フリーランスが安いギャラの仕事オファーを断るにいたる経緯

先日あるクライアントから久しぶりに連絡があり、年間仕事の打診を受けたものの、お断りをした。
私がフリーになって最初に仕事のオファーをくれたクライアント。
でも、その後さまざまな「大人の事情」や「忖度」で、決まっていた私を「今回は遠慮してほしい」と切った組織。
ショックを受けた。悔しかった。その時期空けていたスケジュールや、収入の算段が宙に浮いた。
それでも、捨てる神あれば拾う神ありで、その時空いたスケジュールにぴったりと別の依頼がはまって、しかもギャラは3倍だった。

あの後から、私はそのクライアントに「尻尾をふる」ことはやめた。
適正なギャラで依頼をしてくれるクライアントが増えてきたのも幸いだった。私は安いギャラで義理立てをせずとも、暮らしていけるようになった。

今回の依頼を断った理由は3つ。

ギャラが安い。
同業他社の1/4程度だった。ギャラの安さを理由に断るほど偉くなったの?とクライアントには思われるかもしれない。フリーになって右も左もわからないあんたを使ってやったじゃないの、と。
でも、「義理」を建てるというなら、適正なギャラで私に依頼してくださるクライアントにもフェアでなければならない。
この業界を代表する規模の企業からの仕事は、箔付けにはなるかもしれない。でも、安いギャラで使えるとそのクライアントが勘違いをし続けることに手を貸したくない。やりがいの搾取に、私はもう加担しない。

「安いギャラで引き受けるやつがいるから、クオリティが下がるんだ」
と言った人がいた。
安いギャラで引き受けている人は、クオリティが低かった。
私は、もっと上手くなりたい。実力をつけて、クライアントの要望に応えたい。
だから、不当に安いギャラの仕事は受けない。

納期が短い。
仕事量としては無理のない範囲だったけれど、最初の納期がちょっと短いと感じた。他の誰かに断られたから、あわてて私に打診してきた可能性がある。他人が蹴った仕事を拾うのも、気分は良くない。蹴った誰かに「あの人、あんな安いギャラで引き受けたのね」と笑いものにされる。その評判は必ずひそかに、陰で広まる。それは私にとって、不利なことだ。

決まっていた仕事を引きはがされた時の恨みは、忘れない。
このクライアントのために空けていた時期に、破格の、これまでにない経験となる仕事を依頼されたことも、ひとつの教訓になった。
あんな安い仕事が決まらなくてよかった。あれを受けていたら、この仕事はできなかった。

「ご提示いただいた条件では受託いたしかねます。またの機会に、どうぞよろしくお願いします」

メールを受信してから3時間後、短めに返信をした。

もう二度と、このクライアントから依頼はないかもしれない。
でも、恐れることは何もない。
世の中には、正当な価値を真剣に考え、予算の中で良いものを造ろうと切磋琢磨するひとたちは、まだ沢山いるから。
有名企業にはいない、まじめで面白い人たちが。