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キククスリ④ボーダー

ボーダーとは、リストカットの跡のことだ。
そのときのことと、生きてきて今思うことを、ありのまま書いた。
この生々しい歌詞を、弾き語りで表現するのは難しいと思った。
もっと、角をとって、音楽性で包み込みたかった。

そこで編曲をお願いしたのが大分のSENSE 峯野耕一さんである。
以前、峯野さんの作品に歌入れをしたのがきっかけだった。

大分にある鉄板kaiseki叶羽さんのPR動画楽曲「TOWA」を歌わせていただいた。
最初に聞いた感想は「おしゃれ・かっこいい」だった。
コード展開とシンセの音、ギターリフなど、自分ではできない世界線だけど、
こんな歌も作りたいと思っていた。
シンプルな4コードで作られた「ボーダー」のループ感も、なんだか峯野さんのアレンジがばっちりくる気がして、編曲を依頼した。

そして素晴らしい最初の音源と、メッセージが届いた。

曲のメロディや歌詞から、インスピレーションを受け、 曲の構成を考えましたが、歌詞は過去を思って今があるのは、 あの時、死に切れなかったから、だからそのことを今では感謝してるという フレーズから、バックの音楽は、その当時の苦しさや迷いとかが、 錯綜するような情景で色々な音で音符を錯綜させてます。 バックサウンドは、葛藤的な音がぶつかり合い、その前でボーカルが、 信じてほしいという歌詞を走らせています。

ここまで私に、歌詞に、寄り添ってくれて編曲してくださったんだと、泣きそうになった。
歌詞に込めた思いがさまざまな音に落とし込まれていて、さらに言語化できていなかった感情も表現されていた。
私の心にあるもの、あったものをそのまんま、全く濾過せず取り出して音楽にしたみたいだった。

そして、この楽曲にはもう一人素晴らしいアーティストが参加している。
「ボーダー」の最初の音源では間奏にギターソロを入れていたが、
ここにラップを入れてもっと優しい楽曲にしたい!と、ある日思った。

そこでまっさきに頭に浮かんだのがラッパー・Mouthpeaceさんだった。
というか、Mouthpeaceさんのラップが間奏にはいったらいいなと思ったのが先かもしれない。

Mouthpeace
熊本県熊本市在住。
酒場通りでBARを経営する傍ら、音楽活動を続けるラッパー。
活動歴約25年。県内外のミュージシャンと楽曲を多数製作。
先月には熊本市在住のミュージシャン、しみずけんた氏との合作「Relax」を発表したばかり。

最初の出会いはラジオ収録。その時にBARちんまり堂をされていると聞き、飲みに行ったのが仲良くなるきっかけだった。
私はラップをあまり聞かないが、Mouthpeaceさんのラップが好きだ。
なんさん、声が優しい。ポエトリーリーディングというラップらしい。
ずっと、いつか一緒に作品を作りたいと思っていた。

元々あった私の歌詞に、Mouthpeaceさんが歌詞を書いてくれた。
とっても優しくて、寄り添う歌詞。
「頑張り」で韻を踏めるところをあえて「踏ん張り」と表現したと教えてくれた。
「ボーダー」は頑張れなかったときの歌だ。
そこまで汲み取ってくれたMouthpeaceさんに感謝しかない。

こんなお二人が楽曲にしっかり向き合ってくださったおかげで、「ボーダー」はものすごい完成度になった。
歌を、ラップを、そして100トラックを超える音を、ぜひ浴びてほしい。

次の楽曲はギターとヴァイオリンの切ないバラード、「灰色」である。



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