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貴方もこの瞬間からパキりたくなる!「プリパラ」の世界。

本気だ。

本気で、大真面目に「大好きだ!」と声高に宣言できる作品にまた一つ邂逅した。

もう2,3年ほど前になるだろうか。私個人内で人生史に残るほどの一大ブームを巻き起こしたプリキュアシリーズ以降心の底から没頭できるアニメを発見する事はもう不可能と諦観の念を抱き続けていた。

それが三十路手前の2021年にもなって、しかも女児向けホビーアニメの界隈にてこれ程までに莫大が過ぎる笑いと混沌に包まれた金鉱脈に出会うとは思いもしなかった。

大当たりの煙草、ラッキーストライクを吸っていて良かったと自分のまだギリギリ正常であろう肺に心から感謝した。

今回はタカラトミーアーツ/テレビ東京が生んだ怪作にしてすべての疲れ切った現代人に贈るマスターピース「プリパラ」を稚拙ながら愛と情熱を芯より込めて紹介していきたい。

いきなり人を選ぶ話題にはなってしまうが、この文章と目が合っているということであれば少しは興味があるのではなかろうか。

それならば一寸電波を漂うのを止めていただき、貴重なお時間を頂きたい次第である!

そもそも「プリパラ」とは何ぞや?

極々シンプルに言い表すならばゲームセンターや家電量販店を拠点とするトレーディングカードアーケードというタイプのゲーム作品である。

電脳アイドルテーマパークへダイブした少女が憧れの姿へと変わり、主にライブという形でアイドル活動を行いながら服飾パーツ、通称「コーデ」を実物のカードという形で収集しつつランクを駆け上っていく女児(+大友)を対象としたゲームだ。

何よりの特徴として自らの分身と言えるマイキャラクターを作成することができ、そのキャラが数多のライブを経て好みの装飾を身に纏っていく過程は何物にも変え難い快感を生む。

カードの上部は切り取れる仕様となっているのでその部分を交換しあい(通称:パキる)筐体に読み込むことで友人のキャラをライブに登場させることが出来る。友情を育む一種のコミュニケーションツールの役割も備えているのだ。

まあメイン層を考慮してか音ゲー部分は簡素だがその分映像はド派手の一点張りである。

なんせ研修生の時点からバックダンサーを引き連れて仰々しくランウェイを練り歩けるのだから素敵という他無いだろう。

さらに楽曲の魅せ場で挿入される最大のアピール演出「メイキングドラマ」や衣装が今でいうゲーミング的に極彩色へと変貌する「サイリウムチェンジ」などなど非常にカラフルで煌びやかなエフェクトが網膜へ押し寄せてくる。

例えとして適切かは分からないがパチンコの姦しさと中毒性に極めて近いだろうか。排出されるのが服のカードか銀玉かの違いかだけでインカムを爆上げせんとするメーカーの威勢が伝わってくるようだ(爆)。

一度撤去されたが諸々の事情をクリアして界隈初の復活を遂げたり、新作アプリ製作のアナウンスがされるなど数年前に登場したながらも今も尚ファンに愛され確かな熱を帯びている作品である。

前置きが長くなり恐縮の限りだ。これらを踏まえ本題のアニメ版に移ろう。

ではまず各期のあらすじから

※以下可能な限りネタバレは伏せるが紹介するポイントの都合上、話数を経るにつれ明らかになっていく部分に触れる場合がある。何卒勘弁願いたい。


・1期

この世界では女の子達が歌やダンスで鎬を削り、トップアイドルを目指す電脳テーマパーク「プリパラ」がなにより盛んであった。主人公:真中らぁらはパラ宿町の私立パプリカ学園に通う小学5年生。ひょんな事からプリパラに入り、そこで出会ったみれぃとライブをする事になる。一度は戸惑ったらぁらであったが、覚悟を決めた彼女は神懸かりな歌声とパフォーマンスを魅せオーディエンスの度肝を抜く。それを機にらあらはみれぃともう一人のホープ:そふぃと共に「SoLaMi♡SMILE」を結成し、ライバルチーム「DressingPafé」と火花を散らしながらアイドルへの一歩を踏み出す...


・2期

プリパラにて、新ステージ「ドリームシアター」が出現した。そこでは各々が持つ「チャーム」が共鳴しあった5人組でライブを披露し、季節ごとに催される「アイドルドリームグランプリ」を勝ち抜いたブライテストチームに最高にして最大級のイベント「プリパラドリームパレード」の手綱を握る事と一つだけ凡ゆる願いを叶える権利が与えられる。しかしSoLaMi♡SMILEとDressingPaféは3人組であり、このイベントに沿うならばチームを一度解散しなければならない...はたしてグランプリへ出場する新たなチームとは?そしてその影で暗躍し、プリパラの改革を企む「怪盗ジーニアス」の正体とは?


