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『就活の神さま』の連載がはじまります

就職氷河期のことを真正面から書いてみよう。そう思ったのは、一年前のことでした。

その日、私は上海出張に行く飛行機の中にいて、ビジネス誌の採用特集を読んでいました。バブル期に次ぐ売り手市場であるとか、5月には多くの学生が内定を手にしているとか、そんな文字を目で追ううちに、言いようのない思いがこみあげてくるのを感じました。なんだろう、これ。嫉妬だろうかとも思ったのですが、どうやら違うようです。

小学館の文芸誌「本の窓」の編集長から「うちで連載をしませんか」と持ちかけられた時、私はいくつも仕事を抱えていました。それでも断りきれなかったのは、その編集長がバブル世代の方だったからです。就職氷河期というテーマをやるなら、バブル期の就職活動を知っている編集者と組むしかない。これを逃したら、もう機会はないかもしれない。

主人公は2002年卒の女性会社員です。就職超氷河期に社会に出た彼女が採用係長になったら、熾烈な学生争奪戦にどう挑むだろうか。そんな想像をしながら、プロットを作っていきました。

そうして生まれた新しい小説が『就活の神さま』です。8月20日発売の「本の窓」に第1回が掲載されます。

全10回になります。ぜひお読みください。

この連載の準備をしている最中、『わたし、定時で帰ります。』のドラマがはじまりました。それに合わせて書いたエッセイでも、就職氷河期世代としての思いについて語っています。

『わたし、定時で帰ります。』はゆとり世代のある問いから生まれた

「人生再設計第一世代と呼ばないで」ドラマ『わた定』原作者の思い

当時のことを書くのはつらかったです。でも、主人公の北条優花は私とは違う人物。
彼女がどんな決断を重ねていくのかは彼女自身に任せたいと思っています。