公共性に関するあれこれ

・CSR(Corporate Social Responsibility)

事業活動を行なうだけでなく、人権やコンプライアンスの遵守、環境問題への配慮、地域社会との共存・貢献といった企業が果たすべき社会的責任を指すビジネス用語。

上場企業や株式会社はビジネスの規模が大きくなるにつれ社会的な影響も拡大する。そのため、会社の利潤を追求するだけでなく、社会的責任への説明責任が求められるようになる。その一方で、CSRの重視は、企業経営の見直しや組織力の向上、経営の効率化、リスクマネジメント体制の構築にもつながるとみなされている。

グローバル時代に突入している現代社会において、海外展開を目指す企業も多く、海外進出に必要不可欠といわれるダイバーシティやグローバル人事にも対応したCSRの需要が高まっています。

・CSV(Creating Shared Value)

「社会課題に取り組み、社会が求める新たな価値を創出することで、経済的利益も創出される」という考え方を採用したビジネス活動全般を指します。(中略)CSVの活動内容は地域社会への貢献・支援活動にもつながりやすく、CSRとの共存が可能です。今後、経済のグローバル化が広がる中で、国際競争力を強化する上でも欧州型のCSR戦略を打ち出すことが重要な経営課題となると予想されます。

参照:CSRとは?意味(定義)や事項、メリット、作り方から企業事例までご紹介 | BizHint(ビズヒント)- クラウド活用と生産性向上の専門サイト. Retrieved 14 December 2020, from https://bizhint.jp/keyword/136985

・ノブレスオブリージュと同一視されていた(「経営者の」果たすべき社会的責任。理想論的。)→90年代ごろからビジネスとCSRの両立が検討され始め、2000年代にはビジネスとCSRが統合した戦略的CSRに(ステークホルダーとの対話や協働を通じた戦略性の向上を重視)(倉持 2018)

・リスク管理の一環としての「社会的責任」…消費者や市民の意識が成熟することで、NGO団体・市民団体の企業に対する監視の目が強まっている。CSRを意識することはビジネス的に重要。

・従来行われていた地域社会への貢献に加え、人権・コンプライアンスの遵守、環境問題への配慮など範囲が拡大。国や地域などによって企業に求められるCSRは異なる。

・「世界規模で全ステークホルダー(従業員や消費者を含む)が納得できるものを構築しなければいけません。」→そのようなものが可能か

・倉持一. "戦略的 CSR が創り出す公共性に関する考察─ ハーバーマス公共性理論と新しい公共との比較を通じて─." 東北公益文科大学総合研究論集: Forum 21. No. 35. 東北公益文科大学, 2018. 

公共性とは

村上弘「公共性について」

・公共性の定義を非常にわかりやすく解説。政治や社会学、経済学、法律などあらゆる側面から検討している。論文中では「多くの市民にとっての利益」としての「公共性」が検討されていた。私性と公共性を分離している点でヘーゲル的だが、もっと広義の「公共性」があるのではないか。(言論と公共性、コミュニケーションと公共性の関係の検討の必要性)

橋爪大三郎「公共性とは何か」

・「公共性の概念は,ある問題領域が不特定の人びとに開かれているところに成り立つ」と包括的。

ハーバーマス公共性理論

・「街角のコーヒーハウスやサロンといった身近な場所で文芸的公共性として産声を上げ、政治的公共性へと転化することで発展してきた市民的公共性は、近代化と資本主義の浸透と共に崩壊し、国家や経済の権威が展開される場へとその姿を変えていった。この社会構造変化を、Habermas(1990)は特に「公共性の構造転換」と呼び、公共性を論ずる上で極めて重要な現象だと指摘している。」(倉持 2018)
「主に近代化を原因とした公共性の構造転換が生じたことによって、我々の暮らす市民社会は経済という名のシステムに侵されてしまい、貨幣を権威媒体とする経済的成果主義の空間へと大きく変質してしまったのである。それと同時に、企業は国家と並ぶ権力機関の性格を帯び、市民社会の支配者となった。以上のとおり、彼の主張に基づけば、近代は経済的成果主義の社会であり、企業は貨幣を媒体として市民社会を支配する存在へと配置される。従来、市民社会の手中にあった公共性はすでに失われ、市民社会は、国家や企業の下僕と化している。」(倉持 2018)

公共性・コロナ禍・倫理学

京都大学が提供するオンライン講義シリーズ「立ち止まって、考える」

本講義シリーズでは、コロナパンデミックに直接間接に関連する内容の特別講義を通じて、アフターコロナの社会を見据え、広く、深く考えるための視座を社会に提供します。

参照:https://ukihss.cpier.kyoto-u.ac.jp/1669/

コロナ禍・監視社会

【小笠原みどり】コロナ危機を新たな監視社会への序章にしないために:朝日新聞GLOBE+. (2020). Retrieved 14 December 2020


課題

・グローバル化、ダイバーシティ、サステナビリティ など「っぽい」横文字…社会的責任のファッション化、トレンド化?、そうしたカタカナ語でファッション的に消費されることで(一過性の流行のようにもてはやされることで)見落とされてしまう(取りこぼされてしまう)議論とは

・社会的責任とノブレスオブリージュ、「責任」と「嗜み」の差、責任を果たすことができるというのもまた上級階級の特権では

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