メールなんか古いよねと言われるようになってもうしばらく経ちますが、今でも最初の連絡はメールでという場面は多いと思います。うちでもたまに「クローバでメルマガは送れないんですか？」といったお問い合わせをいただくことがあります。

例えばお店なんかで顧客に一斉に案内を送りたいことがあるとします。500人くらいまでだったら、メールアプリを開いてBCCに500人分のアドレスを入力することはなんとかできるかもしれません。使っているのがGmailで、Gmailのアドレスmyfabulousaddress@gmail.comから500人に送信したとしたら、ほとんどの宛先に届くでしょう。でもそれが取得したばかりの自分のドメインだったらちょっと難しいことになります。何も考えずにkadoya@myfabulousdomain.jp から500人に一斉送信した場合、彼らにメールが届く確率はずっと低くなります。

なぜメールが届かないかというと、最近のメールシステムは自動的に迷惑メールをブロックするようになっているからです。そういったしくみがなければ、わたしのメールボックスはよくわからない商材やスカウトのメールを毎日千通も見ないといけなくなります。そんなメールを送られるのは嫌だ。でも自分は送りたい、というのはちょっと自分勝手な感じがしますね。

まずは法律に従う

法律上は、広告または宣伝を行うためのメールを送る場合は、原則として事前に送信の同意を得なくてはならないことになっています。またオプトアウト（受信拒否）ができるようにしなければならないと定められています。なので受信拒否できないメルマガなどが届いた場合には、遠慮なく迷惑メールとして扱って構わないことになります。それから送信者の名称などの表示義務もあります。法律にのっとってメールを送らないと警察に捕まりますよ、というのが第一の条件です。

送信ドメインの認証を行う

受信側のメールシステムは、受けたメールがスパム（迷惑メール）かどうか、いろいろな情報から総合的に判断しています。その中でも重要な要素となるのは、差出人のメールアドレスと、送信元のIPアドレスです。これらが過去にスパムを送信したことのあるものであったりして疑わしいと判断された場合には、メールの内容に関係なく受信を拒否されてしまいます。ただし差出人のメールアドレスについては簡単に偽装が可能なので、最近のシステムにはメールが本当にこのメールアドレスから送ったものであるか確認するしくみが備わっています。送信ドメイン認証と呼ばれるしくみがそれで、代表的なものにSPFとDKIMがあります。まずは使っているメールサービスでこれらの設定を行えるかどうか確認してみることをおすすめします。これらの設定を適切に行うことで、受信側は「このメールは確かにmyfabulousdomain.jpから送ったものですよ」ということがわかります。

一度配信できなかった宛先には送らない

送信ドメイン認証のおかげで、あなたの送ったメールの差出人が確かにkadoya@myfabulousdomain.jpだということはわかりました。でもあなたがスパマーでないという確証はどこにもありません。宛先のアドレスが変わっていたりして受信できないメールを何度も続けて送ったりしていると、「あれ？　myfabulousdomain.jp からのメールはスパムかもしれないな」ということになります。何らかの理由で宛先に正常に配信できなかったメールのことをバウンスメールといいます。バウンスメールが多くなければなるほど、受信側のシステムからあいつはスパマーだ！　とみなされて受信拒否される可能性が高くなります。なので到達率を上げるには、一度でも配信できなかった宛先にはメールを送ってはいけません（メルマガのサービスなどでは、配信できなかった宛先を自動的に配信対象から除外するものもあります）。バウンス率が高い利用者には配信が停止されるサービスもあります。つまり自分ではみんなに役に立つ筋肉体操のメルマガですよ！と思って配信していても、バウンス率が高いとそれはスパムということになります。

またインターネットに公開されているブラックリストというものがあって、そこにドメインやIPアドレスが掲載されてしまうと多くのメールサーバーから受信を拒否されてしまいます。急にメールがぜんぜん届かなくなった！という場合などは、使っているものが掲載されているかどうかを検索してみるとよいでしょう。

