ナショナリズムに関するあれこれ

オリンピックとナショナリズム

「国際スポーツイベントでは、ネイションの境界線を暫定的に「確定」し、「どこからどこまでが自ネイションなのか」を視覚的に提示することが競争の前提になっている。その結果、それを観戦する者たちは、自分がどのネイションに所属し、誰が「我々」であり、誰が「他者」であるかを視覚的に認識する。このようにスポーツは、人々の想像上の構築物にすぎないネイションに対して、疑似的な「実体」を与える。」(笹生 p92)

笹生心太. "スポーツと 「認識的ナショナリズム」: 先行研究のレビューから." 紀要 55 (2020): 91-100. 

>64年の東京オリンピック

「国際社会への復帰を人々に印象づけることによって、戦前の負の記憶を払拭し、日本人としての誇りを取り戻すひとつの重要な国家的イベントとなったとされる。」(坂上 2019 p19)

・ナショナル・アイデンティティの再構築

・オリンピックの成功体験により「神話化」

坂上康博. "1964 年のナショナリズムと東京オリンピック: 文学者たちの言説をめぐって." 一橋大学スポーツ研究 38 (2019): 19-34.

コロナとナショナリズム

"However, there are 4 aspects, examined in the article, that might be shaped by the pandemic. These include the recent trajectory of nationalism and its social relevance prior to the pandemic, the rise of authoritarianism as governments suspend or reduce democratic freedoms and civil liberties, the rise of biases against some groups associated with the pandemic, the rise of borders and deglobalization, and the politics of fear. Thus, while the rise of exclusionary nationalism might not be the inevitable consequence of the pandemic, it risks reinforcing preexisting nationalist dynamics."(Bieber 2020 p1)

Bieber, Florian. "Global Nationalism in Times of the COVID-19 Pandemic." Nationalities Papers (2020): 1-13.


マスメディアとナショナリズム

ナショナリズムの生成および再生産の過程において,マス・メディアは主に以下の四つの役割を果たすと論じられてきた。まず第一に,「国益」の追求や国民共同体の称揚を行う主張や運動の促進である。第二に,「国民の物語」の普及とそれに伴う集合的記憶の蓄積である。第三は,国民文化の形成
であり,マス・メディアは国民の間に共通の慣習や価値観,身体的規律を普及させることで国民統合に寄与するとされる。そして,第四の役割が,国民共同体に関する認識枠組みの形成である。(津田 2007 p202)

津田正太郎. "ナショナリズムの生成および再生産過程におけるマス・メディアの役割: ナショナリズム概念の再検討による新たな視座の探求." マス・コミュニケーション研究 70 (2007): 195-211.


津田正太郎. "シチズンシップ, ナショナリズム, マスメディア: シニシズムの克服による共生の実現." 社会志林 60.2 (2013): 45-65.


認識的ナショナリズムと理念的ナショナリズム

「認識的ナショナリズムとは,見ず知らずの人びとを文化や言語等の共通の属性を有する「同胞」として想像し,そうした同胞の集合を明確な境界線を有する単一の共同体と見なす認識の様式のことを意味する。(中略)ただし、国民共同体のような巨大な集合体が実際に想像される際には,国旗や国歌といったそれを表象するシンボルが重要な役割を果たすことになる。(中略)そこで本論では,それら特定のシンボルを国民共同体と関連づけて認識することも,認識的ナショナリズムに包含することにしたい。」(津田 2007 p199)
理念的ナショナリズム:「この概念には国民共同体にとっての利益,すなわち「国益(national interests)」の実現を訴えるあらゆる思想や運動,さらには国民共同体の過去,現在,未来を称える言説が包含される。従って,このような理念的ナショナリズムは,認識的ナショナリズムを土台としつつも,人びとの思想や行動をより深いレベルで規定することになる。」(津田 2007 p200)

→それぞれに自覚的/無自覚的という下位区分を導入

津田正太郎. "ナショナリズムの生成および再生産過程におけるマス・メディアの役割: ナショナリズム概念の再検討による新たな視座の探求." マス・コミュニケーション研究 70 (2007): 195-211.


若者世代のナショナリズム

吉野耕作. "若者の 「右傾化・保守化」 とナショナリズム." 年報社会学論集 2007.20 (2007): 2-12.

「日本の戦争の加害性を「恥となるような歴史」と考える政治主導により、
歴史教育が「忘れない責任」「繰り返さない責任」という考えに及ばないのである。」(源 2017 p120)

源淳子(2017)「戦争の語りと現代若者の戦争観に関する研究(3)大学生からの聞き取り : 「 慰安婦 」 問題・南京大虐殺について」『関西大学人権問題研究室紀要』73巻,97-122頁。

国家イメージ

大坪寛子. "日本および関係国のナショナル・イメージについての世代別検討." 三田社会学 16 (2011): 52-72.

ナショナリズム論の学者

(順不同)

小熊英二、津田正太郎、ベネディクト・アンダーソン、吉野耕作、マイケル・ビリグ、北田暁大

課題

・国家(君が代)、国旗掲揚とナショナリズム → BilligのBanal Nationalism

・「愛国ごっこ」[香山2002]、「漂白されたナショナリズム」[杉本2003]

・新自由主義とナショナリズム

・ポピュラーカルチャーとナショナリズム(椎名林檎、ゆずの靖国の歌、RADWIMPS…)

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