宝鐘マリンラッパーデビュー!? 『Unison』で踏まれている韻を徹底解析!

本投稿は、カバー株式会社『ホロライブ』所属、宝鐘マリンさんがリリースした楽曲『Unison』に関する、個人的な見解を述べたものです。
※解釈違い、見解違い等の可能性はお含みおきください。

■マリン船長、2周年おめでとう!

2021年8月11日、この日は何の日がご存じでしょうか。
そう、我らが船長宝鐘マリンさんの、2周年記念!

現在進行形で喉の不調に悩まされながらも、2周年記念として『マリン船長の番組』を一味のために制作し、さらにはオリジナル楽曲『Unison』をリリース!
喜びと感動に打ち震えなかった一味はいなかったことでしょう。

ちなみに、『マリン船長の番組』中で、一番僕が好きなシーンは、『昼ドラホロライブ』内の、

シオン「海と船、どっちが欠けてもできないようなことをしようぜ…」
マリン「そ、それって、まさか…」
シオン「あぁ、そのまさかだ……」
シオン・マリン「出航――」

出航

のシーンでした。新幹線の中で爆笑してしまいました。

あと、船長が発狂するシーンも真に迫ってて、とても良かったと思います(小並感)。

皆さんの好きなシーンはどこでしょうか。

■『Unison』は日本語で、調和、斉唱

活動2周年記念はこの動画の発表だけにとどまらず、以前からすこしずつ制作がおもらしされていた新曲の発表もありました。

曲名:Unison
歌:宝鐘マリン
作詞・作曲:Yunomi
作画:てあせ、よは、ほうじ茶、take、こうの、伊礼えり
背景協力:葭原 壮平
映像編集:鬼灯わらべ(のりプロ)
コンテ・彩色:てあせ
※敬称略
※各クリエイターリンク先は省略

作詞作曲を担当されたYunomiといえば、ホロライブで関連付けるならば、湊あくあさんがカバーしていた、『インドア系ならトラックメイカー』の制作に関わっていますね。

■ラップとhiphop

さて本題へと行く前に、ちょっと事前説明。
ラップとはなんぞや、ヒップホップとはなんぞや、という話なので、興味のない人は、次の見出しまで飛ばしてください。

みなさん、ラップ(rap)と聞いて、一番初めに思いつくものはなんでしょうか。

ひとむかし前だと、ラップというのは悪い輩たちの文化で、アンダーグラウンドで……というイメージが蔓延していて、近寄りがたいものでしたが、
いまではcreepy nutsの活躍や、ヒプノシスマイクの登場により、身近に感じている人も少なくないのではないでしょうか。

歴史を遡ると、ラップというのは1960、70年代のアメリカで、記念日などに地区の住人が集まって、歌ったり踊ったりするお祭り(ブロックパーティ)の中で生まれたとされています。
そこにはDJがいて、彼らの流す音楽に合わせて若者たちが思い思いの言葉を口ずさみ、次第にそれは歌になり、そこにアフリカやジャマイカなどの文化の要素が合わさり、今日のような形になりました。

そして日本の輸入されるにあたり、日本に古くから根付いていた「読経」や「替え歌」などの文化と融合され、日本語ラップというものが誕生しました。

ところで、ラップという言葉を耳にした時、同時に聞く言葉があります。それは、「Hiphop」。

ラップバトルを観る方なら、よくこんなバースを耳にするかもしれません。

「お前からはヒップホップを感じない」
「お前のラップはヒップホップじゃない」

ラップを知らない方からすれば、「ラップ=ヒップホップじゃないの?」と思うかもしれませんが、このように表現すればわかりやすいかと思います。

ラップ=歌唱法
ヒップホップ=文化

そもそもヒップホップというのは、アメリカの黒人たちの間で生まれた文化で、不安や不満、抑圧に反発する形のカウンターカルチャーと呼ぶべきものです。

・DJ
・ブレイクダンス
・グラフィティ(落書き)
・MC
・知識
・ビートボックス
・言語
・服装
・起業精神

の9つの要素で構成されているとされ、バンクシーの活動もヒップホップの一種といえるでしょう。

ヒップホップにおいて最も重要なことは、とにかく「かっこいい」という一点で、かっこよくなければヒップホップでないといっても過言ではないかもしれません。

そしてラップやブレイクダンスは、登場からしばしばアメリカのストリートギャングたちの間で、抗争を無血の内に終わらせるための暴力の代わりにも用いたとされ、そこから、my hoodなど地元、郷里を大切にする文化が醸成されます。

結局、なにを言いたいのか言うと、ラップ≠ヒップホップで、どちらかというと、ラップ⊂ヒップホップというべきだというお話でした。
更に言うと、ラップはあくまで歌唱法であって、ヒップホップじゃないラップがあってもいいんじゃない? というお話です。

