見出し画像

われわれは何のために無料ホームページをやっているのか

わたしはクローバ株式会社代表としてクローバ PAGE という無料ホームページのサービスを運営しています。この記事はわたくしどものサービスに関する所信表明のようなものなので全く興味ないかたがほとんどだと思いますが、わたしが会社を立ち上げてから4年間なにをやってきたかを書かせてください。

ええとまず、2015年の元旦の話をします。その日、わたしの頭の中であるイメージが浮かびました。それはとても抽象的なものなのでうまく言葉にすることはできないのですが、そのイメージを具現化するアイデアもいくつか思いつきました。なのでそれを企画書としてパワーポイントに書き出してみることにしました。最初に書いたものはとても恥ずかしくて見せられないのですが、何度か書き直してかたちになったものがこちらにあります。

タイトルにある日付は、当時勤めていた会社の役員全員の前で、こういうことをやりたいので会社をやめますとプレゼンした日です。役員の一人から、P/L(損益計算)がないと成功しそうかどうかの判断できないという声があがりました。わたしは出資していただきたいわけではなく、何の見返りもなくお金をいただきたいのだといいました。こうしてありがたいことに、わたしはサイボウズ社から退職金をいただいた数少ない元社員になりました。おそらくわたしがきちんと自立できることによって、将来的に会社にとってもメリットがあると感じていただけたのではないかと思います。いただいた退職金は半年でぜんぶ使ってしまいましたが、はじめの年はほとんど収入がなかったのでとても助かりました。何らかの形でお返しできればと思います。

脱線したので話を戻します。資料を見ていただくとわかるのですが、どこにも「ホームページ」という言葉はでてきません。わたしが実現したかったのは「新しい活動やプロジェクトに共感する人々が自然につながることのできる世界」であり、ホームページが簡単に作れるサービスを作ろうなどと当時は全く考えていませんでした。ところがある程度機能ができてくると、これは誰がどう見てもホームページが作れるサービスだろうということになりました。実際最初のリリースでは、ドラッグ&ドロップでホームページを作って公開することくらいしかできなかったのですから当然かもしれません。もちろん、ホームページを作る機能については相当こだわって開発してきましたから、他のどんなサービスよりも優れている自信があります。それでも最初わたしは自分たちのサービスのことを「無料ホームページ」と呼ぶことには抵抗がありました。サービス名は最初「crovers」でしたが、お客様のサイトのドメインとして利用することを考えるとどうしても短いcomドメインをつける必要があったので、あれこれ考えたすえ「qloba」になりました。読み方はかろうじて似ているものの、もはや原型やその意味を想像することすらできません。こんなふうにして数え切れないほど妥協や回り道をしながらも、何とか一歩ずつ前に進んできました。赤塚不二夫は「近道は間違う道なのだ」という名言をバカボンの父にいわせましたが果たしてこの道のりが正しい道なのか確証を持ったことはこれまで一度もありません。今では何のサービスやってるのと聞かれて何と答えるか、答えはこの記事の冒頭を読めばわかります。

この間に、おかげさまでお客様に多種多様なページを作成していただきました。川崎宮前区にある小泉農園さんではスタッフ手作りのイチゴ狩り予約サイトに月500件の予約が入ります。大学の学生会で利用されることもあれば、よさこいサークルバレエの教室もあります。企業のイベントやセミナーの告知に利用されることもあります。何だか多様すぎて結局どういう用途に適しているのか自分でもわからなくなってきたことがありましたが、ある時、これらは全てわたしたちが応援すべき大切なプロジェクトなのだということに気づきました。イベントも個人事業もサークルも、目的と活動さえあればそれは立派なプロジェクトであり、そこに共感できる思いが伝わればもう応援しない理由はありません。これまでにわたしはクローバ PAGE で公開されたサイトを通じて、活動に共感した見知らぬ人がつながる場面を何度か目にしました。そんなときだけは、赤塚不二夫が残したもう1つの有名なことばを思い出します。「これでいいのだ」

こういう機能をつけてほしい、とかこういう協業をしませんかみたいなお話をいただく時、わたしはいつも、何のためにこのサービスをやっているかを思い出すようにしています。クローバ PAGE は無料ホームページですが、今までもずっと、新しい活動やプロジェクトを支援するためのプラットフォームです。だから複数人で共同編集やお問い合わせの管理ができますし、スマホアプリでかんたんに活動を報告することができます。逆に大規模な企業サイトや、個人ブログのような用途には適しているとはいえません。

わたしがあの元旦に見たイメージをみなさまと共有できる日が1日も早く訪れるよう、これからも全力でサービスの改善を続けていきます。今後も応援のほどよろしくお願いいたします。