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字書きの同人誌作りスペース振り返り


 初めまして、カエデと申します。

 先日Twitterの方で開催した「字書きの同人誌作りゆるゆるスペース」について、当日使用した原稿を元にnote記事にしました。

 録音を聞きながら振り返って頂ければ幸……


 ……と思ってたのに!!

 凍結祭りの憂き目に遭いまして!!!

 録音が!!消えてしまいました!!!!!!

 というわけで、残念ながら書き起こしは不可能となりましたが、当日使用した原稿をベースに再度、あの時お伝えしたかったことのうち、同人誌作りの基礎について振り返ろうと思います。

 今この時に「作ってみたいな…」と思っている文字書きさんの助けになれば!そして推しカプの同人誌がこの世に一冊でも多く生まれたら!(本音)というのが、スペース(この記事)の主旨です。

 当日ご用意できなかった段組サンプルなどもご用意しましたので、少しでも本作りの楽しさが伝われば嬉しいです。


【何からやったらいいんですか?】

スペース前に募集したマシュマロ


 で す よ ね !!!!

 まずは何をしたらいいか。
 全部自分で考える人、誰かから教えてもらう人、皆さまそれぞれあると思います。

 厳密に言えば印刷所の資料を集めて、イベントの申し込み方を調べて……と細かいことはたくさんありますが、今回はそのあたりの実務は省き、実際に「己が取り組むこと」に焦点をあてたいと思います。

 同人誌を出そうとしている、ということは、「小説を書いたことがある」状態だと仮定します。文章の長さ、既存作品の数は人それぞれですが、少なくとも「作品を生み出す」という点はクリアしているわけです。

 では、そこで何を考えるか。

 自分に「何が出来て、何が難しいか」を考えてみましょう。


 ひとつずつお話していきます。


①どれくらい書けるか


 文章量は、人それぞれです。同人誌を作るにおいて完全新作を書きたい人、過去作やワンライなどのまとめを作りたい人、色々います。
 ここで大切なのは「背伸びをしない」ことに尽きます。

 全部新作でなくてもいい、分厚くなくてもいい。自分がいつも通り楽しく書くことの出来る分量はどれくらいかを考えてみましょう。

 段組については後述しますが、小説同人誌で最も多いサイズである「A5・2段組」の1ページあたり文字数は、セリフや改行を加味すると約1000字前後で換算すると目安が立てやすいです。(実際は1300文字程度ですが、全行全文字数使う人はいないので)
 過去作で一番長いものやまとめたい短編の数から割り出し、+10P程度で計算してみましょう。

 そう、ページ数は、増えるのです……。


②いつのイベントに出るか


 同人誌を作るきっかけになるのがイベントの存在であることは多いです。
 フォロワーさんたちがたくさん出る、推しカプのオンリーがある等いろいろありますね。最近は投票で決まることもあり、楽しい世の中です。ヲタクは忙しい。

 原稿を進めている途中に満了したらとても悲しいので、参加を決めたら早く申し込むことをお勧めします。

 赤ブーブー通信社主催のイベントであれば自動生成がありますので、この時点でサークルカットはなくても大丈夫です。情報変更の締め切りだけ確認をしておきましょう。

 通販だけの頒布を選択される方も増えてきました。リアルイベントには行けないけれど作りたい、が叶うのが今の同人界です。ここで詳細は省きますが、イベント参加できなくたって作って大丈夫!

 自分に合った頒布方法を選ぶのが一番です。


③いつまでに仕上げればいいか


 大体の文章量とイベントが決まったら印刷所を探し、大体の締め切りと見積もりを取ることをおすすめします。
 原稿しながらぼちぼちでいいです。作りたい仕様は途中で変わります。情報をたくさん持っておきましょう。

 私がよく使う印刷所はこちらです。

HOPE21
 締め切りが超優しい。フェアで色々な紙を使える。いい子の入稿で装丁が盛れる。
サンライズオンデマンド
 仕上がりがとても美麗。オンデマ感が少なくて高級感ある。
STARBOOKS
 なんでもできる。すごくなんでもできる。ちょっと高い。段箱が可愛い。
金沢印刷
 オフセットだがフェア割引が大きく締切も優しい。特殊紙標準セット+送料3か所込み。段箱がつよい。

 各印刷所の締め切り情報は割と直近で出ることが多いので、情報を待つよりもスケジュール表から予想しておくことをおすすめします。

(例)HOPE21・ポケットセットの場合
 ◆通常締め切り:納品日の3日前
・早割25:+2日前
 →おおよそ1週間前が締め切りと計算します。

※夏冬コミケ、SUPER COMIC CITY等の大イベント前は締め切りが早まるので注意

 初めての同人誌作りの場合は特に締め切りまでの余裕を持ちましょう。
 不備があると、どれだけ手練れの同人屋でも慌てます。(すごく慌てます)

