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「何聴いてるの?」 - 2023年1月

なんで3月に公開してんねん

Spotifyの視聴経歴が分かるアプリ、Spotistatsからその月の再生ランキングの30位内の10曲を選んでいる。1月リリースの作品には(新譜)(新曲)を付けている。

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1. バイバイ / 礼賛 (新譜)

予想以上にラランドのサーヤが上手すぎて何も言えなくなってしまったバンドこと礼賛。サーヤのTENGAラップとか普通に上手かったもんね…。楽曲のクオリティはバックバンドが「ぼくのかんがえたさいきょうの」状態なので言わずもがな。しかし主な作詞がサーヤだから、川谷絵音だと組み合わせなさそうな組み立て方で面白い。M2「Damn it!」のオーシャンズ11の韻だったり。でもアルバム3曲目にして「愚弄」みたいなヘロヘロ曲を入れてくるのは川谷絵音感がある。個人的にはDemoとして初期から配信されてたM6「バイバイ」が大好き。「前よりはちょっとは嫌いだよ」って言い回しがジェニーハイ「まるで幸せ」の雰囲気と似てるなと感じて、調べるとどちらも作詞が川谷絵音で笑ってしまった。ちゃんと見分けが付くくらい川谷絵音を好きで笑ってしまう。ところで僕がもし女の子だったらサーヤを見ては憧れながら歯ぎしりしてそうな気がする。何なんでしょうあの感覚。皆さんはどう?

2. Radio Shack / Cory Wong (新譜)

昨年行われたCory Wongのツアーライブアルバムより。もはや聴き過ぎて彼が弾くギターを歌えるようになった。Cory Wongの弾くギターって歌っているように聴こえる。だから自然と口ずさめちゃうのかな。前半を引っ張るCory Wongのギターに追随するように入ってくるバンクバンドのホーン隊、まさに追いつけ追いこせのような疾走感あるアレンジになっている。Vulfpeckでもともとリリースされた時はゲーム音楽のようなチープさが面白い曲だったけど、こんなにもライブ映えするとは。正直このライブアルバム、「音楽は楽しい」を本当に地でいく、聴いているうちに自然とニヤニヤしてしまう作品。聴いているうちにライブの持つパワーは神聖幾何学みたいで言葉で説明できない魔法だと実感する。それは彼もインタビューで「特別」としか言えてなかったから、多分そういうもの。

3. 火をつけて / さらさ

2022年12月リリースだった湘南出身SSW、さらさの1stアルバム「Inner Ocean」より。「火をつける」はどういう意味なんだろう。冷え切ったものを新たに燃やすのか、それとも全てを無くすために燃やすのか。聴き手によってハッピーエンドにもバッドエンドにも聴こえそうな音楽。「今は踊ってもいい? ちょっとだけ待って」というラストの歌詞にも全てが委ねられている気がする。それにしてもこんなインディーにも、大衆にもウケが良さそうなSSWを久しぶりに聴いた。SSWは大体、時間の経過や知名度を得るごとにどちらかに寄ってしまう気がするので。でも彼女はそのバランスを上手く保っていきそうな気がする。2023年、一気に跳ねそうなアーティストの1人。あと個人的にここ最近のアートワークで一番好き。こういうアルバムを飾りたくなる。良い表情している。

4. 季節の果物 / カネコアヤノ (新譜)

今や飛ぶ鳥を落とす勢い(というか熱狂的なファンがますます増えている)カネコアヤノの待望の新作から。「季節の果物」はその中でもかなり尖っている歌詞な気がする。「海にはなりたくない」「全てへ捧ぐ愛はない」なんて、彼女を狂信的に慕っているファンがSNSでつぶやいていることの真逆で笑ってしまった。みんなそういうことつぶやいてるじゃん。愛とか海のきらめきがなんだとか。(あくまで個人的にです。僕もカネコアヤノ大好きです、殴らないで)。それでいて、愛の尺度が「あなたと季節の果物をわけあう」なのが本当にいい。これってみんなが信じていたいし、ちょうど求めてる大きさの愛だと思う。愛の展示場があったらモデルケースとして飾ってあるような。全てが俺みたいな人間のドツボを突いてくるから彼女が好きなのはやめられないし、これをファッションとして消費するのは本当にもったいない。怪文でした。

