患者さんは"人質"なんです

ある日の担当患者さんと部屋でお話していたら、隣の患者Rさんと看護師の会話が聞こえてきた。どうやら身体拭き・着替えをしている様子。

爪を立てたら痛いやないか!」と声を荒げるRさんに対し、「立ててませんよ」、続けて「手袋してますから(爪は立てられません)」と答える看護師。

うん、そりゃあ意図的に爪を立ててはいないだろう。しかも爪が長いわけでもなく、デコデコのネイルをしているはずもないし。この看護師の「爪を立てていません」という言い分は”正しい”。

でも、きっとRさんが言いたかったのは「爪を立てているかそうでないか」じゃなくて、「看護師に触れられてる部分が痛い、不快だ」ってこと。Rさんは浮腫みが酷く、浮腫みすぎて皮膚がパンパン張り、その皮膚が裂けて滲出液が出てきているような皮膚の状態。想像しただけでも痛々しいでしょう??だから普通に触っているつもりでも、Rさんにとってはとんでもない刺激であり、苦痛を伴っている可能性が高い身体を触られるということが、Rさんには「爪を立てられている」ような痛みとして認識されている、と解釈できる。

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Rさんは看護師に伝えてくれたけど、ほとんどの患者さんは苦痛・不満等を、看護師はじめ医療者に伝えず我慢している。きっとRさんだってすべてを口に出しているのではなく、「爪を立てたら痛いやないか!」という一言の裏に、数えきれないくらいのやるせなさを感じているはず。

以前、ある先輩が「ご家族は医療者に言いたいことを言えません。我慢します。なぜなら、患者さんを”人質”にとられているからです。患者さんは”人質”です」とおっしゃっていた。その通りだと思う。患者さん・ご家族は、「こんなことを言って嫌われたらどうしよう。嫌な患者・家族と思われて、ちゃんと世話をしてもらえなかったら困る」と思うから、もっとこうしてほしいとか、こんなのは困るとか言えない人がほとんど。

だからこそ、ほんのちょっとした仕草や表情にも注意しないといけないし、Rさんのように「痛い」と口にしてくれる人の言葉はしっかり受けとめ、そこに込められた思いを最大限汲み取る努力をすることが責務だと思うのです。

関連note:「鈍感なんはアカンで

#コラム #エッセイ #医療 #看護師

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樋口佳耶

看護管理学note①

看護管理学の勉強をする中での学びや気づいたことを綴っています。
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