 特にデータ作成に慣れていない場合、どうやってその不備を解消するのかわからないこともあるので、締め切り1週間前には入稿できる状態にあると安心です。


④表紙などの画像回りが扱えるか


 小説書きが同人誌を作ろうした時に直面するのが「表紙」の問題です。
絵が描けないどころか画像すら扱えないが!?となる方も多いのではないでしょうか。
 しかし。表紙問題はいくらでも解決できます。大丈夫です。次項で詳しく解説します。

【文字書きの表紙作り問題】


 みんな知りたい表紙の作り方。
 できれば見栄えのするものがいい、でもあんまり難しいことはしたくない……
 そこで、今回は3通りの方法をご紹介します。

①表紙素材を購入する


 Pixivの連動サービスである「BOOTH」ではたくさんの表紙素材が販売されています。
 Webのフリー素材を集めて作ることも出来ますが、集めるのに時間がかかる割に慣れていないと思い通りに作れず時間を取られますので、こちらを利用することをおすすめしたいです。
 なんといっても同類が作っているので、痒い所に手が届きます。Web素材と違い、同人誌での使用がはっきりと許可されているのも安心です。


【BOOTHでおすすめの表紙素材屋さん】

Torido-ri
このはな素材屋
てんぱる

※「印刷用解像度」となっている作品を選びましょう!

 素材を購入したら、使用予定の印刷所のテンプレートをダウンロードしてサイズや位置を合わせ、文字を入れたり等していきましょう。

 ※塗り足し(印刷時の裁断ズレのために用意する枠)込みで作成されている素材であれば、そのまま入稿することも可能な場合があります。印刷所のデータ作成要項を確認しましょう

 文字入れはGIMP等のフリーソフトで十分です。

購入した素材に文字を入れただけの表紙
おしゃれでした(盛大な前ジャンルバレ)
字はiPadで書いた


②Wordで作る


 スペース終了後、「Wordで作れるよ!」とお友達から教えて頂いて目から鱗だった手段です。ご本人に詳細をお聞きしたので、ご紹介します!(Hさんありがと~!)

例)A5本、塗り足し5mm、背幅5mmの場合
・余白と用紙サイズを以下の通り指定します
(A4横+塗り足し+背幅分)

余白=塗り足し。今回は5mm
A4横サイズに上下左右5mmを足し、
更に背幅分5mmを「幅」に足します

・図形ツールを使用し、断ち切り線を作る。
 長方形を適当に描画→「図形の書式タブ→サイズ指定」でA5(210mm*148mm)に変更→余白に合わせて配置→上揃え→左揃えで表1側。
 コピペして右揃えにすれば表4側に作れます。

A5サイズに変更した後、①~③の手順で表1側の枠が出来ます。
表4側は図形をコピペしてから「右揃え」


・画像を読み込む
 1枚絵(写真)の場合は、読み込んだらドーンとはみ出るくらいの大きさのデータを使いましょう。拡大は粗くなるのでNGです。
 ワンポイント画像を配置していく場合は、「文字列の折り返し」を「前面」や「背面」にするといい感じに動かせます。

画像はUnsprashから持ってきました。どーん。


・テキストボックスやら何やらでタイトル等を配置

テキストボックスの塗りつぶしを半透明にするといい感じですね


断ち切り線を消去し、PDFで保存
 保存の際は「図の圧縮」「高画質」を必ず選択します。

見落としがちなんです
必ずここにチェックを入れてから保存


 これで完成!!

注)RGB入稿が出来ない、またはトンボ(裁断の目安線)必須の印刷所では受け付けられない可能性がありますので、印刷所の要項を確認しておきましょう。


③同人誌表紙メーカー

 これもお友達から教えてもらいました! か、神…!

同人誌表紙メーカー

 あまり使いこんでいないため詳細は今回省かせていただきますが、①で紹介した素材屋様(てんぱる様)が素材を提供しておられるようです。
 文字位置、フォント、背幅(!!!)、R18マークの有無(!!!!!!!!!)まで色々選べました。

か、かわいい~~!!!!!