5. 透明な箱 / PENs+

昨年末にPENs+でギター・ヴォーカルを務めているリオさんに会う機会があった。初めて会ったのは僕が中学生の時の閃光ライオット。会ったと言ってもリオさんからデモを買ったぐらいのことだけど、まさか10年経ってロンドンで会うことになるなんて、人生何が起きるかわからないものだ。物腰柔らかで軽やかで優しい人だった。しかしその言葉の節々は静かにふつふつと燃える青白い炎のような信念があって「こんな人になるためにはどうしたらいいのだろう」と素直に憧れてしまう強さがあった。その日以降、この「透明な箱」の聴こえ方はまるっきり変わった。「本当は僕も綺麗でいたい」という絞り出すような歌が、身勝手な憧れだけでいちゃいけないんだなと思い出させてくれる。完璧なイメージは僕が勝手に思い描いていただけだが、その何倍もカッコいい人だった。6. National Team / Hotel Lux

7. True Blue / boygenius (新曲)

Julien Baker、Phoebe Bridgers、Lucy Dacusによるスーパーグループ、boygeniusの公開した新曲から。「生きてる実感が欲しいって言ったから だから海へ行った」って歌い出しに惹かれないわけがない。曲中に出てくる「あなた」は何らかの出来事でもうきっと会えることのない人なんだろうと思う。だけど、その人へ注いだ愛や、「あなた」といることで自分らしさに気づけたことは否定せずに、過去のことにできる再生の歌のように感じて、とても清々しい気持ちになった。それこそ寄せては返す波のようなゆらめきがある曲だと思う。同じ形の波は2度と来なくても、海だけはそのままであり続けるような。本当に彼女たちのアルバムが楽しみ。ロンドンにも夏に来るらしい。絶対観にいきたい〜。

8. 終わり / SHISHAMO (新譜)

SHISHAMOが10周年を記念するベストアルバム「恋を知っているすべてのあなたへ」をリリース。「終わり」は2017年リリース「SHISHAMO4」からの選出。このアルバムからSHISHAMOの恋愛ソングの年齢が上がったような気がした。「SHISHAMO3」までの手を繋ぐか繋がないかの甘酸っぱい距離感だった歌詞が、4からはストレートに触れることはせずとも男女の情事に触れるような背伸びした曲が増え驚いた思い出がある。「あなたの特別でいることが 私を生かしていたから もう意味ないなぁ」という歌詞とラストの「私の特別である事は これからも変わらないから」のコントラストがただただ切ない。相手が自分の中のすべてという、恋愛においては脆くアンヘルシーな関係性をここまでリアルに描いている宮崎朝子のソングライティングに脱帽してしまう。ただ彼女の作る恋愛ソングは、どれだけ幸せだとしても絶対に終わる前提で書かれているような気がするからこそ素晴らしい。

9. S区宗教音楽公論 / PK shampoo (新曲)

待ちに待っていた彼らの新曲は上京がテーマ。でも「西武新宿、死のうと思った」から始まる上京の曲なんてあっただろうか。ヤマトパンクスの作る音楽はバッドエンドほどの大袈裟さは無くともビターエンドが多い。一昨年の冬に完璧な1stフルアルバムをリリースしてから、ライブは行っていてもリリースの話が全く出て来なかった彼ら。実はマネージャーが飛んでしまい、バンド活動どころでは無かったらしい。ヤマトパンクスに至ってはCDの印税すら受け取っていないと話している。こんな話、どっかの山田亮一でも聞いた。でもただただ酒を飲んでいるだけじゃなかった。SNS上でのキャラクターと作る曲の振れ幅にいつも驚いてしまうが、やはり泣きメロの天才だと思う。そもそも僕が勝手にビターエンドと思っているだけで結局はハッピーエンドの曲なのかもしれない。叶わなかったことや過去の思い出はいつでも美しい。

10. 光の庭と魚の夢 / Homecomings (新曲)

初披露は2021年のクリスマスライブ「Garden With A Holy Light」のWアンコールだっただろうか。そこで聴いて以来、まだかまだかと心待ちにしていた「光の庭と魚の夢」が2年を経てついにリリース。「誰もがありのままで一緒にいられるようになって欲しい」というステートメント通り、聴くたびに心の重荷が降りるような曲になっている。さっそく感覚的な話になってしまっていたが、突筆したいのはくるりの岸田さんが手がけたという派手過ぎず体温に近いようなストリングスのアレンジと福田さんの緩やかにどっしりと構えたベースライン。そして畳野さんが歌うメロディーは普段の曲よりも幾分か高いように感じた。そのおかげで内から外に広がっていくような心地良さが曲を包んでいる。日々の中で心がもやもやと暗い感情に陥った時には、このお守りのような曲がきっと自分の手の中にあるはず。「光の庭、そこで待ってて」という歌が自分を暗い場所から明るい場所へと引き戻してくれるだろう。

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遅すぎました。ははは。

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