■ラップと韻

で、結局ラップって何なの? というと、ラップにとって大切な骨子はふたつあり、それは、

・ライム(韻)
・フロウ(歌いまわし)

です。

ライム(韻)は文字の上でもわかりやすい要素で、例えば、

『宝鐘マリン』
houshoumarin
『相当な韻』
soutounain

は韻が踏めています。いま思いつきましたが、同窓会でも踏めてますね。

そしてフロウ(歌いまわし)というのは、普通の楽曲であればどれも豊富に取り入れられていますが、逆にフロウが乏しいものといえば、お坊さんの読むお経などがそれにあたります。
声の抑揚や、スピードなどを総合したものをフロウといいます。

要は、音楽に合わせて独特の歌回しをして、韻が踏めていればラップと呼んでも差し支えないということです。さらに、日本語ラップの場合、曲の拍感覚に合わせたフロウをすることで、よりラップとして捉えることができます。

例えば、同じくホロライブ所属角巻わためさんが公開し、その後はライブの挿入歌にも使われた、『ホロライブ言えるかな?』も、韻こそ踏まれていないものの、ラップ(マイクリレー)と言えるでしょう。
実際、ホロライブENがうる・ぐらさんは、この曲のことをrapと呼んでいました。

この曲中の、猫又おかゆさんと戌神ころねさんのパートは、まさしく「フロウがある」と言い表せます。

■『Unison』は韻を踏みまくり

そして、いよいよ本題。

マリン船長が2021年8月11日に公開した『Unison』の中では、お気づきの方も多いでしょうが、むちゃくちゃ沢山の韻が踏まれています。
現代のJ-POPでは、語感が良いため韻を踏むこと自体はそれほど珍しいことではないのですが、ラップとの違いはなにかといわれると、それは、「フロウで韻を踏みに行っているかどうか」だと僕は思います。

「韻を踏みに行く」というのはどういうことかというと、例えば、

・宝鐘海賊団船長
 houshoukaizokudansenchou
・妄想アイドルな現状
 mousouaidorunagenjou

という二つのワードは、普通に発声したとしても、韻を踏んでいるのが耳に聞こえます。
しかし、

・鬼滅の刃
kimetsunoyaiba
・G線上のアリア
jisenjounoaria

※TERU vs ユキダル/U-22 MCBATTLE 3on3 SP 2020-キャラ立ち3本マイク編-のTERUのバースから抜粋

は、どうでしょうか。一般的な発音では、あまり韻が踏んでいるような気はしませんが、母音を取り出すとかなり踏めています。
こういうった単語を、抑揚がスピードを変えることによって、ライミングを耳に聞こえやすくする技法が、ラップではよく用いられます。
また、本来ならばほとんど踏めていない単語同士を、曖昧な発音をすることによって踏むことなども、よく行われます(語感踏み)。

以上のことを踏まえて、『Unison』内で踏まれている韻を抽出してみます。

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Aメロの1部を抽出しただけで、これだけの韻が踏まれています。
紫の部分は、特にフロウで踏まれていて、拍に合わせて抑揚をつけることで、踏んでるように聞かせる技術です。

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この部分は韻がはっきりしていて、ラップになじみのない人にもライミングが意識できたのではないでしょうか。
小節のケツをぜんぶ同じ韻で踏むと、すごく語感も良く聞こえますよね。実際のラップの曲なんかでもよく使用されています。

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サビのところの船長がゆらゆらしているところと、choose meの歌詞に合わせて、立ち絵がチューしているところ、最ッ高に可愛いですよね。

画像5

ここもフロウで踏んでる部分。フロウで踏むというと、越冬/ICE BAHNの、玉露さんのバースを思い出します。

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「座礁して」「ああ、どうして」のところのライミングはすごくきれいに聞こえますよね。

サビは1番と同じ韻を踏んでます。
J-POPでも、1番と2番のサビの一部で韻踏んでいることって、むかしからよく見ますね。

画像7

そして最後も独特のフロウで踏んでいく。
と、思いきや、四文字の韻もきっちり入れていて、すごく締まりがよくなっています。

■終わりに

以上、マリン船長の『Unison』の韻について、すこし語ってみました。
本当は歌詞の意味の考察とかもしてみたかったのですが、ほかの人がたくさんやっているのと、紙幅を使いすぎるために、自粛しました。

なお、本投稿は、一介のラップヘッズ、Vtuberオタクの解釈によるものなので、もし間違っていたり、時代遅れなことを言っていたりしたら、コメント欄でやさしく教えてもらえると助かります。

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