④その他の話


・画像を扱うのは本当に自信がない、出来れば誰かに任せたい……
 →印刷所によってセミオーダー、おまかせデザインをやっているところがあります。ただし割高、締め切り早めです。似たような雰囲気になることも……。

しまや出版「セミオーダー」
プリントオン「わくわくドキドキデザインセット」
booknext:「イージーオーダー」

・画像回りはお品書き、値札等でいずれ使うことになるので、色々なツールを活用して自力でやってみるのが個人的にはおすすめです。
 作れるようになると楽しいですし、「作ったぞ~!」という喜びもひとしおです。

・小説同人誌の初心者が陥りがちな思考に「表紙にイラストがなきゃ見てもらえないのでは……」というのがあります。
 私も一番最初に作った同人誌で同じことを考え、どうにか自分で描いたものでした(はるか昔グラデ便せんの時代は絵描きでした)。

 では自分が同人誌を買う時、一番最初の動機はイラスト表紙でしょうか。
 答えは大多数の方が「NO」だと思います。

 もちろん華やかで目を惹くのは確かですが、「なければいけない」ものではありません。装丁やノベルティも同じです。
 近頃は特殊加工が少部数でも出来るようになっているため、凝った同人誌が増えていますが、それらは決して当たり前ではなく、出来る人・やりたい人がやっているオプションです。

 自分に出来ることのなかで無理のない範囲を見定めることが、結果的に余裕を生んで良い作品作りにつながると考えています。

【段組の話】


 ここからは段組の話になります。
 これはもう、書き手さんによって様々異なるため、試行錯誤が前提です。
 テンプレートは、最初は印刷所から拾ってきても構いません。そこからいい感じにカスタマイズしていきましょう。

 ……いい感じってなんぞ?

 さて、見つけていきましょう。

①検索する


 小説同人誌の段組について解説をしているブログやnoteはたくさんあります。「同人誌 小説 段組 A5」とかで検索するとヒットしますし、だいたいの方が実際の本を撮影して掲載しておられるので、まずは調べものあるのみ! です。
(この記事より詳しいものは山ほどあります)

 ……が、現物じゃないといまいち雰囲気わかんないなあ……という人は、次の手段はいかがでしょうか。

②手持ちの同人誌を参考にする


 宝の山は、そのまま良質なサンプルの山です。大好きな小説同人誌の中から、自分が作ろうとしているサイズの本を取り出してみましょう。
 あとは地道に文字数や行数を数え、余白を定規で測り、ノンブル位置を測り……と、アナログ作業をしていきます。
 ノド(とじしろ)は測りにくいですが、本を開かない状態で表紙の上から1行目はだいたいこのくらいかな~という位置を調べてみます。

 私は気に入った段組の同人誌に出会うといつもこれをやっていまして、その数だけテンプレを用意してあります。本文がちょっと書けた時点で流し込み、一番合いそうだなと思ったもので原稿を進めていきます。

③どうやって設定するの?


 ここがスペースではお伝えしきれなかった部分です。
 今回はA5・2段組でご説明していきます。

【前提】
・A5・2段組
・塗り足しなし、原寸原稿
 小説同人誌は本文が全てページ内に収まるため、漫画と異なり塗り足しは基本的に不要です。(画像を使用される等で設定されている方もいます)

①余白
 用紙の上下左右、ノド、小口部分の広さを設定します。

実際に使っている設定です

・上/下:文字通り上下の余白
・内側(ノド)/外側(小口):綴じる側に対しての内/外
・とじしろ:糊付けされる側の余白

 内側=とじしろではありません。内側15mmあるからとじしろいらないじゃん! ではないので要注意。
 内側の余白15mm、とじしろ10mm設定であれば、合計25mmが綴じ側の余白になります。

 ページ数が多い、用紙が厚い・固い、製本サイズが細い・小さい(文庫、新書等)は開きにくく、綴じる側が影になりやすいため、とじしろは多く設定しましょう。
 私はガバッと開くのが好きなので、余裕を持たせています。

前述の余白で作った本の実物

 この辺はずっと感覚で作っているので、間違ってたらすみません。
 各種記事が詳しいです。

https://mikan-no-ki.com/blog/000006/
https://rururu-p.com/article/1404
https://bloomblue.hatenablog.com/entry/2019/12/17/150458



②文字数と行数

 1段あたりの文字数と行数です。
 2段組の場合は、ここで「段数」も指定します。
 文章を流し込んだ状態で、イイ感じになるまで何度も設定してみましょう。
 Wordはたまに言うことを聞かなくなるので、元データを保存しておくのはお忘れなく。
 私は詰め気味が好きですが、地の文がこってりしているタイプでもありますので、話や登場人物、世界観によって多少変えています。

やや広めの設定
話が濃密だったので、あえて広めにしました
でもちょっと広すぎたかな…
こちらはかなり詰め詰め
カタカナが多かったので間延びしないように…
(盛大な前ジャンルバレ2回目)


 段の間にある空白も広さを設定できます。

段組み→詳細設定
「間隔」で調整します。
今気づいたけど狭いな???