・3期

ドリームパレード終了後、プリパラにて更なるアップデートが行われ、遂に最も高ランクである「神アイドル」を決める大会が催される。それと同時にらぁらの頭上より突如赤ん坊の「ジュルル」が降臨し、母親と勘違いされてしまう。そして調査の結果なんとジュルルは神アイドルを導く女神「ジュリィ」が幼児化した姿だという。このままでは大会の開催が危ぶまれる。らぁら達はジュルルを女神へ育て上げ神アイドルへ到達する事が出来るのか?

・4期(アイドルタイム)

舞台はパパラ宿(誤字ではない)に変わり新たな物語が始まる。パパラ宿は何と女子がプリパラに全く興味を示さず、それどころか女人禁制の男子プリパラ「男パラ」が跋扈している異文化極まりない町であった。唯一町内でアイドルへの憧れを燃やし続けながら私立アボカド学園へ通う夢川ゆいはパラ宿より転校してきたらぁらと共にペンペン草も生えていない更地プリパラを盛り上げていく事を決意する。様々な困難を乗り越え、ゆいは夢を叶える事ができるのだろうか。


どうだろう。ワクワクしながら24分を楽しみ来週の放送を待ち侘びる児童の姿が目に浮かぶような物語ではなかろうか。

それではいくつかポイント分けしながら魅力を伝えていきたい。

・友情、努力、勝利!あらゆるネガティブをポジティブに変えていく女の子の成長。

少々主語は大きくなるが、「アツイ物語」に必要な要素はなんだろうか。

そう。上述した通り「友情、努力、勝利」である。某跳躍誌が標榜しているこのキャッチコピーは魂を震わせるアツさには必要不可欠だ。

少年少女が高みを目指して突き進むという王道のテイストならば尚のことであろう。そしてこの作品に入っているそれらの熱量たるや尋常ではない。

千里の道も一歩からとは言うがそれ以上の果てない距離を思わせる「神アイドル」への道。そこへ少しずつ己が持つ1%の才と99%の努力でライブを重ねていき、着実にランクを上げていくらぁら達のピュアな姿はただただ眩く、観るものの胸を打つ。

しかし彼女達も年頃の女子であり、プリパラ/現実世界で起こる問題に時には挫折し喧嘩もする。それらに真摯に向き合い、さらなる努力を重ねるポジティブの向こう側といえる姿勢には学べることがたくさんあるはずだ。


・物語を彩る個性豊かな登場人物

アイドルという言葉の力は過去に比べ非常に軽くなり、括られる対象が地平線の彼方まで広がった。

雲の上にいる憧れの歌姫でなくとも、誰も彼もがそう名乗ってしまえばそれはもう「アイドル」という群雄割拠の時代に到達してしまったのだ。

しかし十把一絡げな人物が自らを偶像化しようとしても確かな強みか劇しいオリジナリティがなければそう遠くない内にに埋もれていく運命であることは今も昔も変わらない。

このアニメ、そんな現実の情勢を汲んでいるのかやたらと各々キャラクターが濃い。

ほぼ例外なく何かしら言葉遣いに特徴があったり外見が特殊だったり頭のネジが外れていたりする。

なにせ主役のらぁらでさえ「かしこま!」なんて可笑しな台詞が口癖なのだからこの先はお察しである。

みれぃは現実世界では堅物な委員長ながらプリパラ内ではポップ&痛めのキャラに変身するし、そふぃは好物の梅干しを食わなければまったく使い物にならないポンコツながら一粒口に含むだけでカリスマアイドルと化す。

さらに男の娘やら悪魔と天使を名乗る小学生やら相撲レスラーやら芸術を拡大解釈したキ印美術教師やら様々な個性がこの作品には溢れかえっているのだ。

重複しているアイデンティティは全くないのでお気に入り、ひいては推せる人物を探すのもまたこの作品の楽しみだろう。


・絶妙に耳に残るハイクオリティな楽曲/ゲーム版を凌駕する美麗なライブ

当たり前だが筐体を宣伝する作品である以上毎話必ずライブパートがあるので相当な数のボーカル曲がこの作品では用意されている。

基本的なフォーマットは現代のポップスだがそこに混ぜ込まれるフレーバーはテクノ、爽やかな王道ロック、HR/HM、歌劇にワルツ果てはアヴァンギャルドまで多岐に渡る。

ほんの少しの例外を除きすべてアリーナクラスを盛り上げる事を意識したキャッチーで印象に残る曲ばかりだ。更に一話毎繰り返し繰り返し歌われるので脳裏に強制的に刷り込まれていく。気づけば自ずと口ずさんでいることだろう。

