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写真批評 サシイロ 12 〜耽美を創る 前編

細江英公の「おとこと女」がJCIIフォトサロンで公開中だ。
細江英公といえば、三島由紀夫とも交流が深く、「薔薇刑」など特に男性のヌードをモチーフにしたモノクロの耽美な世界観で知られている所だ。

細江英公の特徴は、自分の主張を伝えるためにシチュエーション自体を創作し、それを写真に撮るという、どちらかといえば演劇的な作風だと言えるだろう。彼は演出家のような立ち位置で、写真を撮るのである。
では演出家のような立ち位置での撮影とは具体的にどのような手法なのか。

「おとこと女」は、舞踊家の土方巽氏の舞台に感銘を受けた細江が、舞台が終わった後に同じホールを借りて旧約聖書のアダムとイヴにヒントを得て撮影したものだ。
細江は、撮影の動機として、学生運動など時代のエネルギーがあちこちで噴出している中で、自分の創作がその時代のエネルギーに負けないようにするためには、白黒写真でかつ荒々しいプリントで臨むしかないと思ったというようなことを述べている。
彼は時代が必要としている絵を自分で創り出し、さらにそれをどのようにプリントすれば見る者に伝わるかを工夫したわけだ。

一口に耽美的な世界観と言っても、耽美と呼ぶのに必要な要素はいくつかある。性、ヌード、時代が必要としているエネルギー、閉じられた空間。
さて、私たちが生きる今この現代で、エネルギーや熱はどのように形を変えて存在しているのか。それがわからなければ、現代に支持される耽美は生まれないように思う。

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