コスト増加のツケ~どう頭を使ってソフトをつくるか~

メイザースぬまきちさんがステキなツイートをされている。

エロゲの場合は、まだ世間で思われている以上に市場は残っているんだけど、そもそも儲かっている頃から売れる都度色んな手段でユーザー還元したり利益低くしてできるだけ内容詰め込んだりとかして会社の体力を残さない方向にしてきたツケがあって、いち早く死屍累々になっている感ある

おっしゃる通り!

「利益低くして」というのは、たとえばボリュームインフレーション。シナリオ容量を上げてコストを増やしても、売り上げが変わらなければ利益率は低くなる。イベントCGのボリュームをどんどん上げてコストを増やしても、売り上げが変わらなければ利益率は下がる。

擬似アニメーションにしてもそう。擬似アニメーションを導入しても、アニメーションの費用以上の売り上げが入らなければ、結果的にマイナスとなり、利益率を下げることになる。

そして、ソフトハウスの経営を資金的に圧迫する。費用というのは、ただ金銭だけでなく時間も入るので、擬似アニメーションの制作に時間が相当かかれば、それ相応の売り上げが必要になるわけで、売り上げが想定未満ならば利益率は低下することになる。

そういうことがわかっていて、「擬似アニメーションが業界の標準になるのはまずい」「擬似アニメーションがソフトハウス全体に導入されるというのは避けねばならない」ということを乳之書で書いた。2007年の記事だね。ぼくは「業界全体で標準化されてしまった時に、擬似アニメーションを商品から外すことができなくなり、それが資金的に圧迫する」という状況を危惧していた

擬似アニメーションについては、幸い落ち着いてくれたようだ。業界標準になるという方向は見えてはいない。個人的には一安心である。

美少女ゲーム業界は、2000年以降、ひたすらコストを上げる方向に舵を切ってきてしまったのではないかとぼくは思っている。2000年~2004年頃なんて、「テキスト何MB!」なんてのが横行してたよね。あの雰囲気の中で、相当ソフト1本あたりのコストも上がっていったんじゃないかな。

でも、市場が漸減している今では、それは自分の首をますます強く締めつけることになるだろう。シナリオのボリュームインフレーション1つをとっても、あれって、結構きついからね。2MBならばまだ個人1人でも充分にコントロールできるけど――できる人は相当少ないのだろうけど――4MBになってくると、デバッグ1つを取っても、従来の倍ほどの時間を要求しちゃうからね。それだけ発売も遅くなって資金回収のタイミングが遅れてしまう。でも、2MBから4MBになって、それだけ余分に日程をとった分だけの資金回収ができるかというかと、たぶん、微妙というのが我が業界。

これから美少女ゲームにとって、コストというのは相当考えなければならないことになっていくんじゃないかな、と思っている。ボリュームのインフレーションを抑えながら(ボリュームを抑えながらではない! インフレーションを抑えながら。場合によってはボリュームを抑えながらという選択肢もある)、どれだけ面白いものをつくるか。新しい表現手段や新しい技術を導入するにしても、それによってどれだけペイできる状態に持っていくか。そして、どこかのソフトハウスが真新しい表現手段や技術を導入したとしても、何も考えずに右ならえするということをせずに、いかに頭を使って、セールスの出るソフトを生み出すか。

ちなみにコストを抑えるというのは、シナリオライターやテキストライターを安くこき使うという意味ではありません。そういうことをするとクオリティダウンが起きて、さらに売り上げを落とす可能性を高めます。

誰かさんの単価を下げずに、どうやってコストを抑えていい作品を生み出すか。それが「いかに頭を使うか」という意味です。

というわけで、言いたいことを言ったので、『巨乳ファンタジー2if』のノベライズ作業に戻ります。

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