おすすめは複数あるが特に最初期オープニングである「Make it!」は必聴である。

プリパラとは、そして女の子の夢憧れとは何たるかが詰め込まれたこのシリーズのリードトラックと呼べる存在なのでまずはこれから聞いてみよう。

そしてそれらを華やかに演出するライブ映像もこれまた豪華絢爛である。

サイリウムチェンジやメイキングドラマはもちろん完備の上、なんとCGはゲーム版の引用ではなく一から作られている。

一切の手抜きを感じさせない。それどころか、製作リソースの大半をここに割いているのでは?と思える高品質な映像ばかりだ。

表情、動きやライトの当て方に至るまで没入感の塊なので是非ともこのパートも堪能いただきたい。


・脳味噌に稲光を落とすボーダーオーバーカオティックギャグ。 


さてどうだろう、少し観てみようかな?と思っていただけただろうか。

この時点で少ーしでもプリパラが気になったという事であればこのページを閉じてAmazon Prime Videoや他サイトにて第1話を視聴しよう。きっと漠然と持っているこの作品のイメージが覆る筈だ。

観る気がない/ネタバレを気にしない方はこちらをご覧頂きたい。

さて、視聴が終わったところで続きを始めよう。

この動画を視聴してはじめに抱いた気持ちは

「?」 

ではなかろうか。

トレーニングで碁盤を頭上に乗せたかと思えば掃除機は当たり前のように有機物の如く動く上、仮にもアイドルを名乗る者がヤギの口に手を突っ込む。さらにジャンルを考慮すると明らかに場違いなロボットが暴走を起こしそれを食い止めるため一致団結で立ち向かうetc.のもろもろの突飛な言動...

とても女児アニメとは思えない光景が目に飛び込んできたことに脳細胞に致命的なエラーが生じたということであればここでお詫びさせていただく。どうか再起動の上話を聞いて欲しい。

改めて宣誓するが、この作品は間違いなくアイドルをテーマとした女児アニメである。

明らかに主題を逸脱した荒唐無稽にして混沌全開なギャグがこの作品のもう一つの大きな魅力だ。

上記の動画は全容の1/1000程にも満たない。ふり幅はあれど1話につきカオスなパートが最低5分ほど用意されているといえばその脅威が伝わるだろうか。

更に特筆すべきはそれらの笑いが説明等の前触れなく視聴者の前に降り注ぐこと。

ひとつシュールな例を挙げよう。

とあるキャラクターがある時海外に赴いた際ハシビロコウと出会うのだが、以降そのハシビロコウが全く無関係のシーンで5.6秒ほど挿入されるのだ。

これで意味が伝わるだろうか、おそらく理解の範疇を今この瞬間超えたはずだ。インタールードとしてはあまりにも実験的といえる。

このように強弱矢継ぎ早に頭の悪い笑いが数多に挿入される。

ここ最近、一部界隈にて名作「ボボボーボ・ボーボボ」のリバイバルブームが起こって久しいがあの空気が常に流れていると思ってくれて良い。

意味不明だったりガバガバだったり、そんな理不尽なジョークが許せない方にはお勧めできない。おそらく見始めても脱落するからだ。

因みにこの世界観に合致し、「面白っ!もっと見てえ!」と感じた方でも一気視聴はやめておいたほうがいい。

冗談抜きで社会復帰が危ぶまれる程にバカになる。

そしてさらに恐ろしいのがこれらのギャグをシリアスな場面でも躊躇なくやってしまうことだろう。

それができてしかも感動までさせてしまうのだから脱帽である。それもこれも土台のストーリーがしっかりしているために成せる芸当だ。

そう、所謂「真面目な不真面目」である。ここまで長々と書いたが結局はこの一単語に集約されるのかもしれない。



...とまあとっ散らかりはしたが大体こんな感じだろうか。

やはりアニメという媒体の性質上、実物を見て頂く事が一番なのだが話数が非常に多いため敷居の高さは否めない。

そこで少しでもプリパラの妙味が手軽に伝わればと考えこの駄文を仕上げた次第である。

諸兄らもこの物理的にも精神的にも、はたまた電子的にも息苦しい世の中で辛いと感じるのであれば是非気の合う友人とでも視聴して欲しい。

全140+51話のアイドルクアトロジー、完走への道のりは極めて遠いが感動とギャグのスピードボールに心掴まれる事請け合いだ。

そして近所に筐体があれば100円を握りしめてデビューしてみよう。

不安?恥ずかしい?

大丈夫。なにせプリパラは

「み~んなトモダチ!み~んなアイドル!」なのだから...



※2021/01/21 追記

友人より「らあらじゃなくらぁらだよ」と指摘を頂きました。

お詫びのうえ一部の文章と共に修正致します。

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