2020・9・5


先日読んだ記事ではKpop男性アイドルがアメリカの「男らしさ」の文化にもたらした動揺と、それらがもたらすかもしれない変革の可能性について述べられていた。ちょうどタイミングよく、BTSの新しいシングル「Dynamite」がビルボードで全米初登場1位を飾ったという知らせが入ってきたところだった。物珍しさからくる一過性のブームで初登場1位がとれるほどアメリカのランキングは甘くない。一度一位をとれば一生遊んで暮らせるという話すら聞いたことがあるくらいだ。熱狂的なファンダムの域を超えて、一般のリスナーにもKpop文化が享受されつつあるフェーズに突入しているのだなあという印象を受けた。

では、数年前の状況はどうだったのであろうか。リンクを張ったのは、2013年のコラム記事である。やはり、Kpop男性アーティストの「男らしくない」見た目について、アメリカにおける理想的な「男らしさ」の像とかけ離れているために反発があるということが記されている。

一方の韓国においては、Kpopアイドルたちは魅力的な男性の典型として語られるが、そのタイプは大きく「Flower boys」と「Beast idols」の二つに分けられる。「Flower boys」はかわいらしく、フェミニンな見た目をしているグループ、「Beast idols」は野獣のようにマッチョなグループを指す。TEEN TOPに代表される「Flower boys」は、かわいらしい振り付けと若さと純粋さを強調したような演出が特徴的だが、リリースを重ねて「成長する」に従って、「タフ」で「男っぽく」変容していくという。こうしたグループの方向性の転換はジャニーズにも共通するものであると感じた。一方の「Beast idols」は、「ギャングスタ」やヒップホップのテイストを取り入れ、 激しいダンスと、ダークでダメージの施された衣装が特徴である。彼らのパフォーマンスは、アメリカのステレオタイプ的な「男らしさ」、タフで荒々しい「男らしさ」に近い。2PM, BEASTや B.A.Pが代表的なグループである。曲の歌詞やコンセプトも過剰なまでに力強い男らしさを誇示しているように思われる。ただし、TV番組などでパフォーマンスする際は、好感の持てる青年のようなヘアスタイルやカラフルな衣装など、PVよりも荒々しさ控えめの恰好でパフォーマンスする。つまりは「Flower boys」にしても「Beast idols」にしても、アメリカ人の想定する理想的な「男らしさ」とは程遠いわけだ。

ところで、Kpopにおける「男らしさ」は、一枚岩的ではなく複合的なものである。「ターミネーター」のシュワちゃんの鋼の肉体に代表されるような欧米のステレオタイプ的「男らしさ」&優しい外見に強い意志を持つという儒教的な理想に代表される韓国の「男らしさ」、Kpopアイドルグループの成功に見られるのはこれらの融合だという。フェミニンな見た目の一方で、典型的な「男らしい」男性性を内面では保持する。もしくはキュートな仕草と優しい性格で人気のアイドルが、見事に割れた腹筋など、その優れた身体性で「真の男性性」を誇示する。そうした「男らしさ」のバランスで人気を得ている。記事では、Kpop男性アイドルに必要なものは完璧なダンスでも流ちょうなラップでも力強いボーカルでもなく、「完璧なジェンダーパフォーマンス」であると書かれている。例えばBIG BANGは楽曲やMVでは力強くヤンチャなイメージを売りにしているが、TVでは31アイスのCMに出演したり女性グループのダンスをパロったりといったよりソフトなイメージを演出している。「flower boys」と「beast idols」の間のバランスをうまく取っていることが、彼らの人気の秘密だとかなんとか。



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