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出処不明の文章。その続きに思いを馳せる。

学生の頃、見惚れたセリフなり文章なりを、ハードカバーのノートに書き留めていた。
いま思えば、記録する行為より、モレスキンのノートをそうして使っていることに悦に入っていた様が、寒々しく、小っ恥ずかしく、かえって懐かしくもあり……

出展を添える決まりにはしていたのだが、中には出処不明の迷い子もいる。
たまに読んでは、「これかしら」と当てずっぽうなひらめきに満足し、腹の底から湧くノスタルジアをアルコールで流し込む。

ただ、生まれを諦めきれぬ孤児もいて、この扱いにどうも困っている。

孕みから身二つに
身二つからもの思いに
もの思いから思い出に
思い出から気づきに
気づきから望みに

私は好んで詩を読まないので、何かの小説で引用された一節であることは確かだと思う。
前後も分からぬから、この文章のどこを愛おしく感じ、あるいはこのとき何を思い悩んでいたのか、不安だけが記憶を上書きしていく。

ならば、その続きに思いを馳せ、このみなしごに、義理でも構わないから親を与えてやろうと思った。

孕みから身二つに
身二つからもの思いに
もの思いから思い出に
思い出から気づきに
気づきから望みに
望みから永遠に。
――太陽と番った海に。
     (ランボー)

(文・GunCrazyLarry)

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