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みえこ、ダッシュツ(仮)

 去る10月15・16日。久しぶりに舞台役者をさせていただきました。

演劇集団和歌山
公式記録員さんより提供


読売新聞和歌山版より


吉野家の焼き肉のシーンから登場の
美枝子。
あくまでも、読み方は
「よしのけ」
です。


 いただいた役名は、「吉野美枝子」。長男の嫁、和彦(名前のみ登場)の母、義和の妻、母を亡くした後は兄と父とで暮らす(いつ亡くなったかは記述なし)、ラストは義弟に「カッコいい奥さん」と呼ばれる、夫は「うちは(離婚なんかしない)大丈夫」と過信。このような条件のもと、稽古に挑みました。


吉野美枝子の旧姓は
丸山美枝子。
長男の嫁。母を亡くしている。
実家では、父と兄の3人家族だった。
美枝子と義和の間には、
来年、中学になる息子、和彦がいる。







 役づくりにおいては、様々な考え方がありますが、わたしは…というと、「世界観」を知るところから始めます。

どうしてこれを引用したかという部分まで研究します。



 まあ、それ、必要?ってトコまで……


どんなシーンかは想像にお任せします。
ここまで飛び散るには、
あの「怒」はすごいエネルギーです。


 この精神がどこから来るかというと、それは、「原作者の作意に忠実でありたい」というこころです。(自分の役とは一見関係なくとも、舞台の世界の一員である自分とは無関係ではありません)


東京での打ち合わせの空き時間に四谷を取材。
実際に樹木葬をされている場所も。
生死に関する表現には神経を使います。


表現する、役として演じる。
ご覧いただくために、
その上で…
チケット予約を呼びかけることとは……



 最初にしたのは、「共通の父親像」を2人でつくることでした。

 ちなみに、わたしは三田村⭕️彦さんのイメージでしたが、共演のお相手HIROSHIさんは、F田まことさんとのことで、それを共有。

 細微なことかもしれませんが、この共有の時間の長さが、本番2日目に表れました。

 お客様と作者にとっては、余計なふたこと。

「どうしましょう?」

「どうしたものかなぁ?」

 です。

 振り返ってみれば、もっと上質なアドリブで間を繋げたかもしれません。秒数にしても、3秒未満のこと。けれどもそこで、このキャッチボールをしてから黙り込んだことが、あとあと、自然な流れとなりました。

 嬉しかったのは、「どうしましょう」の咄嗟のひとことに、HIROSHIさんが「どうしたもんかなぁ」と応えてくれたことです。


そう、ちょうどこのシーンのおかげで、
この次↓


自然に。

 8月から稽古し続け、培ってきた関係性でした。夫(義和)と美枝子は同じシーンに2人で登場します。抜き稽古は同じ時間。義和さんのシーンは夫婦以外にも前後で兄弟のシーンもあり、セリフ量は美枝子の倍以上ありますが、美枝子はその空間にいつづけるか、袖に常に待機しています。

 役者復帰は2年ぶり。わたしは自分の首を真綿で締めるような追い込み投稿をしながら、自分を奮い立たせて、やっと立っていましたが、相手役の方は20年ぶりの役者復帰。相当な練習量だったと思います。家族全員のシーンでは、セリフのキャッチボールが自然に整って、本当にいい舞台となりました。

 応援いただき、ありがとうございます。

当日パンフレットより
お花もいただきました♪
演劇集団和歌山代表の楠本幸男さんと記念に。
戯曲集にサインをいただきました。

 音響さん、照明さん、衣装さんをはじめ、舞台装置から制作から、本当にたくさんの学びをいただきました。

 演劇集団和歌山さん、お世話になり、ありがとうございました。

演劇大学のチームメイトとも再会。
合評会にて。
アンケート用紙の貴重なご意見を頂戴いたしました。
ありがとうございます。


 この舞台に参加し、鈴木総さんの作品がより大好きになりました。いつかお会いできたらと思います。




さて、わたしなりの役づくり
スピンオフはここから

【スピンオフプチ戯曲: みえこ、ダッシュツ】

吉野美枝子は、パートタイマーで働きながら、吉野家の長男、義和を支える。12歳になった息子、和彦は反抗期を迎え、「うっさい!」と美枝子に当たる。その上、ど天然の義和には、美枝子は毎日苦労させられている。

そんな折、吉野家のバーベキューから帰宅し、どっぷり疲れていたところ、「おーい、お茶!」と義和。
ブチ切れた美枝子は、
「ご自分で淹れはったらよろしおすえ?」
と、亡き母がよく使っていた京都弁で皮肉まじりの反抗を。
「おい、お茶くらい女が入れろよ」と返す義和。

その一言に、美枝子は、翌朝、スーツケースに荷物を積めこみ、兄がいるブラジルに家出した。

「にいさん、事件です!」
(にいなの脳内では、北村一輝)

 以下、何故か英語で会話している。

 空港ロビー、ターミナルには現地のコーディネーターの待つバンがある。

「なんだよー!来たのか!僕の会社で働くってのはどお?」

「しばらくそうするわ。秘書2級だし。まあ、迎えに来るまで。さあ、迎えにくるかどうかもわからないけど。とにかく、いまは、吉野家の牛肉以外を食べたい。タコス食べたい」

「しかたないな、奢ってやるよ」

 バン車内に乗り込み、車中で話をする2人。

「兄さん、ありがと。いつも助かる。地球の裏側は楽しいわ。帰りたくないわ」

「3日もすれば、帰りたくなるさ」

「にいさんも、帰りたいの?」

「ああ、帰りたい。たまにね、思い出すんだ。母さんがいた京都に遊びに行って、縁側でぼーっとしたこと」

「そ、だれでもあるのね、人生で一度あるかないかのこと。お母さんもあったのでしょうね」

「そだね。マイペースな父さんだからな。父さんの、老若男女分け隔てなく優しいところは、いろんな誤解を招いていたし、ね」

「あーーー、それはいまでも、ね」

「あのひと、天然だから、わかってないんだ。俺たちが寂しかったことも。母が死んでから、それどころじゃなかったから」

「そうね。わたしよりも、、」

「ほかに何かあったのか?」

「ううん、なんでもない」

  タコス屋にて🌮

  無言が続き、辛い辛いとモリがって食べながら……

「ありがと、にいさん。やっぱり3日で帰るわ」

「そか、わかった」

  美枝子、何かを悟ったように、清々しい顔で、兄の家ではなく近くにホテルを取るといい、兄のバンに乗り込む。

  夕陽を背に受けながら


(記:香月にいな 2022.11.07)

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