なぜオーガスは、マクロスに比べてヒットしなかったのか

 昔のテレビアニメの話をしよう。

 1982年に始まった『超時空要塞マクロス』は大ヒットして続編も何作もつくられている。対して、翌年1983年に始まった『超時空世紀オーガス』は、後にOVAシリーズが出されたものの、マクロスほどの高い、そしてロングランの人気を獲得できていない。

『超時空要塞マクロス』に比べて、『超時空世紀オーガス』はなぜ売れなかったのか? 

 アニメ畑ではないけれど、ラノベとゲームシナリオを書いている人間として――SFのゲームを1つ、ファンタジーのゲームや小説をいくつか書いている人間として――理由をいくつか挙げてみる。

 まず、「これは理由にならないよ」というのを2つ挙げる。

1.完成度は決して理由にならない

 よく完成度を理由に挙げる人がいるが、完成度は決して理由にならない。少なくとも、主因(メインの理由)には決してならない。完成度が低いにもかかわらずヒットした商品、完成度が高かったにもかかわらずヒットしなかった商品は、たくさんある。

2.売れなかったのは、「超時空性器オーガス」というタイトルにしなかったから……では、決してない!(笑)

 というわけで、本当の理由に迫っていこう。

 ターゲットと市場を考えた場合、ぼくは次の2つが非常に大きかったのではないかと思っている。

3.戦闘シーンのかっこよさ

 放映当時、自分は中学生だったが、仲間うちでの『オーガス』の評価は、「戦闘シーンがかっこよくない」だった。自分も「オーガスって、戦闘シーンが全然かっこよくない」と感じていた。当時中学生だった友達も「かっこわるい」と言っていたし、ぼくも「かっこわるい」と言っていた記憶がある。あと「使い回しが多い(目立つ)」ということも言っていた。つまり、中学生には、オーガスの戦闘シーンは不評だったのである。

 マクロスでは戦闘機での戦闘シーンとロボットでの戦闘シーンを楽しむことができた。戦闘機体形でのシーンが中学生の男子的ハートにはヒットしたのだ。

 対してオーガスでは、ガウォーク体形での戦闘シーンが目立っていて、それが中学生にはヒットしなかった。敵はガウォーク体形オンリーだったし、主役メカもガウォーク体形が印象として多く残ってしまった。ガウォーク体形主体の戦闘シーンは、中学生的にはイケてなかったのだろう。

4.マクロスの主人公像とオーガスの主人公像の違い

『マクロス』では、主人公は思春期の視聴者に近い存在。男性性的に低い部分、少年的な部分をちゃんと持っていた。オタクとは決して縁遠い存在ではなかった。

『オーガス』では、主人公はナンパ野郎で、少年的な部分のない存在だった。男性性が非常に高く、『007』シリーズのジェームズ・ボンドのようにばんばんと女を口説けるタイプだった。つまり、オタクとは反対側の存在だった。中学生の頃、オーガスのナンパな主人公に対してむかついたのを覚えている。それは、自分が草食系でなおかつ自分の男性性が非常に低かったため、非常に男性性が高くて肉食的な主人公に反感を覚えたのだろう。

 マクロスの主人公は、男性性の低い部分があり、少年的な部分があって、思春期の視聴者やオタクに近い部分を持っていた。

 オーガスの主人公は、男性性が非常に高く、男性性の低い部分も少年的な部分もまったくなく、思春期の視聴者やオタクとかなり離れた人物像だった。この主人公像の違いが、マクロスとオーガスの人気を分け隔てた大きな主因だと思う。

 他にも、サブ的な理由としては物語のわかりやすさもあるだろうが、大きな理由は、上の2つだとぼくは思っている。主人公が自分たちとかけ離れていたり、かっこいいと思えるものがなかったりすると、思春期の少年は離れていく。

  整理すると、

・オーガスの主人公は、思春期の視聴者とあまりに離れすぎた存在だった
・戦闘シーンが恰好悪かった


 このために、『オーガス』は『マクロス』ほどの人気を得られなかったということである。

 蛇足だが、自分の男性性が育ってから『オーガス』を見直してみると、『オーガス』の主人公はすばらしい男性性の持ち主である。下半身のゆるさはあるが、男らしさについては称賛に値する。中学生の時は「この主人公、むかつく」と思ってたのに、大学生になってから見たら「こいつ、意外とええやつやん」。30歳を過ぎてから見たら、「こいつ、ええ男や! 男らしさをわかっとる!」だった。

 オタクという言葉が生まれたのが1983年。男性性に問題を抱えた少年たちが名付けられ、認知されたまさにその年に、オーガスは始まってしまった。あと3年放送が早ければ、『オーガス』の主人公はもっと受け入れられていたのではないかと思う。

 ちなみに。

 個人的には『マクロス』より『オーガス』が大好きである。最終話の手前の話では、何度も泣いてしまったよ。

 完成度に関しては『オーガス』は『マクロス』より高いし、ぼくは『オーガス』の方が名作だと思う。名作ってのは、レベルが高くてずっと残しておきたい作品という意味ね。

 自分が物語をつくるプロになってから見直してみると、『オーガス』の方が粗がなく、レベルが高い。プロの物語作家として見ると、『オーガス』の方が採点が高くなる。

  けれども、時代性に適合しなければ、高い人気やロングランの人気は得ることができない。それがエンターテインメントの世界なのだな、と思う。

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鏡裕之

コメント3件

イシュキック、ナイキック、懐かしいです。ロベルト大尉最高(笑)。
じぷし~ というエンディングが泣けてきました。
いいエンディングでした。
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