こんにちは、池澤夏樹です。今回は心拍数と反社会的行動の関係について考察します。この不思議な関係は動物界では一般的であり、ヒトにも当てはまるのでしょうか。

攻撃的で支配的な動物、特にウサギやボノボ、マカク、ツパイ、マウスなどは、安静時心拍数が低いことが知られています。さらに、これらの動物の支配力が上がるにつれて、心拍数が下がる傾向にあります。

そこで疑問が湧くのは、人間においてもこの関係性が存在するのかということです。神経犯罪学者エイドリアン・レインは、反社会的な学生の安静時心拍数が低いことに気づき、その関係性を調べるために40本の論文を分析しました。その結果、安静時心拍数は反社会的行動と相関があり、反社会的な行動に関する被験者間の差異の約5％を説明しました。

さらに、レインはストレス時の心拍数も調査しました。ストレス時の心拍数は反社会的行動との相関が12％となり、家庭用妊娠テストキットの正確さや不眠症改善のための睡眠薬の効果に匹敵することがわかりました。

心拍数の性差は早くも3歳の時点で見られ、男子は女子よりも心拍数が低いことが判明しました。また、幼少期に測定した心拍数が成人後の反社会的行動に影響を与えることが示されました。この結果から、低い心拍数は非行や犯罪に対する予測因子となることが明らかとなりました。

しかし、すべての反社会的な子どもの心拍数が低いわけではありません。そこで、犯罪者になった者とならなかった者の比較が行われました。犯罪者にならなかたグループは、犯罪者になったグループに比べて安静時心拍数がかなり高いことが判明しました。これは、心拍数の高い子どもが非行に走っても、成人になれば更生する可能性があることを示しています。

では、心拍数の低さと反社会的、攻撃的な行動はなぜ相関するのでしょうか。その理由にはいくつかの説明が提案されています。

1つ目は恐怖心の欠如です。安静時の心拍数が低い子どもは、ストレス状況下でも恐れを感じにくいため、その心拍数が上がらないと考えられます。この考え方は、恐怖を感じる度合いが低い爆発物解体の専門家の心拍数が特に低いという事実とも一致します。

2つ目の説明は、心拍数の低い子どもが高い子どもよりも共感力が低いというものです。共感力を欠く子どもは他人の立場に身を置くことができず、他人の感情に無関心で反社会的・攻撃的になりやすいのかもしれません。

3つ目の説明は刺激の追求です。覚醒度の低さが不快な生理的状態をもたらし、それを最適なレベルに上げるために刺激を求めて反社会的行動に走るとされています。この仮説では、心拍数が低い人は誰かを殴る、万引きする、麻薬に手を染めるなどの方法で刺激を高めようとすると考えられます。

もちろん、これらの説明にはまだ疑問が残りますが、「心拍数で将来の犯罪を予測できる」という仮説は、大規模な実証実験によって証明される可能性があることを考慮すべきです。

今回の記事では、心拍数と反社会的行動の関係を調査し、その理由について検討しました。今後の研究がこの謎を解き明かし、より理解が進むことを期待しています。

この記事が皆さんの興味を引いたことでしょう。今後も様々なテーマを取り上げていきますので、どうぞお楽しみに。また、心拍数と反社会的行動の関係についてさらに理解を深めたい方は、関連する研究や文献を読むことをお勧めします。