクターに矛盾は許されない。

でも人間というのは、もっと曖昧なものだ。いくらカレーが好きでも、毎日は食べないし、ときにはさっぱりと蕎麦を食べたくなる。金が大好きなギャンブラーでも、長く闘ってきた友人が病気になれば心配で手土産を買って見舞いに行ったりする。『麻雀放浪記』のドサ健のような清々しいまでの拝金主義はフィクションの世界にしか存在しない。

映画が2時間で終わるように、ストーリーがかっちりと組み上げられ、そのためキャラも純化し、抽象化された人間像が求められるのに比べ、テレビというのは、曖昧に揺れ動く人間が現れてきたときの「リアル」に面白みがある。僕は『ドキュメント72時間』で、純化されたキャラではなく、そういう人間のリアルを眺めているのが好きだ。

僕もできるだけ雑踏を避け、行列には並ばず、満員電車に乗らないように生きてきた。僕なりのオルタナティブを追求する試みだったけど、雑踏を避けたい自分が住んでいるのは、都心のビル群のすぐ脇なのだ。

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