IPアドレスの評判（レピュテーション）を上げる

差出人のメールアドレスと並んで重要なのが、送信元のIPアドレスです。ドメインと違って、IPアドレスは他の利用者と共用していることが多いと思います。上にバウンス率が高い利用者には配信が停止されることがあると書きましたが、これはひとりの利用者がIPアドレスの評判を下げると、他の利用者にも影響が出るためです。利用者が大量のメールを送信するサービスでは、バウンス率の高い利用者ほど評判の低い（到達しにくい）IPアドレスを割り当てられるしくみもあったりします。新しいIPアドレスだと悪い評判がないから有利かというとそうでもなく、使われたことのないIPアドレスは評価できないため逆に到達しにくい傾向にあるようです。なので新しいIPアドレスからメールを送信する場合には、毎日少しずつの件数を送って「この子新人なんですいません、ちょっとずつ勉強させてもらってます」ていう感じでIPアドレスを慣れさせる手法が用いられます。

で、ここまで前置きだったりするのですが

こんなふうに、「自分のドメインから不特定の宛先にメールをちゃんと送る」というのはそれなりに大変だったりするわけです。うちのサービスではSendGridというメール配信サービスを使っているのですが、これまでは共用のIPアドレスでサインアップや通知のメールを配信していました。うちのメールの到達率はいつも95%以上はあったので、これまでそんな問題になることはなかったのですが、それでも一度共用のIPアドレスがブラックリストに掲載されていたことがあったり、メールが届かないという問い合わせもなくはなくて、利用者も増えてきたしということで、先日専用のIPアドレスを使うプランにアップグレードしたんですね。これで他の利用者の影響を受けずにメールが配信できるようになるわけです。

これでもっとユーザーに安心して使ってもらえるわーと喜んでいたのですが、なぜかアップグレード後にうちの通知メールが届かなくなっていました。IPアドレスが変わるとウォームアップで配信まで時間かかるしくみなのかな？？　でも１時間経っても届かない。もしかして、、と思ったら、Gmailの迷惑メールフォルダに入ってました。。
これはもしやってことでブラックリスト検索したら、リストのひとつにうちに割り当てられたばかりのIPアドレスがしっかり掲載されています。これは受信拒否されるわ。
せっかくアップグレードしたのに意味ないやん、ということでSendGridのサポートに問い合わせることにしました。SendGridは日本の代理店もあるのですがうちはUSと直接契約してるので、英語で問い合わせないといけません。前に共用のIPアドレスがブラックリストに入っていた時はしっかり対応してくれたので大丈夫のはず。

で返ってきたのがこれ

Hey there,
Thanks for reaching out! We ask that our dedicated IP plan users make the initial delisting request in the event that they discover their SendGrid IP on a blacklist. These IP addresses are only assigned to one account at a time, so we expect users to take responsibility for all of the mail that is sent through their account. We will still be happy to step in and assist with these delisting requests if the listing service requires the IP administrator to take action.
Please let us know if you need any further help delisting your dedicated IP.

要約すると、専用IPは利用者が自分で責任持って管理するものだからブラックリストからの削除申請は自分でやってみて！　わかんなかったらサポートするよ、って感じですかね。うーマジかってことで諦めて削除申請しようかと思ったのですが、いやいややっぱなんかおかしい！　夜中にぼんやりした気力を振り絞ってメール返すことにしました。

Hello ***,
I understood. But the IP address has been listed before I use it. I just upgraded the plan *today*.
I am not responsible for that, right?
Can I ask the delisting for this time?
（わかったけど今日アップグレードしたばかりなのにこれ私の責任じゃないよね？　今回は削除お願いできますか？）

そうしたら、ごめん今日アップグレードしたって見落としてたわ、IPアドレス変えたから確認してみてって連絡きました。よかった。最初のメールの書き方が悪かったのかもしれん。ともあれ、無事新しいIPアドレスでメールが送れるようになりました（今月のニュースレターもちゃんと送れました。読んでくれたら嬉しいです）。

というわけで、今回はちゃんとメールを送るのは意外と難しいというお話でした。
もしクローバ PAGE のメールが届かないよ、という方がいらっしゃったらご連絡ください！