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ポーランド旅行記・16日目

ヴィエリチカ岩塩坑。クラクフ近郊にある世界遺産。ものすごく大きな岩塩坑で、かつて塩が金の半分の値で取引された時代、中世クラクフおよびポーランドの繁栄を担った大きな存在だという。

と、あれこれ聞いてもあまり惹かれなかったのだが、ポーランド滞在も残り2日。めぼしいところは行きつくしてしまったしここらで行っておくか、となった。やけに色々な人が勧めてくる。自分は存在自体渡航直前に知ったのに。行こうと思ったのは滞在中に色々な情報に触れ、この街の歴史を実感できたことにあると思う。その時間の流れの中で大きな役割を果たしたということはよくわかった。文脈が理解できたところでやはり見ておくかと考えた。

あまり何も考えずに中央駅に行く。中央駅から電車が出ているらしいと、付け焼き刃の雑な知識で電車のチケットを買いに行く。3分前に出ていた。次は57分後。下調べはきちんとしておくべきだ。1時間待つかと思ったけど、これで到着が遅れたせいで入れませんでしたということになるのも嫌だ。バスターミナルへ向かう。

バスの方が本数が多かった。30分後のチケットを買う。すぐではないが電車の半分でいいと思うとマシだ。併設のカフェでココアを飲む。ココアを飲みながら携帯をいじっているとびっくりした。時間が止まった。むしろ戻った。今は10時35分と思っていた時間が9時35分だった。腕時計の時間をウクライナ時間から戻していなかった。15分後に出ると思っていたバスは1時間と15分後に出ることになる。それはない。いよいよ携帯できちんとルートを探す。普通のトラムと路線バスで行けるらしい。わざわざ買ったバスのチケットは幻のチケットになった。高くはなかったから良かったものの、へこむ。

トラムとバスの乗り継ぎであっさり着いた。もっと言えば駅前の路線バスから1本でよかったらしい。なんだったんだ。

とにかくチケットを買う。ここはガイドツアーでないと入れない。英語のツアーを頼んだら15分後開始だった。ちょうどよい。荷物を預けなければ、と思ったが自分より大きなカバンを持っている人がたくさんいる。自分のは持ち込めるサイズぎりぎりだったが、あの人たちがいいならいいだろう。持ち込める小さいカバンがなく、どのレンズをポケットに突っ込んでいくかが昨夜からの悩みの種だったが解消した。

ガイド用のレシーバーを受け取り、階段を降りる。数十メートルの階段をひたすら降りる。

中は圧倒的な広さだった。自然が作り出したものでもあり、人が作り上げたものでもある。ひたすらに岩塩坑だった。シャンデリアだって塩でできている。これがただのアトラクションではなく実際に働いていた人達が作ったというから凄みがある。たまたま手についた塩をなめたらしょっぱかった。写真を撮りまくって基本的に最後尾だった。ガイドの人に覚えられたことだろう。学校の先生は手がかかった生徒ほど覚えているという。

歴史の中での意義が〜なんて大層なことを考えてはいたが、実際来てみるとただただ歩いて眺めるのに必死だった。これだけ広いと閉所恐怖症の人でも大丈夫かなと一時思ったが、これが崩落でも起こって出られませんとでもなったら精神的に大変だ、と思い却下した。

一通り見終わると、レストランやおみやげ屋があるところで一旦解散となる。追加の坑道兼博物館セクションを見るか地上に戻るか選ぶ。
せっかくなので続けて見学する方を選んだが、他に行く人はいない。あまりにもいなさすぎて、ツアー開始のタイミングを逃した。5分後と言われたはずが開始は30分後になっていた。レストランまで戻って昼ごはんを食べることにする。あんまり食べなくていいかなと思っていたが、食べ物を目にするとあれこれ頼んでしまった。アウシュヴィッツの併設レストランもそうだったが、ポーランドは観光地の併設レストランもかなり質が高い。それでいてそんなにぶっ飛んだ価格でもない。ビールにも少し惹かれたが、なんとなくコカコーラにした。久々に飲んだ。

食事を終えて立ち上がり岩の壁を見て、岩塩坑の中にいることを思い出した。ここは深度130メートル。レストランを出て改めて博物館ツアーの待機場所に行く。誰もいない。隣の地上に戻る列はものすごいことになっている。結局ガイドの人と2人で行くことになった。同い年か年下くらいの女性。風邪をひいているらしくなかなか調子が悪そうだ。それでも色々と話してくれる。大勢で率いられるツアーなら適当に遅れながら写真も撮りやすかったが、1対1だとなかなかそうもいかない。とはいえだらだらしてしまうよりはいいのかもしれない。まだガイドを始めて日が浅いのかあまり慣れていない様子だったが、それはそれで話しやすくて良かった。1対1でベテランに圧倒されるのもそれはそれで楽しいかもしれないが。結局どうあっても楽しいのだろう。

結局先のツアーと後半の博物館セクションで計3時間半ほど歩いた。それでも今回見たのはほんの少し、全体の1パーセント程度だという。途中で地下坑の全体地図を見る機会があったが凄まじすぎて笑ってしまった。

最後はシンプルなエレベーターで一気に地上まで登る。外に出ると雨が降っていた。地下坑はある意味全天候型施設である。

中央広場の教会を見に行こうかと思ったが天気も天気なのでやめた。結局訪れるのは最終日になりそうだ。

夕食はいらないかなと思っていたが、スーパーで何か買っていくことにする。カップラーメンとチョコレート、ジンジャーエールにケーキを買った。ケーキはショーケースの中にあるものを選んで切ってもらう、スーパーらしくないスタイル。「これ!」「これね?」「そう!」と通じた時のお姉さんの笑顔が良かった。

せっかくの旅行、もう日もないんだからカップラーメンなんて……というのもあるとは思うが、これはこれで日本にはないものなのでよい。AJINOMOTO製であることには気付いてしまったが、いずれにせよ日本にはないからいい。


本とか買います。