 段組は非常に細かく、個人的な好みも大いにありますので、1文字・1行ずつじっくり検討していきましょう。
 ただ、細かいことを気にするのは多分、作っている本人だけです。あんまり気にし過ぎないように……。



③ノンブル

 フッターにノンブル(ページ番号)を入れます。
 テンプレートの作り方が「見開きページ」設定のため、ヘッダー・フッターは「奇数/偶数ページ別指定」が必要です。

位置やフォントもお好みで
下角に入れる場合、奇数ページは左下、偶数ページは右下にそれぞれ設定します


 フッターを設定したら、次はページ番号を設定します。
 開始番号は、「このファイルで開始する本文の位置」です。

「ヘッダーとフッター」「ページ番号」にあります

例)
 表1:表紙
 表2:表紙の裏
 3P:中表紙(別データ)
 4P:小説本文開始

 この場合、開始ページ番号は「4」になります。
 ページ数調整で中表紙や目次を追加した際は再度確認しましょう。
 ここを間違えると、とじしろが逆になります。

 とじしろが、逆になります。(大事なことなので二度)

 外側が広くなり、内側が狭くなるということです。
 私は過去2回ほどやらかしました。

右側が奇数になることはないんだよ!!!!(泣)


④フォント


 スペースを開催した際、「フォントは何を使っているのか」というご質問を複数頂きました。
 フォントはこだわれる部分でもありますが、同時に、きちんとしたものを揃えようとするとなかなか高額なものです。基本的には手持ちのツールに入っているものやフリーフォントで十分です。

 私はフリーの「IPA明朝」を使用しています。デフォルトの行間設定が広いため、そのままだと1段あたり10行も入らないので設定し直す必要がありますが、やや太めで視認性が高く、目の粗いラフ紙でも掠れず印刷されましたので非常におすすめです。

◆IPA明朝:https://moji.or.jp/ipafont/ipafontdownload/
◆行間について
https://fontdasu.com/2060

 なお、小説同人誌サークルさんが使われることの多い「オンデマンド印刷」は、やや文字が太ります。コピーすると原本よりも線が太くなって濃く見えるのと同じですね。小説とは相性が良いです。

MS明朝9pt、オフセット(金沢印刷)
華奢です
MS明朝9pt、オンデマンド(プリントオン)
ちょっと濃い


⑤禁則処理


 禁則処理とは、「行頭に記号(。、ー等)を置かない」等、禁止されている配置を避けるよう文字の位置を調整することです。
 また、行末に句読点が来た場合の「ぶら下がり(行末の下につける)」または「追い込み(字間を詰めて収める)」も含みます。
 ……多分。

 とはいえ、編集者でもないアマチュア字書きがここまで細かいことを考えながら書く必要はないですし、私もだいたい聞きかじりです。
 いっちょWordにおまかせしましょう。

◆禁則処理について
http://dtp.screen-cre.co.jp/dtp0007/

 「禁則処理:高レベル」に設定しておけば大体のことは大丈夫です。行末のぶら下がり/追い込みも、同人誌レベルであれば「句読点が行頭に来なきゃいいや!」くらいで問題ありません。
(参考までに、私は「追い込み」です。はみ出すの好きじゃなくて……)


⑥その他細かいこと

・段落の冒頭字下げ
・三点リーダ(…)は2つセット
・感嘆符の後には全角スペース
・「!!」等の感嘆符2つは「縦中横」
・セリフの前後に空白行を入れない

 プロの校正を受けるわけではありませんが、文章を書く上での基本的な決まりごとを守ると、文面がきちんと整って見えます。Webでの執筆に慣れていると、特に上記の最後二つについては、Webならではの癖がついている場合もあります。
 堅苦しいことではなく、読みやすさという観点から、こちらについては気に掛けながら原稿を作ることをお勧めします。

Webに慣れると縦中横は忘れがち
「すべて適用」で後から一括変換も出来ます


【ほかにも色々あるけれど】


 表紙のめどが立ち、イベントも申し込み、原稿も書けて……の後には印刷所への入稿、お品書き、値札、机に敷く布……色々出てきます。
 今回の記事ではあくまで同人誌本体の基礎的な作り方についてのご説明ですので割愛させていただきますが、そうやって次々と現れるハードルも、その先に「自分の本」が出来上がるというゴールがあります。
 大変なことも多いけど、越えていくのは「ムリではなくムズカシイ」です。(エースの心得)


 いかがでしたでしょうか。

 同人誌を作り始めて約9年、ほとんど我流でやってきましたので、手練れの方から見ると変なところもあったり、間違いもあるかと思います。また、この記事が作り方の全てでもありません。

 ただ、この記事が「作ってみようかな……」と思い始めていた方の背中を押せたなら幸いだなあと思っています。

 実際のスペース後半では創作活動についてもお話しましたが、記事の主旨とズレますのでそれは別途いずれまとめるか、またスペースの開催が出来たらいいなと考えています。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

9年分の同人誌です!!

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