出汁をとらずにつくる味噌汁

味噌汁を作るとき、出汁をとらねばならないと思っていた。
ずっと思っていた。
鰹節で、さもなくば昆布か煮干しで出汁をとらないと味噌汁は成立しない、そんな風にずっと考えて生きていたのだ。
もちろん、顆粒だしを使う方法もあるが、それは自分で戒めていた。そんな楽はしてはならぬと、それはよき味噌汁ではないと、自分でハードルを上げていた。
結果的に、味噌汁はハードルの高い料理になってしまった。
出汁をとる必要があり、コンロをひとつ占領し、できあがるものは、なんの変哲もない味噌汁。仕事をして、帰宅して、翌日の弁当を視野に入れて夕餉を作るとき、味噌汁を作る気にはなかなかならなかった。

出汁をとらなくてもよいと思うようになったのはいつからだろう。

野菜や魚を入れれば、鰹出汁ほどではないものの十分に出汁がでる。
豆腐とワカメのシンプルな味噌汁が食べたい時は、鰹節を放り込んで、味噌汁と一緒に食えばよい。
そもそも味噌には十分な旨味がある。
お椀に味噌と鰹節を入れて、乾燥わかめやねぎを入れて、熱湯を注げば十分に美味い。
物足りなければ、ほんの数滴の白だしを足せばよい。

そう思ってから、味噌汁を作るハードルがぐんと下がった。

味噌汁は簡単だ。
余っている野菜を適当に切って突っ込めば、具となり、出汁となる。
納豆も、チーズも、トマトも、ウインナーも、なんだって包み込む。鯖や鮭の水煮缶を汁ごと入れれば、旨味もすごい。汁ごと飲むから、栄養素の無駄も少ない。

味噌汁、すごい。
味噌汁、うまい。

スープジャーを導入してからは、昼餉も味噌汁になる。
温かい味噌汁とおにぎりでもあれば、午後は幸せの余韻にひたれるのだ。

なによりも、人生に味噌汁を取り戻した心地がするのがあまりにも嬉しい。

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